Wednesday, October 27, 2010

過剰品質の功罪

Overquality of GCP

twitterつぶやきから。Natureの記事「中国には欧米ファーマから帰国を命じられた人が8000人、中国に戻っていると聞いています。中韓のコストは、日本の1/6程度」。感覚的にそんな数字だろうか。そうなら、中韓に行くことが肝要。



Sunday, October 24, 2010

再生医療に関する薬事指針に記載されたエピジェネティクス

 戸口田らは、間葉系幹細胞の培養過程において形質転換の初期遺伝子変化としてp16遺伝子のメチル化を指標としている。ドナー細胞における癌化モニタリングとして定量的検出システムの確立を目指す際に、どの遺伝子に注目するかは極めて意義がある。科学的な妥当性と同時に、指標として多くの研究者が理解できる科学的な報告の蓄積が求められる。そのような点でp16はがん抑制遺伝子として認知度が高く、多くのがんにおいてメチル化を生じているという報告があり、指標として適切であると考えられる。また、同時に検出感度が高い必要がある。それは、培養過程における癌化モニタリングとして、初期の変化を見るにはすくなくとも細胞1000個に一個の異常を検出できる系である必要がある。ドナー細胞の安全性にかかるバリデーションの研究は始まったばかりであり、多くの研究者が始めたばかりである。再生医療のドナー細胞の種類により指標が異なる可能性は充分に予想される。体性幹細胞のみならず、種々の前駆細胞においても異なる遺伝子が指標になる可能性がある。著者らは、爪の先から月経血までヒトの各種組織の体細胞の供給源を用意し、研究用の細胞は理研(筑波)より、医療・産業界用のものは医薬基盤研から入手可能なように寄託し、これらの遺伝子発現情報はNCBIのGEOに情報を提供した。異なる細胞で異なる指標となることは不便であるが、現実的にはありえることと予想する。さらに、universal細胞としてES細胞及びiPS細胞があるが、これらもまた体性細胞とは異なる癌化プロセスをとる可能性がある。現在、多くの遺伝子を指標として特許申請がなされており、論文として公表されるのはもう少し時間がかると予想する。また、ドナー細胞の移植を中止するだけの根拠となるメチル化の程度についても明確な基準が必要となる。指標となる遺伝子プロモーター領域を網羅的に解析して、判別式を作成し、移植するドナー細胞の腫瘍化の可能性のCut off値を決めていくことが現実的な作業であろう。

 薬事法上の再生医療に関する指針(ガイドライン)に、エピジェネティクスの網羅的解析が記載されている(文献7, 8, 9, 10, 11)。2008年2月及び9月にヒト由来細胞・組織加工医薬品等品質及び安全性の確保に関する指針(医薬発第1314号)が改訂され、ヒト由来細胞を「自己」由来細胞(薬食発第0208003号)と、「同種」由来細胞(薬食発第0912006号)との2つに分けて示された。これにより、品質及び安全性の確保のための手段がより明確化され、再生医療用医薬品の研究開発に拍車がかかるものと期待されている。また、さらに体性幹細胞(自己、同種)、ES細胞、iPS細胞(自己、同種)に関して、それぞれヒト幹細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針(案)が発表された。全ての幹細胞に対する指針(案)の中で、注として「試験的検体を用いた検討に際して、特異的マーカーに加えて、網羅的解析を用いた解析が有用な場合もある。」と指摘しており、その網羅的解析のひとつにエピジェネティクス(DNAメチル化)が挙げられている。すなわち、新たな局面を迎えている再生医療・細胞治療分野において、選択すべき重要な細胞特性指標としてエピジェネティクスに注目が集まっている。


研究室は7階にある

 研究室は7階にある。高いところにあるので、いつもは、きれいな世田谷の町を見ることができる。ウルトラマンをうんだ円谷プロ、ゴジラをうんだ東宝スタジオ、NHK技術研究所、民放のTMCスタジオをながめることができる。遠くに、富士山も見える。「夢の架け橋」と私たちが呼んでいる、病院と研究所の連絡路が今は台風のせいで、水浸しになっている。この連絡路はガラス張りの屋根と壁があり、この「夢の架け橋」と呼んでいる通路を介して、子どもたちの病気を治すために、再生医療のための細胞を研究所から病院に届けることになる。  

 再生医療に供する細胞は、セルプロセッシング・ルームで培養される。セルプロセッシング・ルームは再生医療を念頭にした細胞培養室であり、国立成育医療センター研究所には既にGMP基準に準拠した施設が存在し、治療プロトコールの倫理申請に向けて細胞培養のシミュレーションが繰り返されている.成育医療センター研究所に4年前に異動した私自身にとってこの施設は誠にありがたい.医療を前提とした場合はこの施設は必要不可欠であり、逆のことを言えばセルプロセッシング・センターなしでは、細胞培養を伴う再生医療を目指したとしても研究レベルにとどまることになる.再生医療は発生学・材料工学・細胞生物学の発展に伴って進展し、細胞を薬と見なして行う新たな試みであり、増殖因子・分化誘導因子、マトリックス、生分解性ポリマーならびに幹細胞を上手に統合することで組織を再生する.用いる細胞は,大きく胚性幹細胞と成体幹細胞に分類される.胚性幹細胞は胚盤胞の内部細胞塊より樹立する細胞株であり,驚くべきことに全身の組織や細胞に分化する能力を維持しており,全能性を有しており、基礎研究を行うことが現在許されている。一方、成体幹細胞は,各臓器,組織に存在する幹細胞であり,限られた範囲の中で多分化能を示し,部分全能性を有している.組織内には、その組織における特定の働きを担う、すでに分化を終えた細胞が多数存在しており、中にはそうした特定の働きを持つ細胞へと分化する前の未分化細胞、すなわち幹細胞が混じって存在している。成体幹細胞は、自らと同じ細胞を複製し、製造する能力を持つとともに、分化によって、それが存在していた組織内のあらゆる個別細胞を作り出すことができる。特定の組織に分化することがわかっているためにすでに多くの治療に生かされている.成体幹細胞は、骨髄や血液、目の角膜や網膜、肝臓、皮膚などで見つかっており、脳や心臓といった従来は幹細胞が存在しないとされた臓器でも発見されている。また、骨髄の中にある間葉系幹細胞と呼ばれる幹細胞は、骨、軟骨、脂肪、骨格筋、心筋、神経に分化する(http://www.nch.go.jp/reproduction)。自らの体からとり出した成体幹細胞の治療への活用は免疫的な拒絶反応の問題を心配する必要がなく現実的である。「夢の医療」とよばれた再生医療が、今は現実の書類の山の中にいるところまできたことは嬉しいかぎりである.

 研究所に隣接する病院は、とてもきれいな施設である。庭園内に小川のようなドジョウもいる流れがあり、その両岸にはコクマザサ、セリ、柳、スイセン,ヒガンバナ、クワイ、ミソハギ、ネコジャラシが植えられている.夏休みに間に子どもたちが放したザリガニや、祭りの金魚や田舎でとってきた魚で池もいっぱいになっている。もう、夜になると虫の音がうるさいくらいである。研究所の後ろ側には、UFOが着陸できるような芝生の丸い敷地に、トランスレーショナル研究・臨床研究を推進する場がある。散歩にぴったりの位置に、成城学園と二子玉川があり、お買い物も楽しめるし、砧公園が隣にある。一度、ウェブサイト(http://www.ncchd.go.jp/English/Englishtop.htm)を訪れるだけじゃなくて、お休みの日に実際に来てみても面白い。



Friday, October 22, 2010

レクチンアレイによる幹細胞評価

 糖鎖科学は、生命工学、農学、食品のみならず、医療あるいはヘルスケアの分野において産業応用の段階を迎えており、糖鎖科学が貢献する先端医療・医薬に経済性が大きくかかわるようになってきた。国民の健康を推進する上で「科学性の担保」と「経済性の評価」が極めて重要であることが認識されるようになり、医療産業はこのような面から糖鎖リソースが増えてきたことにより自律的に回るところまで来ている。特に、糖鎖科学は、がん、免疫・炎症、腎症、感染症、再生医療、遺伝病の診断・治療の開発へ寄与し、医薬開発では抗体医薬を初めとしたバイオロジックス製剤の開発へつながる。このようにNEDOのプロジェクトで培われてきた基盤となる糖鎖技術を応用するシステムを通じて医療およびヘルスケアに多大な貢献をしており、臨床試験を具体的なタイムコースを念頭においた前臨床試験ないしは応用研究のさらなる発展が期待される。同時に、社会的にオープンな糖鎖データベースの創成が医療産業に必要となる。


Tuesday, October 19, 2010

保険外併用療養費

保険外併用療養費の制度は、保険診療と保険外診療の混在した診療に保険給付を認める制度。

1.治験に係わる診療に関する事項について、保険外併用療養費の支給対象となる治験を実施した場合、毎年の定例報告の際に、治験の実施状況について都道府県知事に報告するものとする。

2.保険外併用療養費制度の対象について 1) 患者を対象とする第I相試験。 2) 第II相試験。 3) 第III相試験。

3.保険外併用療養費制度の対象外について 1) 健常人を対象とした第I相試験。 2) 承認後に実施される抗がん剤等の第III相試験。 3) 承認後に実施される第IV相試験(中央薬事審議会の指示による承認後の臨床試験、再審査申請書の添付すべき資料に含まれる使用成績調査、特別調査I、再評価申請書の添付すべき資料に含まれる特別調査IIに必要な臨床試験)。

4) 医師が自主的に行う臨床研究。


Tuesday, October 12, 2010

Kindleで論文を読む方法

Kindleで論文を読む方法を研究室の方が教えてくれた。ありがとう。

以下のサイト。http://fionfion.seesaa.net/article/153756001.html


全然関係ないが、このブログのアクセスが普段より多いのは、ES細胞の臨床応用がスタートしたことと関係すると予想している。



Sunday, October 10, 2010

Goal and Solution

ゴールを設定して、その解決策を提示する。

作業仮説を提示して、その解決策(方法)を次に示す。


Tuesday, October 5, 2010

CSC believers. Cancer Stem Cell.

Cancer Stem cellsの話をするJohns Hopkins大学の教授がスライドで面白いことを記載してあった。

Cancer stem cell: Believers.
なんのことはない、信じている人もいれば信じていない人もいるってことか。論文読んでいたんではわからないよね。Believersの意味は、信者というよりも、信じている人たちという意味のように全体から聞こえた。CSCを信じている人たちは、こんなふうに言うって感じかな。

CSCのことを根っこに例えていた。草を抜いても、根っこが残っているとはえてくる。なーるほど。抗がん剤は、根っこをやっつけるくらいの除草剤じゃなきゃだめってことだ。