Sunday, March 11, 2007
直ぐ下の記事にコメントありがと。
あと、脂肪と言っても、骨髄内の脂肪とお腹の脂肪では状況が違うとおもしろいね。
Tuesday, March 6, 2007
サイトカイン・ホルモン産生臓器としての間葉系細胞
間葉系細胞のひとつである脂肪細胞または脂肪組織は、最大の内分泌組織として知られている.レプチン(Leptin)、腫瘍壊死因子(TNF-alpha)、アディポネクチン(Adiponectin), レジスチン(Resistin)、Adipsin, Angiotensinogen, ステロイドホルモン、PAI-1といったホルモンを産生する.分化過程でそれらのホルモンの産生量が変化することも知られており、メタボリック症候群との連関が指摘されている.骨髄由来の脂肪細胞との異同が興味深い.
CXCL12 (SDF-1/PBSF)は、造血、器官形成などの発生現象への寄与が明らかとなったサイトカイン(ケモカイン)であり、その受容体であるCXCR4はHIV-1の宿主細胞における受容体としても働き、エイズ発症に必須の分子として知られている.CXCR12は骨髄由来の間葉系細胞から産生されており、造血系・免疫系・血管系の発生・再生に重要な役割を果たす.
Epithelial-mesenchymal transition
上皮細胞と間葉系細胞との間に転換が生理的病的に生じやすいと思われる臓器を考えると子宮内膜と腎臓が思いつく.腎組織は中胚葉から生じる上皮細胞ということであるけれども、子宮内膜腺も同様ではないか.子宮内膜は、内膜腺上皮とその間葉系細胞からなり、上皮と間葉に共通する幹細胞が存在する可能性があげられている.腎臓の間質細胞と知られてる細胞は、脂質の小滴に富む星形の細胞がみられる.こららの細胞から、降圧作用を有するプロスタグランディンE2およびリン脂質である血小板活性因子が産生されると考えられている.この間葉系細胞も腎尿細管上皮から生じる可能性がある.このような発生学・再生医学・病理学に関与する現象から間葉系の性状と機能に関わる分子基盤を明確にし、間葉系細胞の維持に関わる遺伝子ネットワークを知りたい.
ヒトES細胞から間葉系幹細胞に関する論文の一部を写しました。
ヒトES細胞をOP9細胞の上で40日間、共培養し、間葉系幹細胞のひとつのマーカーであるCD73 (SH-4)でソートした.CD73陽性細胞を指標に単離した細胞をフィーダー細胞なしで続けて1、2週間培養することで、扁平で紡錘形細胞を得ることが可能となる.これらの細胞は成体の間葉系幹細胞のマーカーであるCD105(Endogrin, SH2), STRO-1, CD106(VCAM), CD29 (integrin beta1), CD44, CD54 (ICAM-1), ALCAM (CD166), vimentin, alpha-smooth muscle actinが陽性となり、造血系マーカーであるCD34, CD45, CD14は陰性である.Affymetrix社のDNA chip解析により、遺伝子発現が胚性幹細胞から間葉系幹細胞に移行する際に誘導される.胚性幹細胞から誘導された間葉系幹細胞ないし中胚葉系幹細胞は、骨、軟骨、脂肪に分化可能である.骨に特徴的なAlkaline phosphataseとBone sialoprotein、脂肪に特徴的なPPARγ、軟骨に特徴的なCollagen type II、Aggrecanの発現が上昇する.
細胞移植の供給源としての間葉系幹細胞
分化能を利用した戦略では、間葉系幹細胞移植による血管新生・心筋再生を介した心不全の軽減があげられる.心不全の実験動物モデルに対し、骨髄由来の間葉系幹細胞を移植した場合に心機能の改善がみられた.その機序として間葉系幹細胞が心筋や血管の細胞に分化することにのみならず、VEGF, HGF, adrenomedullin, IGF-1といったサイトカイン効果があげられる.ヒト拡張性あるいは虚血性心筋症に対するカテーテルを介した間葉系幹細胞移植の臨床研究でも良好な結果が得られたと報告されている.
歯科領域においても、歯槽骨の再生に骨髄由来の間葉系細胞が用いられ、効果があることが知られる.一方、間葉系細胞のみではセメント質、歯根膜の再生には至っていない.歯や歯周組織の発生には、口腔粘膜上皮に由来するエナメル上皮と周囲に凝集した神経堤由来の外胚葉性間葉系細胞が相互に様々な細胞増殖因子を分泌して増殖や分化を繰り返しながら進行し、歯冠、歯根、歯周組織が形成されていく.歯の発生には、上皮細胞と間葉系細胞との間でシグナル分子のやりとりをする上皮間葉系相互作用が必要となる.
もっとも、症例数が多い間葉系細胞を用いた細胞治療は、自家軟骨細胞移植である.関節軟骨の部分損傷に対し、軟骨細胞を損傷部に移植して修復する方法が報告されている.荷重がかからない部分の関節軟骨を採取し、軟骨細胞を培養して増殖させた後、骨膜で被覆した欠損部に移植する.既に数千例が行われており、産業界もこの分野に参入している.しかし、軟骨細胞の増殖能が限られていること、軟骨形成が完全でない場合があることより、問題点も指摘されている.
間葉系幹細胞の特定
20年も前(1985年)に自身が病理学の分野に参加したときに、食堂と呼ばれる部屋で現千葉大学教授の張ヶ谷健一先生に「上皮って何ですか?間葉って何ですか?」という単純というか無知というか質問をし、質問された側だけでなく質問した側まで困惑してしまった記憶がある.質問はともかく、間葉系細胞の役割には、ふたつある.ひとつは、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、神経細胞に分化する間葉系幹細胞としてであり、もうひとつは他の幹細胞を支持する細胞としてである.その役割を考えると同時に「間葉系細胞とは何か」という問いに対して分子レベルでの定義をすることは、極めて重要であると考える.
間葉は支持する組織という意義付けができ、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、神経細胞に分化する潜在能を有している.間葉系細胞は、E-cadherin陽性細胞(上皮細胞、胚盤胞内部細胞塊、胚性外胚葉・エピブラスト)に対し、BMP (bone morphogenetic protein)やFGF(fibroblast growth factor)、Wnt, TGF-betaが作用することにより、Smad, TCFといった転写因子を介してSnail(Znフィンガー型転写因子)が活性化されることにより形成される.このSnailがE-cadherin遺伝子プロモーターに存在するE-boxに結合することでE-cadherin遺伝子発現が抑制される.同時に、ビメンチン、ファイブロネクチンといった間葉に特徴的な遺伝子の発現が上昇する.最終的には、間葉系細胞を規定する分子機序が明確にし、間葉系細胞の分化過程を分子レベルで明らかにすることが必要である.
Sunday, March 4, 2007
一昨年の話
一昨年の夏のフィナーレを飾るような暑さが続く8月27日の新聞・テレビに、骨髄細胞を重症の心臓病に移植することで成果をあげた許俊英教授と五條理志講師の発表が伝えられた.重症の心臓病に対して骨髄細胞を注入する再生医療は、当時(2005年9月25日)で6例目であるけれども、補助人工心臓を外せるような状態まで回復した例は少ないとされる.実際には患者さんの腸骨から骨髄細胞を採取し、有核細胞を遠心分離し、カテーテルを使用して壊死した心筋細胞の冠動脈に移植した.細胞移植が、予想されるような副作用がなく、心臓における血管新生に作用したのであれば、それは極めて好ましいことである一方、十分に今回の「再生医療」の意義を検証する必要がある.話には聞いていたものの、日本経済新聞に掲載されたように男性患者さんが花束を看護師さんから受け取って退院するカラーの写真をみることは、前臨床研究を一緒に進めてきた者のひとりとして嬉しい.