Thursday, April 26, 2012

ESによる奇形腫

病理学会にて発表した「ES細胞による奇形腫」ポスター。「iPSによる奇形腫」の方は、あまりに盛り上がっていたので少々持ち場を離れて見ていました。

病理の専門家の先生方に感謝いたします。今後ともよろしく願い上げる次第であります。

ヒトES細胞を免疫不全動物に移植することにより、奇形腫を形成し、その病理組織学的解析を行った。卵巣及び精巣における奇形腫の診断基準に照らし合わせたところ、未熟奇形腫と診断された。奇形腫には、三胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)に由来する成分である神経上皮、気管支線毛上皮、骨・軟骨、消化管(胃、小腸、大腸)、肝、膵、皮膚(毛嚢等の付属器を含む)、腎をうかがわせる像を認める。未熟奇形腫ではあるが、明らかな悪性所見はなく、浸潤及び転移は認めていない。ヒトES細胞を用いた再生医療は、既に脊髄損傷及び網膜色素変性症の患者に対して臨床試験として投与されており、その安全性、特に造腫瘍性に関する病理学的知見は大きな意義を有する。多能性幹細胞による奇形腫に対する病理組織学的基準を、その医学的観点から早急に構築する必要がある。