Thursday, December 25, 2008

医薬品分野における国際会議 ICH (日米EU医薬品規制調和国際会議)

新薬承認審査の基準を国際的に統一することを目指す。非臨床試験・臨床試験の実施方法やルール、提出書類のフォーマットを標準化する。


RegulationとScience

限りなく進歩する科学技術を国民の利益にかなうように調整する科学。Regulation and Scienceにおいては、標準的試験法や判定法の開発が重要な分野になる。狭い意味では、「行政科学」、「有効性と安全性の評価科学」。医薬品のほか、食品、原子力など、安全性について社会的関心が高い領域で注目される。

NEDOの話の中で(川崎)。


Monday, November 24, 2008

Brown fatとWhite fat---これは面白い


Brown fatとWhite fatに関するブログ記事。オリジナル論文を含めて面白い。 

---以下はタグです。  脂肪 Circulation Research cardiomyocyte 上 京都 


Tuesday, November 18, 2008

臨床研究に対する薬事規制

 極めて興味深い論文のリプリントを頂戴したので、一部を抜粋し、語尾を改変した。元論文は、生体医工学 46(3): 338-341, 2008です。抜粋ですので、ニュアンスが変わっているかもしれません。薬事法を監視しているのは、監視指導・麻薬対策課(監麻課)だそうです。

 薬事法では、必要な許可を受けた者だけが承認を受けた製品だけを「製造販売」することができるとしている。必要な許可、承認を受けずに製品を「交付」できる特例が治験である。治験の定義は、「第14条第3項の規定により提出すべき資料のうち臨床研究の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施をいう」となっていて、要約すると「薬事承認申請のための臨床試験」である。

 薬事法では未承認の医療機器を用いる、治験以外の臨床研究を想定せず、これを禁止していることになります。

 薬事法では、医師が未承認の医療機器を自作する権利、入手して使用する権利の規制はしていません。従って医師の自作の医療機器、海外からの個人輸入した医療機器であれば未承認であっても臨床研究が可能です。整理すると、治験以外の臨床研究では、1)国内企業の試作した未承認の医療機器は使用不可、2)海外企業の提供する国内未承認の医療機器は個人輸入で使用可能、3)医師の自作品は薬事法の規制対象外なので使用可能、ということになります。たとえば、治験での交付を除き、国内で稼働しているda Vinciは個人輸入によるものと思われます。

 国産技術の臨床成果として新聞報道されたところ行政指導で薬事法違反を指摘されて、続けられなくなった事例があります。

 医療機器として売られていない物(金物屋の金槌)も、臨床研究に用いられたといって直ちに販売者が薬事法違反になることはない。

 ここからは抜粋ではありません。医療機器で売られていない物を臨床研究に用いることは薬事法違反ではないんだ。ただ、最後まで医療機器でないと言い続けることができるのだろうか。再生医療で言えば、再生医療で使う機器が医療機器で売られていないと言い、ヒト幹指針に申請すれば、医師法の元で臨床研究できる。今、ヒト幹指針の委員会に提出されている臨床プロトコールの中で使用しているデバイスは薬事法違反にならないのかなあ。どんなものが申請されているのであろうか。


Friday, November 14, 2008

iPS細胞を利用した医療の良いところ

 iPS細胞は、ES細胞と同様の分化能を有していると考えられることより、その分化能は多岐に渡る。ヒトES細胞にて確認された分化形質は、神経、心筋、血液細胞、軟骨、骨、平滑筋、上皮があげられる。ヒトES細胞は、欧米、アジア、豪州にて樹立されているが、iPS細胞は日米にて樹立が確認されている。iPS細胞が医療において治療薬として期待されているのは、その多分化能のみならず、自分自身のES細胞を極めて低侵襲に作成することができるためである。例をあげれば、自らの口腔粘膜を生検し、試験管内で増殖させ、万能化させる(4因子を加える)ことにより、自分自身のES細胞(万能細胞、iPS細胞)を得ることができる。自分自身のiPS細胞を得ることのメリットは、自分自身の細胞であることより、HLAが一致しており、免疫拒絶のない細胞移植が可能となることである。

 iPS細胞が樹立できることが発見される前は、自分自身の体細胞の核を取り出し、卵子に入れることでES細胞を作るクローン技術法または核移植法が自分自身のES細胞を作り出す唯一の手段であった。このクローン技術法は、残念ながら卵子の入手が困難であること、クローン人間を作出する方法と一部同じであること、ES細胞同様にヒト生命の萌芽を滅失することから、倫理的な面からもむずかしい。また、技術的にもヒトでは、マウスや牛とは異なり、クローン技術法を用いてES細胞の作成に成功したという報告はない。クローン技術法に変わる方法として、自分自身のES細胞を得るためにiPS細胞の発見は大きい意義がある。

 iPS細胞を得るためには体細胞を培養し、因子を導入し、コロニーを単離する作業が必要となり、どんなに少なく見積もっても2ヶ月は最低時間が必要となる。この2ヶ月という期間は、疾病にかかった患者がiPS細胞を用いて再生医療を受けたいと思ったとしても自分自身のiPS細胞を得るためには2ヶ月以上待たなくてはいけないことを意味している。これは急性、亜急性の疾病では意味をなさないので、前もって様々なHLAの型を有したiPS細胞を作成しておき、バンク化しておくことが考えられる。細胞をバンク化して共通の供給源とするという発想は、臍帯血バンクでの成功例があり、将来の興味深い課題として残されている。また、iPS細胞を用いた再生医療が普遍的な一般の医療になるためには、医療界が産業界と協調することが必要不可欠である。



Thursday, November 13, 2008

平成19年度特許出願技術動向調査報告書

 平成19年度特許出願技術動向調査報告書に記載されている、幹細胞技術の概要が平易にまとめられている。幹細胞技術は、要素技術と応用産業に分けられる。要素技術には、「新規な幹細胞」、「分離・精製・増殖・保存」、「分化制御」、「細胞解析」、「細胞改変」のための技術が含まれる。一方、応用産業には、「再生医療・細胞移植」、「創薬・診断」、「有用物質生産」、「クローン動物関連」での幹細胞の利用が含まれる。この分類は、幹細胞技術を考える上で便利である。


基盤要素技術から出口を探る---出口が最初にありきじゃない---

 幹細胞に関する基盤技術を組み合わせることにより、再生医療がシステム化されることは間違いない。その一方、すばらしいレベルの高い基盤技術が実際の再生医療と中にうまくフィットしない場合がある。特定の疾患に対して有効な基盤技術を開発しようとするのは困難が伴うことが多いと個人的に感じている。一方、幹細胞基盤技術から出発すれば、そのレベルが高い場合、その有用性がどの疾患に対する再生医療に最も有効かという出口を見つけることは成功の確率を上げる。それには、医師の知識、経験がある人に真剣にコミットして貰うことが好ましいと思っている。これは経験に基づいた「土地勘」の有無と考えていただきたい。また、対極の話になってしまうが幹細胞基盤技術の物理的メカニズム、化学反応、薬理作用を理解できるかどうかは、医薬品・医療機器として承認・上市する際に大切になってくると思っている。レベルの高い基盤技術が、応用産業に進まずに宙に浮いた状態にあるのは残念だ。要素技術と応用産業を俯瞰できる目利きを利用するべきである。さらに、要素技術をシークエンチャルに並べて、応用産業化できる能力が、幹細胞技術を医療の最前線の現場に持ってくる際に必要となる。



Sunday, November 9, 2008

Wikipedia 骨髄

Wikipediaの骨髄に関する項目から以下の内容が削除されていた。面白い記述なのに。骨髄の脂肪分は美味しいよね。骨髄間質細胞の脂肪である。


== 食品としての骨髄 ==
ラーメン等では「ガラ」として良く煮込みスープのベースとする。moelleとして[[フランス料理]]ではスープや[[ソース (調味料)|ソース]]に用いる他、[[大腿骨]]などを切りオーブンで焼いてプディングの様にすくって食べる。直接骨髄をすすって食べていたと思われ、そのためには長管骨の硬組織を破壊する必要があった。これが人間の進化と関係があったとする説がある。鶏ガラスープなどは 何時間も煮込むとだしが出て非常に美味しいものである。 骨髄の味でもあるのだ。



再生医療に関する治験

再生医療に関して、治験が行われたことは少ない。治験承認が得られたとしても、薬事承認までいく必要がある。また、薬事承認がとれたら、その後は保険収載ができるように申請し、承認しなければならない。このプロセスは金科玉条のように思われているが、このプロセスを全部経なくても再生医療はできると思っている。どこかまで行ったならば、そこで堂々と細胞移植を行えばよい。透明性、公開性をもってして、社会に暖かく迎えられる必要がある。

ただ、このプロセスはIPOを行う会社にとって、必要不可欠なところであろう。皮肉ではないが、投資家に対するデモンストレーションとして必要なプロセスとも言える。



Saturday, October 25, 2008

山火事と湯気の中の菩薩



山火事と湯気の中の菩薩

虹の輪の中に撮影者が映る「ブロッケン現象」なんだと思っています。温泉の湯気に撮影者の後ろの方から光が差し込んで虹の輪ができていました。写真でははっきりしませんが、肉眼では結構はっきりと分かっていたので珍しいなと思い、撮影しました。


Universal cellsの検証

細胞医療における安全性の基準について。細胞株では、その基準は厳しい方向とすることが可能であり、また厳しくするべきである。専門家から伺った。その安全性を担保するための項目は大事だ。網羅的なアレイによる検証は必要不可欠だ。









Cell sheet

TERMISでO氏のCell Sheetの発表を拝聴しました。ひとつのことに集中していて感銘を受けました。






臨床応用

TERMISで感じたことがある。論文も大事だが、実際に臨床応用できた発表が一番評価が高かった。現場へもっていくことができた技術に対する高い評価は、ある意味、臨床経験のない自分にとって辛いものであり、良いパートナーが必要だと強く思った。その点でもO氏は天才であると思った。

自分は臨床をできないのであるから、臨床をできる方々にすべてお願いし、裏方に徹し、試験管内、動物実験での成果を生かして貰う。絵に描いた餅は食えない。






YSNPのUpper fallと記憶している。夕方に行った。すごい水量だが、写真ではその雰囲気がでていない。


kFDA versus FDA and EMEU

ヒトの軟骨傷害に対して、穴を開け、骨髄からの栄養を通し、ブタの軟骨を移植するという「治験」が韓国で許可されたという発表がTERMISであった。これって、日本では通らないだろうなと思っていたら、どちらかの国の方、おそらく台湾か中国の方が、kFDAで通ったこの治験申請は、FDAやEMEUで通ると思うかという厳しい指摘があった。かなりrespectを示した後の発言ではあったものの、問題点をついた質問であった。

ただし、臨床応用を20例程度実現していることに対して、会場が暖かい雰囲気につつまれていた、日本の学会では、その種類によるだろうけど、どんな反応になるだろうか。この点に関しては、様々な困難があるだろうが、実現化する力、意志が大事であると考えている。










Bear lake. 湖面の青色が、独特でこの世のものとは思えなかった。ただ、日本でも日光白根山の山頂のところにある湖の色はその日の天気に左右されるが、この世のものとは思えないと感じたことがある。


Wednesday, October 22, 2008

糖鎖マーカー

ヒト幹細胞は、糖鎖マーカーで規定されているものが多い。マーカーと言えば、ひとつ、ふたつといった形で規定する訳であるが、網羅的な糖鎖マーカーを同定するアプローチも、幹細胞分化状態を検証するのに使える。



Saturday, October 18, 2008

フィーダーレイヤー

フィダーレーヤーには、2種類ある。未分化性を誘導するもの及び増殖を誘導するもの、ならびに分化誘導を生じさせるものである。大部分は、細胞であるが、一部、羊膜マトリックスである。

支持能
1.骨髄間質細胞:造血細胞を長期に維持する。by Dexter TM.
2.マウス胎児線維芽細胞: マウス及びヒトES細胞の未分化性維持と増殖。


分化誘導
1.OP9: ES細胞を間葉系前駆細胞へ誘導する (PLoS Med, 2(6):e161)。また、心筋分化誘導する。
2.PA6: ES細胞を造血細胞へ誘導する。
3.羊膜の基底膜とmesodermal layer: ES細胞の神経分化










川を渡るバイソン。イエローストーン国立公園で、草を食べに反対側まで行って、お腹がいっぱいになったので、元のねぐらに戻るところ。みんなで移動している。


ヒトES細胞とiPS細胞から生殖細胞への実験をすることが許可された


ヒトES細胞とiPS細胞から生殖細胞への実験をすることが許可された「ようだ」。新聞記事を読んだので、本当かどうかは不明。いつからかも不明。

写真は、イエローストーン国立公園の温泉からたくさんの石灰が出ているところ。スターウォーズは、こんなところから景色を利用したのだろうか。よく似ているように思えた。



クローン動物を紹介

再生を紹介する時には、ドラゴンボールのナメック星人で例示する。

胚性幹細胞を紹介するときには、奇形腫から生まれた、ブラックジャックのピノコで例示する。

クローン動物を紹介するときには、このトラックパッド先の記事を利用しよう。正直言って全く知らないアニメキャラなので友人に教授いただこう。
http://blogs.yahoo.co.jp/subaru9631/34631426.html
上記のサイトから、ちょっと長いけど転載させていただきます。
 「クローンとしてのクルーゼ」
一般的に一つの細胞の分裂回数には限界があり、分裂を重ねるにつれて細胞の老化が進むと考えられている。染色体の末端部分にはテロメアと呼ばれる構造があり、これが細胞分裂をカウントする役割を果たしている。テロメアは6個の塩基からなる配列を数千回も反復した構造を持っており、その長さは細胞分裂を重ねるほど少しずつ短くなり、50~60回を限度にして細胞は分裂できなくなる。クローンの細胞のテロメアは短くなる傾向があり、例えば10歳の個体からクローンを作れば、そのクローンのテロメアはすでに10年分の細胞分裂を終えた長さになっており、その分寿命が短いことになる(しかし実際のクローン動物の実験では元の個体と同じ長さのテロメアを持つクローンや、あるいはそれ以上の長さのテロメアを持つクローンが生まれたという報告がありクローンのテロメアの長短については一概に言えないのが現状である。また個体の寿命はテロメアだけでなく生理的な要因が大きく影響するため、必ずしもテロメアの長さ=寿命ではない)。

すでに壮年だったアル・ダ・フラガのクローンであるラウは短命だったと見てよい。そのためアル自身の代役から失敗作として扱われた。このこともアルや全人類を憎悪する原因といわれている。そのためクルーゼは老化を遅らせるべく細胞分裂を低減させる薬物を服用していた。しかしその効果が切れた際の副作用はかなり激しいもので、苦悶するラウの姿が度々見られた。なお、小説版ではラウの素顔は老人のものだったという記述が存在し、身体も既にかなり老化していたと説明されている(『DESTINY』ではレイ・ザ・バレルが、自分もクローンであることをシン・アスカに打ち明けた時の回想シーンの中で、ラウの仮面が外れた際の素顔が見られる。老人というほどではないが、25歳にしては顔には皺が刻まれ老けて見える)。

アル・ダ・フラガがナチュラルのため、そのクローンであるラウも当然遺伝子的にはナチュラルである(小説版ではそうである事が書かれてある)。しかし彼がナチュラルであることを看破できたコーディネイターは皆無であり、その上コーディネイターの兵士の中でもトップガンとして活躍していたことから、ナチュラルとしては極めて稀と言える高い能力を有していたようである。事実、コーディネイター用のモビルスーツを操作しているナチュラルは、SEED本編ではラウただ一人である(DESTINYではレイ・ザ・バレルも)。









またまた、イエローストーン国立公園での写真。鴨だと思う。


個体の老化

細胞の老化に関与するArfが、個体の老化に関係するという。読んでないけど、個体の老化マーカーは、マウスの場合何で検討したんだろう。細胞老化の説明方法で、個体の老化を説明したんだろうか。ただ、この研究は、スパンが長すぎて、とても追試する人がいないだろうね。





ホテルの駐車場で出会ったMule deer。結構大きい。それと人間の近くに寄ってこようとする感じがある。


再生医療におけるドナー細胞の腫瘍化を検証する方法でベストは?

いずれが良いのかは、不明だが、列挙する。

1.免疫不全動物で腫瘍形成能を検討する(FDA, WHO)。
2.Comparative genomic hybridization.
3.染色体核型
4.TERT発現をRT-PCRで定量。
5.培養し続けて、不死であるかどうかの検討。

感度の問題が重要かもしれない。感度とは、ドナー細胞中に形質転換した細胞(腫瘍細胞と言える細胞)がどの程度含まれると異常と検出されるのか。また、形質転換と検出方法の関連が明確になっているか、関連がどのようなものであるかが科学的に証明できるものがよいだろう。








イエローストーン国立公園で見たウルフ(Wolf)。間違いないと思っている。灰白色の犬のような感じ。ちなみに大きい奴も真夜中の3時頃見かけたけど、あまりに怖くて逃げました。


Thursday, October 16, 2008

MAPC---Honest unintentional errors---

MAPCは、Honest unintentional errorsとして決着付くようです。Bloodの論文は、retractになるようです。特許とJCIとNatureの論文にも問題となる図が掲載されているとのこと(Nature, 455(16):849, 2008). 



Generation of iPS by the plasmid vectors without chromosomal integration

山中氏によってScienceに発表されたPlasmid vectorでできたiPS細胞は、染色体へのインテグレーションがPCR, Southern blot解析で認められていないようです。Without evidence of plasmid integrationとのことです。失礼しました。



Tuesday, October 14, 2008

ついに2因子でiPS

4月頃から、実験していたのは、研究室のA氏は知っていたものの、報告された。sox2とoct-4/3でiPS細胞が造れたという報告である。メルトン博士が発表した。バルプロ酸を使用している。まだ、全部を読んだ訳ではないのですが。。。








運転した距離は1,900 kmであることの証明。


Monday, October 13, 2008

Wikipedia---骨髄間質細胞---

最近、ある方から、「ブログやっているですって。よく時間がありますね。」と言われます。そこで、Wikipediaの記載を始めました。項目は「骨髄間質細胞」です。「えーっ。Wikipediaもやっているんですか。本当に、よく時間がありますね。」と、また言われるでしょう。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AA%A8%E9%AB%84%E9%96%93%E8%B3%AA%E7%B4%B0%E8%83%9E



Pluripotent stem cells from adult testis

Nature doi:10.1038/nature07404
メモです。

LIF alone
GDNF followed by LIF
上記がよい。他のコンビネーションはだめ。
LIF/FGF2 did not improve germline stem cell culture (GSC culture).

LIF 1,000 units/ml
FGF2 4 ng/ml
GDNF (Sigma) 4 ng/ml



市民公開講座@国際湘南村

市民公開講座のビデオをアップしました。科学を専門になさっていない方々を対象にした話で科学とは関係のない内容もございます。楽しんでいただければ嬉しいです。

タイトル 「再生医療と病理」

http://1954.jukuin.keio.ac.jp/umezawa/umezawa.html



Sunday, October 12, 2008

卵子ホルモン

Green mouseは本当に役に立っているし、GFPの発見ってすごいよな。研究室内で使用しているMさんの実験でも、卵子での分子挙動を見ている。 卵子ホルモンが精子と出会うことで受精が生じるという発表です。Mさんの会心作です。

Proc Natl Acad Sci U S A. 105(35):12921, 2008
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18728192?dopt=Abstract



心筋形成

心筋形成をdirect reprogrammingで行おうという口演を聞いた。小室氏がNature誌に発表したIGFBP4はLRP5に作用する液性因子だが、Nature Cell Biol誌に発表したHMGA2はBaf60c (SWI/SNF related, matrix associated, actin dependent regulator of chromatin, subfamily d, member 3)のような働きがあるのだろうか。









Buffaloは、心筋研究者の方が家族と一緒に見にいけとすすめてくれました。ありがとうございます。朝早くに起きて、朝もやの中に草を食むBysonにびっくりしました。


Tuesday, October 7, 2008

クローン研究

英国におけるクローン規制は、世界の他の国とは異なる印象を受ける。



Fa2N4

Fa2N4という不死化肝細胞株があるらしい。どのようにして不死化したのかを調べてみたい。



成人精巣由来幹細胞

精巣由来幹細胞がヒトから樹立されたという報告がNature誌に欧州のグループから発表された。形態は、ヒトES細胞と多少異なるが、皮下への移植では多分化能を示している。正直言うと組織の写真で移植した細胞とホストの細胞があんまり区別できていないように思える。マウスGS細胞と同等だろうか。40回培養できたようなので、不死なのだろうか。遺伝子導入なしで不死なのは、胚盤胞内部細胞塊と精巣由来幹細胞か?



Sunday, October 5, 2008

Sirt1

米国のI博士がTenureになった報告を受けました。心よりお祝い申し上げます。

I博士が電話で言っていました。

Sirt1がES細胞やiPS細胞でシグナルが高い。未分化性の維持には必要ないかもしれないが、重要な臭いがするって。Sirt1と幹細胞、そして老化と、なんか面白い連関があると楽しい。



Grand Teton National Park


Friday, October 3, 2008

hERG assay

hERG assayの市場は20億円程度とのこと。細胞に、Potassium channel遺伝子を導入し、ツールとしている。ヒトの細胞で、いいツールができれば動物でのアッセイの市場を食って50億円程度の市場になる可能性があるようだ。開発したものが事実上の標準仕様になる必要は必ずしもなく、各メーカーの希望する仕様ないしはメーカーが保持するブツの有用性が証明できれば良い。心筋の場合で言えば、フィーダーレスでchemically-defined mediaが良い。

他の細胞でも、そうだろうな。



医薬品による催不整脈作用 (心電図におけるQT間隔延長)

薬物によるQT延長は,torsades de pointes型の心室頻拍や突然死といった副作用を誘発する.QT延長を誘発する薬物の多くが,心筋細胞の遅延整流K+チャネル(IK)の速い成分(IKr)を抑制し,心筋細胞の活動電位延長および心電図におけるQT間隔の延長を起こす.HERG(human ether‐a‐go‐go related gene)がIKrを形成するK+チャネルサブユニット分子である.HERGチャネルは,1200のアミノ酸からなる6回膜貫通型の電位依存性K+チャネルであり,遺伝性QT延長症候群の原因遺伝子の1つ(LQT2)である.HERGチャネルを培養哺乳動物細胞あるいはアフリカツメガエル卵母細胞に発現させると,心筋細胞で観察されるIKrと類似したK+電流が観察される.



Wednesday, October 1, 2008

SATB1

SATB1が、マウス乳癌の転移に関与すると、厚井重松輝美さんが発表している。SATB1って、unwinded DNA structureに結合できる蛋白質としてロシア人の女性ポスドクが同定した遺伝子だったと記憶している。15歳の息子が生まれる前の話で、そのロシア人ポスドクは、すごく実験が早かった。子どもを迎えに行くために、てきぱきと実験をこなしていた。この発表知らなかったな。



Saturday, September 27, 2008

練習

練習です。






Adenovirusで、iPS.

AdenovirusでマウスiPS細胞ができたという報告があった。遺伝子導入がないとのこと。ヒトは、いつできるだろうか。マウスの場合、ねつ造の可能性を否定できない(検証できない)ので、ヒトでの成功が待たれる。まあ、そこまで疑わなくてもいいのだろうし、疑ってしまっては元もこうもないのでしょうが。Adenovirusを利用したヒトiPS作成の場合、ヒトES細胞との違いがとても興味深い。



Friday, September 19, 2008

Shane, come back


iPS作成に、導入する遺伝子を少なくする「競争(?)」が盛んだ。4因子から3因子に、そして2因子に。遺伝子数を少なくするには、低分子化合物を利用することで解決しようとしている。同時に、元となる細胞の種類によっても、遺伝子数を少なくできる。皆が目指しているのは、Transgene-free iPS細胞であることは間違いない。

また、iPS作成にはヒト間葉系細胞を用いると3週間以上(23日くらい)かかるが、皮膚の表皮細胞を使用すると早いらしい。

写真は、グランドティトン国立公園。Shaneという映画で有名な場所とのこと。この夏に訪れたが、映画は見ていない。


Wednesday, September 17, 2008

ラボ・ミーティングでの昔話

今の研究所でのJob talkを再現しました。大学時代に所属した研究室内での研究紹介です。自分とは関係のない仕事も含んでいます。


http://jp.youtube.com/watch?v=AakprccVW3A


Tuesday, September 16, 2008

PCRの酵素は、湯元から。



M先生のおすすめで、Yellowstone国立公園に行って参りました。多くの温泉がわき出しており、そこに増殖している細菌からポリメラーゼ酵素を抽出したと聞いた。



Heart spring



Direct cell reprogrammingは、iPS細胞に止まらないようだ。複数の転写因子を導入することで、生体内でベータ細胞が形成されるという論文が、Melton研究室から発表された (Nature, doi:10.1038/nature07314) 。Ngn3 (Neurog3), pdx1, Mafaの3つの因子を導入することで膵外分泌腺がベータ細胞に変身できるという。膵外分泌腺とベータ細胞は兄弟なので、3因子で分化転換したと予想されるが、脱分化過程を伴っておらずに分化転換させ得ることができることはステキです。この手法で、次々と新しい分化転換が報告されていくだろう。写真は、Yellowstone国立公園の中にあるHeart springという泉で、形が心臓なのでそのような名前をつけられたと予想します。



Friday, September 5, 2008

自己紹介---自己宣伝---

骨髄間質細胞の分化の研究から始まり,メチル化・クロマチン構造の改変の研究,そしてヒト胎児性癌細胞の分化に進み,研究テーマは一貫して「細胞の全能性と部分全能性」の問題に関することである.間葉系細胞の予想以上の可塑性に驚いている.間葉系細胞のdefaultとpreferenceの状態を行ったり来たりさせる(細胞転換)ことにより,細胞治療の「事実上の標準仕様」として,臓器の再構築の世界に貢献させたい.

http://akihiroumezawa.blogspot.com/2008/09/self-introduction.html



Thursday, August 14, 2008

学会での講演(英語)---2003年頃の発表です

骨髄間質細胞の多分化能について話した講演です。英語ですみませんが、一生懸命、発表練習しています。2003年頃の発表です。主にマウスの骨髄間質細胞が多分化能を有していること、移植すると造血を誘導できることを話しています。当時は、骨、軟骨、脂肪、骨格筋、心筋への分化について話しています。その後、この発表内容についての、論文を発表することができて嬉しく思っております。

下のリンク先に行き、ご覧頂きたく存じ上げます。

http://akihiroumezawa.blogspot.com/2008/08/talk-multipotent-marrow-stromal-cell.html



Wednesday, August 6, 2008

献血との比較

ES由来erythroid細胞株から赤血球を作成するのと、献血での赤血球利用を、比較して、培養からの効率が悪すぎるのではないかという疑問がある。ES由来erythroid細胞株から赤血球を作成するのには、お金がかかりすぎる。

ある学会の現理事長に申し上げたら、献血は奉仕で供給されるわけだから、比較は単純ではありませんと返事を頂戴しました。

それでも、ES由来erythroid細胞株から赤血球を作成するのは値段的に高すぎるよね。



Thursday, July 31, 2008

Stem Cellの表紙、三好さん、おめでとうございます


Cardiomyogenic differentiation of human menstrual blood-derived mesenchymal cells (MMCs) was observed in vitro. Immunocytochemistry revealed a clear striation pattern of cardiac troponin-I (red) in about 30% of GFP-positive (green) MMCs. The GFP and troponin-I staining were observed alternately in a striated manner, suggesting that troponin-I is expressed in the GFP-positive cells.



エピジェネティクスを用いた細胞の規格化

移植のドナー細胞の規格化です。具体的にはT-DMR(Tissue-dependent, Differentially Methylated Region)を短時間で検証するソフトを開発し、それによりドナー細胞の分化形質の担保が出来ないかということ。更に、産業化している移植医療の安全性を担保するためにドナー細胞の腫瘍化可能性を、癌遺伝子p16、RB等の遺伝子のエピジェネティクな変化を網羅的に解析し、形質転換可能性のCut off値を設定し、移植可能性を担保出来ないかといことです。


Tuesday, July 29, 2008

ES由来erythroid細胞株

マウスES由来erythroid細胞株 2 x 10^7個で、2 ul分の血液になる。

ES由来erythroid細胞株は、生体内で貧血を治すことが可能である。除核された赤血球は腫瘍化しない一方、赤白血病の可能性は増すと私は考える。学問的な価値は高い。



DNA methyltransferase

DNMT3aと3bは、de novo methyltransferaseである。Dnmt3aがDNAが露出したリンカー部分を効率よくメチル化するのに対し、Dnmt3bはヒストンが巻き付いているヌクレオソーム・コアをメチル化する。Dnmt3aは特定領域のメチル化に、Dnmt3bはゲノムワイドなメチル化模様の形成に関与すると考えられる。

この生化学的な結果は、生物学レベルでの機能と直接リンクしていると考えられる。どうリンクしているかを考えるのは重要である。



再生医療における細胞起源と発生過程における細胞起源


●起源を議論する上での留意点
 骨髄由来の間葉系細胞はFriedensteinにより初めて報告され、骨髄由来の間質細胞・間葉系細胞はCFU-f(Colony-forming unit-fibroblasts)として定量するアッセイが開発された(Friedenstein AJ, Deriglasova UF, Kulagina NN, Panasuk AF, Rudakowa SF, Luri?? EA, Ruadkow IA. Precursors for fibroblasts in different populations of hematopoietic cells as detected by the in vitro colony assay method. Exp.Hematol. 2:83-92, 1974)。間葉系幹細胞の起源を議論する上で、気をつけなくてはいけない点として、間葉系幹細胞は本来は発生過程において生体内で存在している細胞であるが、実際の多くの報告は決して生体内における間葉系幹細胞を指しているわけではなく試験管内において適切な条件の元で増幅させた培養された間葉系幹細胞を指していることがあげられる(Pittenger MF, Mackay AM, Beck SC, Jaiswal RK, Douglas R, Mosca JD, Moorman MA, Simonetti DW, Craig S, Marshak DR.: Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells. Science 284: 143-147, 1999)。発生過程や生体内において間葉系幹細胞としての性質を有していなくとも、前述したような骨髄、臍帯血、臍帯、胎盤、月経血、子宮内膜、胎児、真皮、脂肪、末梢血に由来する培養皿に付着する形で増殖する細胞が生体外で増幅される過程で幹細胞性(多分化能と自己複製能)を獲得する可能性がある。近年、注目されている間葉系幹細胞を用いた再生医療においても、種々の組織を培養した後に行われており、一般的な組織再生とは異なり、同時に造血幹細胞とは概念的に異なるものである。


Monday, July 28, 2008

間葉系組織の発生


●間葉系組織の発生
間葉系細胞は、その起源が中胚葉であれ神経堤(外胚葉由来)であれ、胎児の結合組織を形成し、軟骨芽細胞、骨芽細胞など多様な細胞に分化できる能力をもつ。そもそも、間葉系幹細胞を含むと考えられている組織である骨、軟骨、脂肪といった組織のほとんどは中胚葉から体節を経て分化する(図1A)。骨は、大部分は中胚葉(沿軸中胚葉、側板中胚葉)に由来するが、頭部の一部の骨は外胚葉(神経堤)に由来する(図1 B, C)。すなわち、頭部の神経堤の細胞は、間葉に分化し、頭蓋骨の一部を作る。頭蓋は、脳をつつむ神経頭蓋と顔面頭蓋に分けられる。神経頭蓋はさらに膜性神経頭蓋と軟骨性神経頭蓋の2つに分けられる。膜性神経頭蓋は頭蓋冠となる部分であり、これらの骨は神経堤より発生する。一方、下垂体より前方の軟骨は神経堤由来で、それより後方の軟骨は沿軸中胚葉より発生する。顔面頭蓋の発生の面から見ると、第1 ・2 鰓弓内部の間葉組織が顔面頭蓋の形成に大きく関与する。この鰓弓内部の間葉組織は神経堤由来つまり外胚葉性であることが、大きな特徴である.神経堤細胞は、脊椎動物の胚発生において、神経板の陥入過程でその両縁に生ずる外胚葉由来の細胞集団で、自己再生能と多分化能を有する幹細胞としての性質を備えている。神経堤細胞の最も際だった特徴は、遊走によって胚に広く分布し、神経細胞やグリア細胞・皮膚色素細胞・副腎髄質細胞・顎顔面の間葉細胞(骨・軟骨など)・血管平滑筋細胞など実に多彩な細胞に分化する。こうした分化の運命は、発生する領域の位置情報とともに、遊走した先の細胞外環境によって決定されると考えられている。



暑い

暑い。

熱ショックで、ヒト胎児性がん細胞はextraembryonic ectodermに分化するんだよね。10年くらい前に論文として、発表したんだけど、iPSは熱で分化するのかね。


Sunday, July 27, 2008

間葉系幹細胞の復習と今日の研究室から見える夕焼け


 間葉系幹細胞は、英語ではMesenchymal stem cellとなり、間葉系幹細胞の供給源のひとつであり最も利用されている骨髄間質細胞は英語でMarrow stromal cellとなり、いずれもMSCと略される。少数だが、Multipotent stromal cellとの呼び方を提唱する研究者もいる。多くの場合、いずれも略語でMSCとして示されるのできわめて紛らわしい。その一方、骨髄間質細胞の一部に間葉系幹細胞があることは間違いないので、似たような言葉で異同をはっきりさせずに使用している場合もある。間葉系幹細胞の間葉とは中胚葉に由来する胎生期結合織を指し、間質細胞とは組織で機能する細胞が存在するところで支持構造を形成する結合織細胞を指す。これらの間葉系幹細胞を説明する記述は正確ではあるものの、近年における組織修復または再生医療における間葉系幹細胞の役割とは異なる。

 間葉系細胞とは骨、軟骨、脂肪、骨格筋、真皮、靭帯、腱といった結合織細胞を総称しており、発生学的に沿軸中胚葉(paraxial mesoderm)由来の細胞である。1999年、ヒト間葉系幹細胞から骨、軟骨、脂肪に分化する多分化能を有する間葉系幹細胞を同定したという報告をPittengerらが行った。また、この沿軸中胚葉の他に、心筋、平滑筋、血管内皮といった発生学的に臓側中胚葉(visceral mesoderm)由来の細胞があり、間葉系幹細胞のなかに臓側中胚葉にも分化できる幹細胞が見出された。またさらに、一部の間葉系幹細胞は、神経上皮由来である(文献1)。間葉系幹細胞は、分化能に応じて階層構造を形成しているものと考えられている。このような間葉系細胞の供給源として、骨髄、臍帯血、臍帯、胎盤、月経血、子宮内膜、胎児、真皮、脂肪、末梢血等があげられる。

1.江良択実、高島康弘、西川伸一。 間葉系幹細胞の起源。 蛋白核酸酵素、53(1): 59-64, 2008



先天性代謝異常疾患に対する間葉系幹細胞移植と造血幹細胞移植

間葉系幹細胞を用いた先天性代謝異常症候群の患者に対する治療報告を転載するが、造血幹細胞に比較し、間葉系幹細胞は傾向として治療となるべき酵素の産生が少ないと思っている。間葉系細胞を用いる際には、(疾病にもよるが)遺伝子導入が必要となると考えている (Gene Ther. 2004, 11:1475)。

Allogeneic mesenchymal stem cell infusion for treatment of metachromatic leukodystrophy (MLD) and Hurler syndrome (MPS-IH).

Division of Hematology/Oncology, Department of Medicine at Case Western Reserve University and University Hospitals of Cleveland, Cleveland, OH 44106, USA.

Patients with Hurler syndrome (mucopolysaccharidosis type-IH) and metachromatic leukodystrophy (MLD) develop significant skeletal and neurologic defects that limit their survival. Transplantation of allogeneic hematopoietic stem cells results in partial correction of the clinical manifestations. We postulated that some of these defects may be corrected by infusion of allogeneic, multipotential, bone marrow-derived mesenchymal stem cells (MSC). Patients with Hurler syndrome (n = 5) or MLD (n = 6) who previously underwent successful bone marrow transplantation from an HLA-identical sibling were infused with 2-10 x 10(6)/kg MSCs, isolated and expanded from a bone marrow aspirate of the original donor. There was no infusion-related toxicity. In most recipients culture-purified MSCs at 2 days, 30-60 days and 6-24 months after MSC infusion remained of host type. In two patients the bone marrow-derived MSCs contained 0.4 and 2% donor MSCs by FISH 60 days after MSC infusion. In four patients with MLD there were significant improvements in nerve conduction velocities after MSC infusion. The bone mineral density was either maintained or slightly improved in all patients. There was no clinically apparent change in patients' overall health, mental and physical development after MSC infusion. We conclude that donor allogeneic MSC infusion is safe and may be associated with reversal of disease pathophysiology in some tissues. The role of MSCs in the management of Hurler syndrome and MLD should be further evaluated.



一方、造血幹細胞移植は、先天性代謝異常症候群に対し有効と考えられるが、ドナー細胞の生着、GVHDの問題が残る。先天性代謝異常症候群に対する造血幹細胞移植の結果を、東海大学の加藤俊一教授がまとめました。その報告は、極めて重要な意義があると考えています。先天性代謝異常症候群の患者に対しては、疾病により、骨髄移植、酵素補充療法、肝移植等の治療が行われていると理解しております。

 報告の一部です。

 患者141例について、その臨床的特徴、移植方法、移植結果、治療効果を検討した。

 移植の対象となった疾患としてはムコ多糖症が最も多く(72例)、全体の半数を占めていた。次いで副腎白質ジストロフィー(ALD)が38例であった。男女比では男性が113例、女性が28例で圧倒的に男性が多かった。

 初回移植のドナーは74例が血縁者(同胞63例、父親5例、母親6例)、67例で非血縁者であり、108例でHLAが一致していた。移植細胞源は113例で骨髄、1例は末梢血幹細胞、1例で骨髄+末梢血幹細胞、22例で臍帯血であった。

 99例(70.2%)では初回移植でドナー由来の永続的な生着が得られ、35例(24.8%)では拒絶されていたが、15例で再移植、1例では再々移植が行われ、最終的には114例(80.9%)が生存中で、27例(19.2%)が死亡していた。 

 ドナー細胞の生着が得られた上での生存(無イベント生存)に有意に有利に相関していた因子としては移植細胞源としての骨髄、同胞ドナー、HLA適合、非照射前処置(ブスルファン主体の前処置)などであったが、多変量解析では移植細胞源が骨髄であるか臍帯血であるかのみが有意な因子となっていた。



 


Saturday, July 26, 2008

「幹細胞の産業化に向けて」というシンポジウム

青海の東京国際交流会館という、とてもきれいな会議場にて、「幹細胞の産業化に向けて」というシンポジウムが開催され、行って参りました。一部の発表は、新聞で記事になっていました。幹細胞及びiPS細胞の産業化での障壁は何か?との問いに、宮田満氏が、「まず、iPS細胞をばらまけ。」とおっしゃっていたのが印象的でした。再生医療に、産業界の参入が必要不可欠なのは議論の余地がありません。再生医療の分野ではキャッシュフローがほとんどないので、産業界は我慢を強いられているのが現状と理解しております。そのため、大手の製薬会社は参加せず、ベンチャーが生死をかけて挑戦しているように見受けられます。そこでも、我慢できる限界をさぐられているような厳しい事実があります。質問に対しての答えのひとつとして、わたしは「角膜に対する上皮シートを用いた再生医療といったような成功体験を増やしていくことしかないように思う。」とお答えしました。もうひとつは、言い古されて恐縮ですが、「腫瘍化といったリスクに対して、ゼロリスクを求めることなく、リスクを科学の力を借りて正確に記述し、再生医療を享受する者に利益と不利益のバランスを説明し、医療側と一緒に細胞移植を受けるべきかどうかを判断していくことである。」と申し上げました。



Friday, July 25, 2008

質疑応答(改変済み)

・ 分化の方向で、子宮内膜だと心筋で、月経血だと筋肉で、組織のより決まっているのですか?
・ どちらも筋肉になりやすい。心筋になる場合には胎児心筋のフィーダ細胞を用いています。
・ 全ゲノムのメチル化を解除するような5-アザシチジンを細胞にかけると、月経血は骨格筋になります。心筋をフィーダにして、月経血に5-アザシチジンをかけると心筋になります。
・ 間葉系細胞は、間充織を生める細胞として十羽一絡げに間葉細胞と言われているが、上皮細胞と同じように組織により、その初期値が異なるということです。そして、この大きな差を際立たせるのに5-アザシチジンは有用です。
・ 癌でも、5-アザシチジンの脱メチル化する遺伝子に順番があることが分かってきました。エピジェネティク修飾が何処まで行われているかが色々あるということですね。

・ 再生医療は癌と比較すると今は小さいけれども、うまくいきだせば増えてくると考えていますか。
・ 再生医療は、癌のような蓄積型の病気には効果がありませんが、細胞、組織が壊れていく変性疾患には有用な治療法です。
・ 再生医療は、心臓疾患、糖尿病のような一般的な疾患でどのようになるかは、期待されているものの現時点ではどのように発展するかについては分かりません。

・ 壊れるということでは、機能が低下して壊れるというのと、細胞がいきなり壊れていくという2通りあると思いますが、機能が低下して壊れていくほうにエピジェネティクスが関係していると思います。

・ 環境で病気になりやすいヒトなりにくいヒトが、SNP等で調べられていますが、細胞の規格化にはどうでしょうか?
・ 細胞の規格化にはSNPはまったく無効だと思います。
・ 再生医療の規格化にはエピジェネティクスしかないということです。

・ 規格化に関しては、1点が癌で、すぐに実施しなければいけないのが、移植する細胞が骨になるかならないかを1日で決めるということですが、in vitroで細胞を取り扱っていると、正常でもないし癌でもないといったことが心配になりませんか?
・ とっても心配です。先ほどの5-アザシチジンでも心配です。自分で5-アザシチジンをかけておいて検証しろというのも変ですが、そういうことです。
・ かけるのにエピジェネティクスの修飾剤も欲しいし、同時にそれが安全であるとの保証をエピジェネティクスの解析から検証して欲しいわけです。

・ 先ほどのdystrophinの実験では月経血の10%の細胞で発現していますが、実際に治療に使用するとなると、どれくらいの細胞が必要になりますか?
・ 心筋と呼吸に関する筋肉が必要なのでかなりの量が必要になります。実際カナダでは両親の骨格筋を移植していますが、とても足りません。現在可能であろうと考えているのが、月経血、胎盤のバンクか、ユニバーサルセルであるESか、iPS、精子から取ってくる細胞になるのではないかと考えています。言い換えると死ぬべき細胞であるが大量にあるもの、または、不死の細胞ということになります。
・ 女性は助かりますよね?
・ そうです。そして女性の細胞を用いて子供も救えるというわけです。
・ 今までメディカルウエイストといわれていた月経血、胎盤をきちっとした規格でバンク化する必要があるということです。

・ 再生医療的に分化するか、しないか色々やってみて調べていくアポローチと、エピジェネティクスを調べて、こうすれば分化するはずだというアプローチとどちらが有効と考えますか?
・ どちらも有効だと考えます。後のほうはやったことがありません。実際にやってみてうまくいくかどうか研究しているのが再生医療の研究者です。

・ iPS細胞のエピジェネティクスも研究したほうがよいと考えますか?
・エピジェネティクスを次世代シークエンサーにより、全塩基配列を決めることは意義があると思います。


Thursday, July 24, 2008

講演記録

エピジェネティクス産業の出口を再生医療とするときの具体的なアプローチが、2点あると考えております。
第1点はエピジェネティクス修飾剤の開発、第2点はドナー細胞の規格化である。
始めの、エピジェネティクス修飾剤の具体的なものとしては、分化誘導剤と脱分化誘導剤が挙げられ、分化誘導剤としては5-アザシチジンのような脱メチル化剤を考えている。5-アザシチジンは、米国では、Phamion社が骨髄異形性症候群の治療薬として販売しており、自分も分化誘導剤として使用している。これとは逆に脱分化誘導剤、同様にエピジェネティクスを変化させるクロマチン修飾剤があります。例えば、山中京大教授のiPS細胞作成で使用された癌遺伝子c-myc,Klf-4は、細胞が癌化する可能性が考えられるので、それに代わる低分子の修飾剤が得るのはどうかという提案です。
第二点は移植のドナー細胞の規格化です。具体的にはT-DMR(Tissue-dependent, Differentially Methylated Region)を短時間で検証するソフトを開発し、それによりドナー細胞の分化形質の担保が出来ないかということ。更に、産業化している移植医療の安全性を担保するためにドナー細胞の腫瘍化可能性を、癌遺伝子p16、RB等の遺伝子のエピジェネティクな変化を網羅的に解析し、形質転換可能性のCut off値を設定し、移植可能性を担保出来ないかといことです。



始めに再生医療について説明します。
肝臓が再生することは、「プロメテウスは、ゼウスによりカウカソス山の山頂に縛り付けられ毎日その肝臓をハゲタカに食われていたが夜中に再生した」という神話が示すようにギリシャ神話の昔から分かっていました。更にアルコール性肝硬変の患者の肝臓でも、粒粒の再生部分が観察され、肝臓の再生が行われることがわかります。また、成育医療センターでは年間25例肝臓移植が行われますが、残された部分、移植された部分が元の大きさに戻ります。即ち肝臓は再生すると言うことです。しかし、一方心臓は再生しませんので、心筋梗塞を起こすと心筋細胞が死滅するのみであります。
実際どの程度再生医療が進んでいるかというのが次のスライドです。

成育医療センターは、爪の先から月経血までヒトの各種組織の体細胞の供給源、バンクとして機能しています。研究用の細胞は理研(筑波)より、医療・産業界用のものは医薬基盤研から入手可能です。これらのチップ情報は、NCBIのGEOに寄託してある。
そのほかに誰が何処でも使用できるuniversal細胞として、ES細胞、iPS細胞、精巣細胞があります。本当に同じ特徴を有しているかは不明です。
再生医療の例としてDuchenne型筋ジストロフィーの治療について解説する。幼少期に発症し、進行性の筋萎縮による筋力低下が起こり、多くは20歳代に心不全、呼吸不全で死亡する。筋ジストロフィーの中で最も頻度が高いx連鎖劣性遺伝性疾患で、男児の3,500人に一人が発症する。原因はDystrophinの異常で骨格筋でのdystrophinの欠損が起きることです。我々の携わる再生治療では、月経血からの細胞(脱落してきた子宮内膜細胞)にDNAメチル化阻害剤である5-アザシチジンを用いて骨格筋細胞に分化させています。
このDNAメチル化阻害剤である5-アザシチジンは、骨髄異形成症候群に対する適応で世界で始めてFDAに承認された薬で、症状を改善し、輸血の必要性をなくし、白血病の発現を遅延させました。2004年7月の米国発売以来医療機関に広く受け入れられ、2004年度の売上高は100億円程度になっています。その作用メカニズムはDNAのメチル化を阻害することで遺伝子の配列を変化させることなく、クロマチン構造を変化させ遺伝子の発現を変化さ、腫瘍性増殖の抑制をすることです。また、5-アザシチジンの誘導体である5-aza-2ユ-deoxycytidine(Decitabine)も、ハイリスクの患者に5-アザシチヂン異常の有効性が期待されています。
骨髄異形成症候群とは、白血病に移行する前の前白血病のことで、元都知事の青島幸男氏が亡くなられた病気です。この病気で使用されている5-アザシチジンを再生医療で使用できないかと言うことです。下図に見られるように、ヒトの月経血を用いモデルマウスで移植した細胞の10%程度でDystrophin発現陽性になります。

将来問題になる可能性があるのは、抗癌剤である5-アザシチジンを使用していることで、特に、がん専門の先生方が問題にするかもしれません。ここで使用している月経血とは、螺旋動脈が痙攣し虚血により月経1日目に落下してきた子宮内膜の細胞で、とっても良く増殖します。
医療の現場ではどうかと言うと、細胞医療と再生医療の現状で、難治性の心不全の患者8例に、国立循環器病センターで骨髄の間葉系細胞を打ち込んでいます。実際に移植した細胞が心筋になった事実は無いのですが、確実に効果が出ています。実際にはカテーテルを用いて心筋組織に10の9乗の細胞を打ち込みました。

ここで言いたい事は、再生医療でメチル化阻害剤を分化誘導剤として用いることができるかどうかと言うことです。その一方、がんのリスクと同じリスクもあります。さて、間葉系の細胞である月経血と同じ間葉系の細胞に癌遺伝子c-Myc、Klf4を用いて万能細胞であるiPS細胞を作成しています。しかし、これら癌遺伝子を用いることは難しいと思われるので、代わりに脱分化誘導剤として、クロマチン修飾剤を使用することが出来るかということです。言い換えると、エピジェネティク修飾剤のin vivoスクリーニング系ができるかどうかと言うことです。

細胞分化とエピジェネティクスの関係を簡単に説明します。発生が進むと細胞は多分化能を失っていき,ある限られた細胞にしか分化できなくなる.多分化能を有する細胞からある系統にしか分化できない細胞への移行は,細胞の潜在性の消失または遺伝子発現の制限にほかならない.細胞特異的な遺伝子の発現は,細胞特異的な転写因子による転写活性と細胞特異的なゲノムのメチル化による転写抑制があり,どちらの影響がより強いかは細胞ごと及び遺伝子ごとに異なる.組織幹細胞の分化における制限はゲノムのメチル化にあり、その構造を意識し改変することが再生医療おける細胞転換のきっかけとなる.

このような科学的な根拠を基盤として、既に動き出している再生医療において、委員である塩田先生が精力的に研究しているT-DMRを用いて細胞の規格化をしたい。組織の細胞は培養するとメチル化が固定します。変な話ですが、メチル化の状態が分化状態に反映するのではなく、分化状態がメチル化の状態に反映するわけです。このメチル化の状態を検査し分化形質を担保できるかどうかということです。言い換えると、細胞を心臓に移植する前に、この細胞が骨に分化しないことを担保するような判別式ができないかと言うことです。判別式が出来、更に、エピジェネティクス検査、メチル化検査を一日で出来る機械が出来れば、移植前にドナー細胞の移植可能性の検討が可能になります。もう一つは、癌遺伝子のプロモーター領域を網羅的に解析して、判別式を作成し、移植するドナー細胞の腫瘍化の可能性のCut off値を決めようと言うものです。


再生医療は癌と比べると研究費が少ないが、再生医療はNEDOの動向調査に見られるようにかなりの規模で進展しています。

そこで、GeneChip解析のAffymetrix社のビジネスモデルを参考に、細胞の初期状態、有用細胞のスクリーニング、発がん関連遺伝子解析により安全性検証するエピジェネティクス産業を興そうというのが今回の提案です。まず始めに、どんな稚拙なものでもいいから、プラットフォームを上市しデファクトスタンダードを作ろうというものです。何故かというと、はじめにデータを取ると、後で比較するためにはプラットフォームの変更ができなくなるので、どんな稚拙なものでもデファクトスタンダードを創ろうと言うことです。例えば我々の仕事でも骨髄で得られたデータを月経血で取る時も同じプラットフォームを使用しています。だから、エピジェネティクス産業のデファクトスタンダードを早く作り、新産業を興そうというのが私の提案です。



Saturday, July 19, 2008

幹細胞を用いた臨床研究関連資料、政府機関のリンク先

幹細胞を用いた臨床研究関連資料、政府機関のリンク先(山本雄二氏による)

まず、米国関係です。
FDA http://www.fda.gov/default.htm
FDA/CBER http://www.fda.gov/cber/index.html
FDA Cellular & Gene Therapy Publications
http://www.fda.gov/cber/genetherapy/gtpubs.htm

1)Tissue Rules
・Title 21 Code of Federal Regulations / Sec 1271 (21CFR 1271) http://www.access.gpo.gov/nara/cfr/waisidx_07/21cfr1271_07.html
・Guidance for Industry: Eligibility Determination for Donors of Human Cells, Tissues, and Cellular and Tissue-Based Products - 8/8/2007
http://www.fda.gov/cber/gdlns/tissdonor.htm
2)Cellular & Gene Therapy Rules
・Guidance for FDA Reviewers and Sponsors: Content and Review of Chemistry, Manufacturing, and Control (CMC) Information for Human Somatic Cell Therapy Investigational New Drug Applications (INDs) - 4/9/2008
http://www.fda.gov/cber/gdlns/cmcsomcell.htm
・Guidance for FDA Reviewers and Sponsors: Content and Review of Chemistry, Manufacturing, and Control (CMC) Information for Human Gene Therapy Investigational New Drug Applications (INDs) - 4/9/2008
http://www.fda.gov/cber/gdlns/gtindcmc.htm
3)その他(考え方等)
・Points to Consider in the Characterization of Cell Lines Used to Produce Biologicals ミ 7/12/1993
http://www.fda.gov/cber/gdlns/ptccell.pdf
・Application of Current Statutory Authorities to Human Somatic Cell Therapy Products and Gene Therapy Products; Notice - 10/14/1993
http://www.fda.gov/cber/genadmin/fr101493.pdf
・Proposed Approach to Regulation of Cellular and Tissue-Based Products - 2/28/1997
http://www.fda.gov/cber/gdlns/celltissue.pdf
・Reinventing the Regulation of Human Tissue
http://www.fda.gov/cber/tissue/rego.htm
http://www.fda.gov/cber/tissue/regotab.pdf (Table)

次に欧州(EU)関係です。
EMEA http://www.emea.europa.eu/
EMEA / Committee for Medicinal Products for Human Use (CHMP)
http://www.emea.europa.eu/htms/general/contacts/CHMP/CHMP.html
EudraLex / The Rules Governing Medicinal Products in the European Union
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/index.htm

1) Tissue Rule
・ The tissues and cells directive (2004/23/EC)
http://www.who.int/ethics/en/ETH_EU_Directive_2004_23_EC.pdf
2) GCP Rules
・ The clinical trials directive (2001/20/EC、2005/28/EC)
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/vol-1/dir_2001_20/dir_2001_20_en.pdf
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/vol-1/dir_2005_28/dir_2005_28_en.pdf
3) Authorization Rules
・ the medicinal products directive (2001/83/EC, 2003/63/EC)
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/vol-1/dir_2001_83/dir_2001_83_en.pdf
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/vol-1/dir_2003_63/dir_2003_63_en.pdf
・ the medical devices directive (93/42/EEC)
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:31993L0042:EN:HTML
・ Regulation on Advanced therapy medicinal products (Regulation (EC) No 726/2004)
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/vol-1/reg_2007_1394/reg_2007_1394_en.pdf
4) GMP Rules
・GMP directives (2003/94/EC)
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/vol-1/dir_2003_94/dir_2003_94_en.pdf
・EU Guidelines to Good Manufacturing Practice Medicinal Products for Human and Veterinary Use
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/homev4.htm
5) Guideline on human cell-based medicinal products (EMEA/CHMP)
http://www.emea.europa.eu/pdfs/human/cpwp/41086906en.pdf
6) Pharmacovigilance Rules
・EudraLex Volume 9A(Pharmacovigilance for medicinal products for Human use)
http://ec.europa.eu/enterprise/pharmaceuticals/eudralex/vol-9/pdf/vol9_2007-07_upd07.pdf

最後に、英国関係です。
MHRA http://www.mhra.gov.uk/index.htm
HTA (Human Tissue Authority) http://www.hta.gov.uk/
HFEA (Human Fertilisation & Embryology Authority) http://www.hfea.gov.uk/
National Institute for Biological Standards and Control http://www.nibsc.ac.uk/
UK Stem cell Bank http://www.ukstemcellbank.org.uk/

1) Tissue Rules
・the Human Tissue Act (2004)
http://www.opsi.gov.uk/acts/acts2004/ukpga_20040030_en_1
2) ES cells Rules
・The Human Fertilisation and Embryology (HFE) Act (1990)
http://www.opsi.gov.uk/acts/acts1990/Ukpga_19900037_en_1.htm
・Code of practice for the use of human stem cell lines (UK stem cell Bank, 2005)
http://www.ukstemcellbank.org.uk/documents/Code%20of%20Practice%20for%20the%20Use%20of%20Human%20Stem%20Cell%20Lines.pdf

3) GCP Rules
・UK Statutory Instrument 2004 No.1031(The Medicines for human use clinical trials regulations)
http://www.opsi.gov.uk/si/si2004/20041031.htm
4) GMP Rules
・The Code of Practice for the Production of Human-derived Therapeutic Products (MHRA, 2002)
http://www.mhra.gov.uk/home/idcplg?IdcService=GET_FILE&dDocName=CON007432&RevisionSelectionMethod=LatestReleased



移植細胞の腫瘍化における検証---米国FDA

今年の3月3日(ひな祭りの日)に米国NIHのベセスダ・キャンパスにて、FDA/CBER(米国食品医薬品局・生物評価研究センター)にて、副所長と部長二人を公式訪問しました。「公式」というのは、政府のdelegatesとしておじゃまして議論したという事です。

以下は、一緒に行ってお世話になった石井さんの再生医療における移植細胞の腫瘍化に関する報告です。

審査
連邦広報に掲載しているPoints to Consider(技術的考慮事項)の審査基準や、アドバイザリー委員会の見解に基づき科学的に実施している。審査基準については、具体的な数値、カットオフ値は設けてない。なぜなら、CBERは、個々の製品で状況が異なり、これらの製品に対する規制フレームワークの柔軟性を確保しなければならないからである。すなわち、審査はケースバイケースで科学的に実施している。たとえば、腫瘍原性については、テラトーマや悪性腫瘍の発生が起こるかヌードマウスなどへの移植し、基本は1年モニターする(注.93年のPoints to Considerでは12週と記載あり)が、この観察期間は、個々の場合により異なる。同様に、ゲノム不安定性をKaryotypeで示すのか、テロメア長でみるのか、いろいろなアプローチがあるが、FDAとしては科学的に実証できれば問題ない。

石井哲也さん、山本雄士さん、そして、厚生労働省の梅垣昌生専門官、お知り合いになれて本当にうれしいです。

その日は、ひな祭りにあたるため、日本にて雛あられを購入し、米国滞在の国家公務員(日本・米国両方)に配りました。しつこいようですが、自腹です。

1)ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成13年9月25日文部科学省告示第155号)、ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針(平成19年5月23日文部科学省告示第87号)
http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/32_165.pdf
2)ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年11月30日法律第146号)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/2001/hai3/1_houritu.pdf
3)特定胚の取扱いに関する指針(平成13年12月15日文部科学省告示第173号)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/seimei/2001/hai3/17_shishin.pdf
4)ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(平成18年7月3日厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/iryousaisei01/pdf/01.pdf
5)ヒト又は動物由来成分を原料として製造される医薬品等の品質及び安全性確保について(通称1314号通知)平成12年12月26日医薬発第1314号厚生省医薬安全局長通知
http://www.pmda.go.jp/operations/shonin/info/report/saibousosikisinsei/file/1314goutuuti.pdf
6)ヒト(自己)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について(平成20年2月8日薬食発第0208003号 医薬食品局長通知)ヒト(自己)由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針
7)ヒト(同種)由来細胞や組織を加工した医薬品又は医療機器の品質及び安全性の確保について(平成20年9月12日薬食発第0912006号 医薬食品局長通知)ヒト(同種)由来細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針
8)遺伝子治療臨床研究に関する指針(平成14年3月27日策定、平成16年12月28日全部改正、文部科学省・厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/idenshi/0504sisin.html
9)平成19年度厚生労働科学研究費補助金 厚生労働科学特別研究事業「胚性幹(ES)細胞臨床指針作成に向けた課題検討のための予備研究」平成19年度総括研究報告書(主任研究者:中内啓光),平成20年4月
10)文部科学省研究振興局長通知「ヒトES細胞等からの生殖細胞の作成等に係る当面の対応について」(平成20年2月21日、19文科振第852号)
http://www.cdb.riken.jp/hsct/pdf/tutatsuiPS.pdf



現実的対象疾患---ES細胞移植---

先天性代謝異常症候群

筋ジストロフィー

既に免疫抑制を受けている患者(腎移植患者への、I型糖尿病に対する膵β細胞移植)


Wednesday, July 16, 2008

ヤゴの変身(写真)




先日のヤゴがトンボになった日の写真をアップします。元気でやっていますかね。肉食なので、いろんなものを食べてんだろうな。


Tuesday, July 15, 2008

ゴジラのクローンを作成する際に利用する骨髄間質細胞

骨髄間質細胞の使い方を伝達システムに使用するよりも、ゴジラのクローンを作成する際に利用する細胞核を供与する細胞として利用する方がいいだろう。未受精卵は何だっていいけど、ゴジラの胎児を発生させる個体はクジラがいいだろうか、象がいいだろうか。そういえば、ミニラというゴジラの子どもがいたが、母親は誰だ。



ツールとインターフェイス

TFさんとの話です。

脳科学は、研究対象として、極めて興味深い。特に、意識、自我、記憶、思考としった高次機能がどのようなメカニズムで支えられているのかを知りたい。興味深い研究対象であるにもかかわらず、発生学研究のツールとなった分子生物学のようなキレの良い解析方法が脳科学にないために、どうしても面白いのか面白くないのか分からないような論文が有名誌に並んでしまうような気がします。なんか良いツールがあるといいのですけど。もちろん、わたしは年齢を考えるとその分野に入る可能性は全くございませんが、興味深い対象であり、意識、自我、記憶、思考としった高次機能がどのようなメカニズムで支えられているのかを知りたい。

コンピュータ上に新たに意識をつくることは可能かもしれないという考えを聞いたことがあります.一歩進んで,意識だけならその個人と同一のものをコンピュータ上に再現できるという夢物語があります.意識のクローンがコンピュータにできるわけです.コンピュータに自分の記憶と考え方のアルゴリズムを教えこみ自我(自分は誰だれであるという意識)を与えた場合,人間と同じ意識が生れてくるという楽観的な考え方です.楽観的ではあるけれども、大変,魅力的な考えです.しかし,この考えは,初めはあまり私を喜ばせませんでした.自分自身がコンピュータの中にいることを考えると嬉しくないと言うことです.ネットワークを介して世界中を駆けめぐることができてもいやです.計算能力が高いとほめられても,当然嬉しくありません.その説をTFに話したら「インターフェースがむずかしいね.」と言われました.誠にその通りで,ずっとコンピュータの中にいるのであればかまわないのだが,人間の形のなかにいるには,人間の器官とのあいだでいろいろと信号のやり取りをしなくてはいけません.より詳細にいえば,イカの塩辛を食べれば塩辛いと感じなくてはいけないのだが,その舌の情報を神経のシグナルで伝えてもうまくいきません.何らかの別のコンピュータが理解できる情報に変換していなくてはいけません.

ここで言うツールとはキレのいい解析方法を指し、インターフェイスとは味を意識する変換ソフトを指す。分かりやすい言葉を利用することで、ややこしい概念が一発で理解できるという例を挙げてみました。TFさん、ありがとう。



CMG beating


Shown is a movie for CMG beating.

Or the youtube file for KUM2 beating is available at:
http://akihiroumezawa.blogspot.com/2008/07/beating.html



CMG beating

http://www.youtube.com/watch?v=wSxUPik287I


<object width="425" height="344"><param name="movie" value="http://www.youtube.com/v/wSxUPik287I&hl=ja&fs=1"></param><param name="allowFullScreen" value="true"></param><embed src="http://www.youtube.com/v/wSxUPik287I&hl=ja&fs=1" type="application/x-shockwave-flash" allowfullscreen="true" width="425" height="344"></embed></object>



Monday, July 14, 2008

Calcium Imaging法---筋芽細胞へ

筋芽細胞は、Acetyl cholineや高カリウム刺激なしに、カルシウムの流入があるらしい。ついでに言えば、myogeninが発現するようになると、Calcium Imaging法で反応しないらしい。神経とは、違うね。ついでに言えば、軟骨細胞とは違うね。



引用

http://hikitaiin.blog101.fc2.com/blog-entry-6.htmlからの引用です

B.先進医療※注2)の指定を受け、一部施設で先進医療として実施されているもの
・閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎(バージャー病)という、主に下肢血管の閉塞する虚血疾患があります。下肢の冷感と痛みを主症状として、重症化すると下肢壊死を来たし切断治療が必要となることもあります。この疾病に対して自己の骨髄幹細胞/末梢血単核球/末梢血幹細胞をそのまま/もしくは培養して、局所に注射して血管の再生を促す方法が先進医療として行われています。筋肉に移植細胞を注射するのは数十ヶ所に及ぶため、腰椎麻酔下で行います。1999年以後国内で急速に広がり、全国20ヶ所以上の認定施設で行われています。ある程度の治療効果が認められてきているものの、数年後には効果が落ちてくるという報告もあります。

※注2)先進医療:先進医療とは、大学病院などで実施される未だ保険承認に至らないものの有効性と安全性がおおむね確立しつつある先端医療のうち、厚生労働大臣の承認を受けたものです。例外的に保険診療との併用が認められており、保険対象外である先進医療の特別料金部分は全額自己負担となりますが、通常の保険診療との共通部分(診察,入院,投薬など)には保険が適応されて一部自己負担金(通常被保険者3割)の支払いとなります。それまでの「高度先進医療」が平成18年10月1日の健康保険法の一部改正に伴い、制度再編されて先進医療と称されるようになっています。



Technical Report (TR)

TRって,言葉をご存知でしょうか。標準報告書というものらしく、JIS規格の元になるものらしい。工業標準化法の規定に基づいて日本工業標準調査会の審議を必要とするものらしい。そもそもは工業製品を製造する作業の標準化のためにあるものだが、医療の現場における作業の標準化にも資することが可能と言う。間葉系細胞を作成するにも、標準報告書があってよいようだ。ひとつのデータベースとして利用できるとのことだが、国の法律に基づくことより、その標準報告書の「重さ」はそれなりにあると予想される。


ウェブサイトより一部抜粋(http://www.jisc.go.jp/jis-act/ts-tr.html

TS/TR制度について
本制度は、先端技術分野等の技術進歩の早い分野において、日本工業規格(JIS)として制定するには熟度の低いものについて、迅速かつ適切に標準情報(TS及びTR)として開示することにより、オープンな議論を推進し、コンセンサスの形成を促し、JIS化の促進を図るためのものです。 この制度は、ISO(国際標準化機構)のTS制度及びTR制度と同じ趣旨の制度です。


標準報告書(TR)
JISとは異なる種類の標準に関連する情報類(標準化関連情報、データ集など)として、これ自体はJISにはならないものの、標準化の推進に資するものとして公表される標準文書。 なお、標準報告書(TR)は、原則として発行後5年をもって廃止します。



Sunday, July 13, 2008

ゴジラの骨髄間質細胞

なんと、メカゴジラの伝達システムには、骨髄間質細胞のDNAを利用しているとのこと。正直言ってしまうと、何のことを言っているか不明ですが、それは兎も角、ゴジラ映画の中で骨髄間質細胞が使用されていることは嬉しい。わが研究所は、ゴジラの生まれ故郷の東宝スタジオ近くです。


Wikipediaからの一部引用(記述を短くするために、改変しています)。

機龍はゴジラ映画『ゴジラ×メカゴジラ』と『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』に登場する架空の兵器、ロボット。4代目メカゴジラ。劇中では開発者の娘が愛称として「メカゴジラ」と呼んだ。デザインは西川伸司。伝達システムにはDNAコンピュータが利用されている。このDNAコンピュータは当初、骨に残留していたゴジラの骨髄間質細胞を使用していたため、初陣ではゴジラと共鳴した事で暴走事故を引き起こし、戦場となった八景島周辺を壊滅させる大被害をもたらしてしまう。



Wikipediaの「間葉系幹細胞」の項

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%93%E8%91%89%E7%B3%BB%E5%B9%B9%E7%B4%B0%E8%83%9E

Wikipediaの上記サイトに、「間葉系幹細胞」の項が掲載された。電子顕微鏡写真も掲載されている。丁寧な記載であります。参考文献に拙著を記入していただき、誠にありがとうございます.



CPCの職場環境

日本炎症・再生医療医学会のシンポジウムで、自動培養装置に関するシンポジウムが開催された。その中で、CPC内部での職場環境についてのコメントがあった。CPCとは、Cell Processing Centerの略である。簡単に言えば、「寒い」とか「暑い」とか、「退屈である」、「不安になる」等々であった。足下が冷えるという意見もあった。早速、研究室に戻り、実際に最先端の現場で仕事をしている方々に尋ねてみた。「不満ある?」という愚問にもかかわらず、皆、建設的な意見を挙げてくれた。作業が適切に行われているかどうかの不安が一番であるようであった。実際には、SOPに従い、イアホンを通じて全て管理されているが、補佐する人も全てを把握して、作業工程をCPC内部で確認したいとのことであった。その他にも指摘があったが、全て改善可能なものであった。

CPC内部は、窓もなく、時計もなく、指示が外部から来るのみの隔離された空間であり、長時間の作業でのストレスは相当なものであろうと予想したが、実際は集中しているせいか、ストレスは作業が正確にもれなく行われているかどうかであった。実際には、作業が間違って行われる可能性は極めて低いが、当然の心配と思われた。



Sunday, July 6, 2008

今年もヤゴがトンボに

今年も飼っていたヤゴがトンボになりました。サンディエゴで開催されたBIO Conferenceから、帰ったその日にトンボに変身していました。すごい変身だけど、ヤゴもトンボも肉食ままで、その点に関しては変化してないね。今まではミミズを食べていたのが、これからは蚊とかを食べるのでしょうけれども。


Saturday, July 5, 2008

遺伝子をあやつる不思議な仕組み DNAのメチル化(2008/7/5 OA)

幹細胞のメチル化に関する話を、NHK教育にて、佐々木裕之さんの番組の一部で話をさせてもらいました。内容は以下のサイトに書かれています。もう放送は終了したのですが、再放送があるそうです。自分が関連している分野ですので、当たり前ですが、すごく面白かったです。

遺伝子をあやつる不思議な仕組み DNAのメチル化(2008/7/5 OA)
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp216.html


追加です。サイエンスゼロでは、再生医療の番組が以前にあるようです。

http://blogs.yahoo.co.jp/under_the_shiny_sky/50518211.html



Sunday, June 29, 2008

The other nominated gene---IGF-BP4---

By using the very strict criteria to nominate genes that promote cardiomyogenesis, we found only two genes as candidates. Grem1 and IGF-BP4 were nominated as candidates of the cardiomyogenic factors. Grem1 indeed accelerated cardiomyogenesis of murine teratocarcinoma cells as published in this manuscript. It has just recently published in Nature (Zhu W, et al., IGFBP-4 is an inhibitor of canonical Wnt signaling required for cardiogenesis) that IGF-BP4 is involved in cardiogenesis. We did not include this information in our Grem1 paper (address shown below), Results section, the paragraph “GeneChip and statistical analysis”.

Our Grem1 paper is available at:
http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0002407

The abstract of Prof. Komuro's Nature paper is available at:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18528331?ordinalpos=3&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Pubmed.Pubmed_ResultsPanel.Pubmed_RVDocSum



Friday, May 30, 2008

予告

線維芽細胞をHox遺伝子発現による分類をした良い論文を紹介します。PLoS GeneticsとPNASの論文となります。

上大介氏の論文(PLoS One, 印刷中)を紹介します。特に、なぜグレムリンが心筋形成因子であると考えたかを紹介します。

病理マニュアルを監修しました。紹介させてください。



Friday, May 16, 2008

ppt ファイル

パワーポイントのファイルを送付します。一度、片山より送付したようですが、届いていないようでしたので、再送付します。



Sunday, May 11, 2008

つづき---自然の摂理に反している。---

現在米国のNIHで研究をしている昔の研究室仲間がiPS細胞を指して、「自然の摂理に反している。」と言っていると伝え聞いた。このiPS細胞を作り出せるという発見は、体細胞から他の細胞への変身(分化転換)がいろいろな場合において可能であることを意味している。間葉系細胞から膵β細胞を作成することも可能であろうし、皮膚表皮細胞から肝細胞を作成することが可能かもしれない。



つづき---iPS細胞ってなに---

 iPS細胞とは、一言で言うと「体細胞から作られた胚性幹細胞(ES細胞)」である。これだけでは、何のことやら分からないので、ひとつひとつ説明したい。まず、体細胞とは、体中の細胞のうち生殖細胞以外の細胞を指す。生殖細胞とは精子、卵子、またはそれらになる細胞であるから、体細胞とは骨、筋肉、内臓や脳といった身体を構成する各組織、各臓器を作っている細胞のことで、ほとんど全ての細胞を指すことになる。次に、胚性幹細胞である。胚性幹細胞は、英語ではEmbryonic stem cellと言い、頭文字をとってES細胞と言われる。一般に新聞ではiPS細胞、ES細胞は英語で表すことから、本稿でもここから標記をES細胞とする。iPS細胞は、体細胞から細工をしてES細胞を作り出すことから、英語でinduced Pluripotent stem cellと言い、頭文字をとってiPS細胞と言われる。略した時の最初の文字であるi(アイ)が小文字なのは、iPodやiMacをまねて小文字にしたようである。この細工の仕方が巧妙であったことと、体細胞からES細胞はできないと考えられていたため、iPS細胞が注目を浴びた。

 幹細胞の定義は、「多分化と自己複製能を有した細胞」となる。多分化能とは、多くの種類の細胞に分化できる能力のことを指す。また、自己複製能とは、分裂することにより自身と同じ種類の細胞を作り出す能力を指す。複製とは、2倍、4倍と増えていくことに他ならない。受精卵が有する性質である全能性とは、英語ではTotipotencyと言う。受精卵は、子宮内で発生することで全身の細胞に分化することが可能である。ES細胞やiPS細胞に良く使用される万能性とは科学的な意味合いはなく、治療戦略を考えるといろいろな用途に用いることが可能であることを直感的に表現したものである。生殖細胞(卵子や精子)を含めた全ての細胞になることが全能性であり、このような能力を有している細胞としてES細胞とiPS細胞があげられる。もちろん、受精卵ならびに受精後何回かの分割卵の個々の細胞は全能性を有しており、生殖細胞由来の細胞にもこのような全能性を有している細胞が存在しているが、ES細胞及びiPS細胞が実際に医療の現場に最短距離にいることは間違いない。

 iPS細胞の作り方を理解するのは決して簡単ではない。体細胞に対して、4因子を導入することが必要となる。現在は、3因子でも可能とされており、将来は因子の数を2因子にしたり、1因子にすることが可能となるかもしれない。ここで言う因子とは、具体的には遺伝子のことを指す。sox2, oct-4/3, klf-4, c-mycと言われる4つの遺伝子をここでは、4因子としている。山中氏のすばらしい点は、この4因子の発見と、もうひとつは因子を導入したところで体細胞はES細胞に変身することはないと思われたことを覆したことである。「自然の摂理が間違っていたんだよ。」とiPS細胞作成に対して、悔し紛れにわれわれの間で話すが、実際には何かしっくりこないところはある。コロンブスの卵ではあるが、4因子のうちの2つが細胞の性質を変え、残りの2つが細胞の性質を維持することに働いていると予想されている。

 なお、ES細胞は受精卵が発生した胚盤胞の一部から作成することより、倫理的に問題があるとされている。iPS細胞は、体細胞から作成することより、ES細胞に比較し、その倫理的な問題点はかなり少ない。倫理学者が倫理的な問題点が全くないわけではないと指摘するものの、ヒト生命の萌芽を滅失する必要がないところは大きい。現在は、ES細胞及びiPS細胞から生殖細胞を作成することが禁止されているが、われわれは生殖細胞を作り出すことが問題ではなく、作り出された精子や卵子を受精させることが倫理的に問題と考える。もう一度、ES細胞の歴史、iPS細胞の歴史をひもとくと、1981年に米国にてマウスES細胞が樹立され、この発見に対してノーベル賞が与えられた。1998年にヒトES細胞の樹立が報告された。この論文を読んだときには、ヒト胚盤胞を滅失することから、そんなことをしていいのかと驚いた記憶がある。2006年にマウスiPS細胞、2007年にヒトiPS細胞が樹立された。発見とせずに樹立と言うのは、これらは永遠に増え続ける不死な細胞であることからである。



Sunday, May 4, 2008

公開講座向けの幹細胞に関する講演原稿

 昨年(平成19年)末、新聞紙上に科学政策史に残るであろう記事が掲載された。2008年度予算の財務省原案に対する復活折衝が額賀財務大臣と各省大臣らとの間で行われ、山中伸弥氏が開発した「万能細胞」(人工幹細胞=iPS細胞)の応用研究を支援する経費として10億円の追加が認められた。もともと15億円が計上されていたことから、合計25億円の研究費が万能細胞へ行くことになった。全ての研究費が万能細胞・再生医療に行ってしまい、他の基礎研究がないがしろにされるのではないかと危惧されたが実際にはもともと決まっていた予算に(科学政策以外の予算から)追加されたことになり、全体として科学研究費が増えたことになる。このような例外的な予算措置は、日本発の発見である人工万能細胞であるiPS細胞が再生医療の薬剤として期待されるからであった。

1.iPS細胞/幹細胞をめぐる国内報道
 iPS細胞がどのようなものかは後述するとして、まず数多くの国内におけるiPS細胞の過熱気味の報道を紹介したい。山中氏がiPS細胞を発見したのは、マウスにおいて2006年のことである。その時も報道はされたものの、科学者の間で注目されたものの一般的には今ほど大きな話題とはならなかった。その後、2007年11月30日にヒトiPS細胞ができたことが発表されるとテレビ・新聞報道が次々となされた。それも、ブッシュ大統領が「これからはiPS細胞だ。」と言ったことから、日本の政治家も興味を持ちだした。その後、さまざまな国の会議でiPS細胞は話題になり、内閣府特命担当大臣である岸田氏と山中氏の意見交換、総合科学技術会議のiPS細胞研究ワーキンググループ立ち上げ、また2月28日には自民党本部にて科学技術創造立国推進調査会・ライフサイエンス推進議員連目の合同会議にて議題としてあげられ、科学の一分野から国の一事業として幹細胞研究が成り上がっていった。

2.世界における幹細胞関連の政策
 幹細胞という言葉が新聞に掲載されるが、「かんさいぼう」と読む。実は、科学的には万能細胞は幹細胞と呼ばれ、万能細胞はジャーナリストがつくった造語である。しかし、理解しやすいところから万能細胞という言い回しが一般的になった経緯がある。この幹細胞研究に対する姿勢は、2008年の大統領選挙の公約にもあげられている(表1)。共和党のマケイン候補、民主党のクリントン候補、オバマ候補(この原稿の執筆時は民主党候補は決まっていませんので両候補の公約を列挙します)のいずれもが胚性幹細胞(ES細胞)に対し、多少のニュアンスの違いはあるものの推進・支持の態度をとっているため、論点にはなっていない。しかしながら、ブッシュ現大統領は連邦政府の研究助成を一切禁止しているため、今後、米国の幹細胞研究は大統領選挙後に大きく変化することは間違いない。

 そもそも、ブッシュ米大統領は上下両院で可決されていたヒト胚性幹細胞研究の推進法案(法案番号 H.R. 810)に対し、拒否権を行使したことがある。この法案は、米国内の研究機関が行う臓器再生など胚性幹細胞を使った研究に対し、助成金に関する連邦予算の歳出規制を緩和する内容であった。ヒト胚性幹細胞は人体のあらゆる細胞に成長できる能力を秘めており、治りにくい病気の治療法開発に強い期待がかけられている。しかし、胚性幹細胞を利用するためには受精卵を壊さなければならない。そのため、ブッシュ大統領は、胚性幹細胞の研究について「我々の社会で尊重する必要のある、道徳的な境界線を踏み越えている。それが拒否権を発動した理由だ」と述べている。そのブッシュ大統領が、iPS細胞に対しては倫理的な問題点がないことより、推進する態度を表明している。

 米国においては、ブッシュ大統領が連邦予算を拠出しないことより、民間からの寄付が幹細胞研究の資金となっている(図1)。バックツー・ザ・フューチャーで有名な俳優であり、パーキンソン病に苦しんでいるマイケル・J・フォックス氏は財団を通じて120億円を寄付している。そのウェブサイトに記載されている、「研究に資金提供しているのではない。結果に、資金提供しているんだ。」というタイトルは厳しい。また、ミズーリー州のストワーズ氏は、保守的なミズーリー州ではなく、ハーバード大学に対し、資金提供をしている。ハーバード大学のウェブサイトには、資金提供を受けたエガン氏とストワーズ氏の写真が掲載されている。

 英国では、ゴードン・ブラウン首相はもともと財務大臣の頃から幹細胞研究を推進している。2005 年 3 月、ブラウン財務大臣(当時)の提唱で、英国での幹細胞研究を強力に進めるため、官学界の有識者により構成される英国幹細胞イニシアティブ(UK Stem Cell Initiative:UKSCI)が設立された。UKSCI は 2005 年 11 月、「英国は幹細胞研究における強みをさらに強化し、向こう 10 年間に、幹細胞治療およびその技術における世界のリーダーの一つになる」との目標を掲げ、政府に対する 報告書を発表した。同報告の提言を概括すると、①官民コンソーシアムの設立、②幹細胞バンクの機能強化、③基礎研究資金の増額と中核研究拠点の育成、④臨床研究の推進、⑤関係組織間の調整機能の強化、が政策の柱といえ、既に高いレベルにある基礎研究の成果をいかに治療や産業応用に繋げていくかに力点が置かれている。幹細胞関係の予算については、2006 年と 2007 年の足元 2 年間をみると合わせて約 1 億ポンド(約 230 億円)となっている。



Tuesday, March 11, 2008

iPS祭り

iPS祭りが続いています。iPS狂想曲(協奏曲か)とも言えます。

お祭りは、外でながめているよりも、中で踊っている方が楽しそうです。



Thursday, February 14, 2008

iPSと月経血由来細胞


danceunthedark様

コメントを誠にありがとうございます.

iPS細胞は、不死であることが便利です。株化されていますので、誰でもが正常核型のES細胞様細胞を利用できること、またiPS細胞から間葉系幹細胞株を作り出すと不死化細胞株ができるということになります。iPS細胞作成に、マウスiPS細胞でもヒトiPS細胞においても、高橋秀和氏が作成したMF start培地(Toyobo)を使用しているとCell誌とNature誌に記載されていることは嬉しいことです。

私どもが作成した臍帯血由来細胞株(TERT遺伝子のみの導入細胞、Mol Biol Cell, 2006)もちなみに核型は正常です。医薬基盤研や理研から入手可能です。

一方、月経血由来細胞は不死化していない(遺伝子導入のない)普通の細胞であること、また倫理委員会で細胞バンクへの寄託を申請していないことより、寄託をする予定はありません。直接のやりとり(研究者間のやりとり)となると思います。また、その時も新たな倫理委員会への確認が必要となります。

ヒトiPS細胞が容易に作成できるのであれば、有益な細胞であるという認識は変わりません。しかし、骨髄間質細胞をずっとやってきたので、間葉系幹細胞への固執はございます。

ありがとうございます。

ちなみに写真は、ES細胞と同じ遺伝子発現パターンを示すヒトEC細胞です。iPS細胞も同じ発現パターンなのでしょうね。ちなみに、このEC細胞のオーナーがきれいな梅の花の写真をアップしていますので、サイトを紹介します。

http://blogs.yahoo.co.jp/jhata99/2394894.html



Sunday, January 6, 2008

JCRのお仕事

http://blog.livedoor.jp/wadaikabu/archives/51056967.html



細胞の変身と再生医療

 小学校のプール掃除の際にヤゴを救出するという目的で、初夏に息子が家にヤゴを持ち帰ってきました。家の中の水槽でヤゴはミミズを食べて大きくなり、最終的には水の中にいれておいた枝を上り、変身してトンボになります。変身とは、さなぎにならない不完全変態のことであります。ある真夜中の1時過ぎに偶然ヤゴが水面からでてきて、枝の先端のところまで上り、そこで止まり、ヤゴからエビぞりながら成虫であるトンボがでてきました。もう少しでエビぞりすぎて水面に落ちるのではないかというギリギリのところで反転して、自分の脱いだ殻にしがみついて羽を伸ばし乾かします。研究所にいる虫博士に聞きますと蝶々も同じようにでてくるんだそうです。研究所には虫博士が何人かいます。羽が伸びてきたので、観察者の興味がだいぶ薄れてきたので、写真を撮り、枝ごと屋外においておきました。次の朝、もうトンボはいなくなっていたので、飛んでいったのでしょう。実は、このヤゴを含めた虫の大変身を観察したのは人生初の経験で、その変身ぶり、つまり水の中にいる生物が空飛ぶ生物になる様子はかなりな驚きでした。

 「平成20年は、再生医療元年」と言われるくらい、再生医療がスタートしています。高度先進医療を行う施設及びいくつかの大学病院にて始まっており、新たな医療として骨欠損、軟骨欠損、虚血性心疾患、歯槽膿漏に、細胞を移植して症状を軽減しようとする戦略です。これらの治療では、骨の中の細胞が変身して、必要な細胞として、組織に移植され力を発揮します。骨髄からの細胞だけではありません。胎盤から、子宮内膜から、月経血から、臍帯から、皮膚から、たくさんの大切な細胞が増え出してくれて、変身して、力を発揮するんです。ヒトクローン胚が話題になり、マスコミで話題として紹介されています。現在はクローン胚作成は法律で禁止されている一方、将来に向けて基礎的な研究はひとつひとつ進められています。それも、細胞が神経や心筋や骨格筋や血管になって、患者様の症状を軽くしたり、治したりすることが期待されているからです。細胞にもきちっとした変身をしっかりやってもらって、わたし達を元気にしてもらいたい。



簡単な表


こっちの方が簡潔。阿久津さんがつくりました。



比較表(ES, iPS, Clone ES)


比較って言っても、割り切った表になっています。ご理解の上、ご覧ください。



Do MSCs overexpressing Csx/Nkx2.5 and GATA4 accept the cardiomyogenic fate as unavoidable?

Do single cell-derived mesenchymal stem cells overexpressing Csx/Nkx2.5 and GATA4 accept the cardiomyogenic fate as unavoidable?

Bone marrow cells can give rise to cardiomyocytes as well as adipocytes, osteocytes, and chondrocytes in vitro. The existence of mesenchymal stem cells has been proposed, but it remains unclear if a single cell-derived stem cell stochastically committs toward a cardiac lineage. By single cell marking, we performed a follow-up study of individual cells during the differentiation of 9-15c mesenchymal cells derived from bone marrow cells. Three types of cells, i.e., cardiac myoblasts, cardiac progenitors and multipotent stem cells were differentiated from a single cell, implying that cardiomyocytes are generated stochastically from a single cell-derived stem cell. We also demonstrated that overexpression of Csx/Nkx2.5 and GATA4, precardiac mesodermal transcription factors, enhanced cardiomyogenic differentiation of 9-15c cells and frequency of the cardiomyogenic differentiation increased by co-culturing with fetal cardiomyocytes. Single cell-derived mesenchymal stem cells overexpressing Csx/Nkx2.5 and GATA4 behaved like a cardiac transient amplifying cell, and still retained their plasticity in vivo.



Hierarchical model for cadiomyogenic differentiation of MSCs

Mesenchymal stem cells derived from bone marrow are capable of differentiating into cardiomyocytes. However the characteristics of the stem cells are poorly understood, and how the progeny of multipotent cells adopt one fate among several possible fates remains a fundamental question. A hierarchical model has been proposed on the in vitro differentiation of mesenchymal stem cells. Mesenchymal stem cells in culture consisted of a mixture of at least three types of cells, i.e., cardiac myoblasts, cardiac progenitors and multipotent stem cells, and suggest that commitment of a single-cell-derived stem cell toward a cardiac lineage is stochastic by a follow-up study of individual cells. Furthermore, mesenchymal stem cells overexpressing a well-known master transcription factors, i.e., Csx/Nkx2.5 and GATA4, undergo the cardiomyogenic fate as unavoidable and behave like transient amplifying cells. The hierarchical model applies in the case of mesenchymal stem cells derived from bone marrow stromal cells.



Wednesday, January 2, 2008

培養細胞の核型異常について。

新年あけましておめでとうございます。

Wikipediaに、骨髄間質と間葉系幹細胞の記載をするとブログに宣言したのに、怠け者ですみません。

このブログを読んでくれている方は、2000人しかいないのに、いろんなところから、「読んでるよ。」というお声がけをいただき、うれしいです。内容からして、業界の方しか読まないよね。

それはさておき、質問です。

ヒトから採取した細胞を培養していると、それも長いこと培養していると核型異常がでるという報告があります。私はそんなことはあり得ないと思っておりました。しかし、実際は核型異常が出現するようです。私の間葉系細胞を骨髄から採取してもらって、培養したところ、予想に反して核型異常がありました。驚いて、リンパ球を培養して、核型をみたところ、異常がなかったので、間葉系細胞の異常は培養過程で生じたことになります。初期培養でヒト細胞に核型異常がでるなんて、変ですよね。どう考えたら良いのでしょうか。

訪れてた方が2000人で、大部分は分野外でしょうから答えていただける方は少ない(全くいない)と予想しておりますが、よろしく願い上げる次第であります。