Tuesday, May 29, 2007

培養細胞の癌化

再生医療を念頭においた場合、培養という過程は「癌化」への一歩を進んでいると言える。身も蓋もないような結論を先に言ってしまって申し訳ないが、そのことを念頭においておかないと議論が先に進まないことが多い。癌化への一歩がどの程度であり、それが再生医療の受益者である患者様の利益 (benefit)と不利益(drawbacks)のバランスを考慮に入れた場合に、許容できるかどうかは個々の事象として、再生医療の実施者である医師が判断することになる。もちろん、その際に、患者様に承諾(インフォームド・コンセント)を得ることは不可欠であるが、医師が実際の判断をする際に大きな役割を果たすことには違いない。

今までに、培養した細胞を移植することで、細胞を移植された患者様に腫瘍が発生したという報告はない。これは、樹状細胞移植、皮膚線維芽細胞移植、間葉系細胞移植、骨髄間質細胞移植、軟骨細胞移植、角膜への上皮細胞移植を問わず、癌化の報告はない。移植する細胞を培養することのない骨髄移植および臍帯血移植において、ドナー細胞が白血病化したという報告はあるものの、その頻度が決して高くないことから造血幹細胞移植は、変わらぬ高い評価を受けている。前述した「細胞培養が、癌化への一歩を進むことと」と「現実に施行されている細胞移植にて癌化が報告されていないこと」は矛盾する内容であるが、培養過程によるリスクを正確に捉え、再生医療・細胞移植を進めることが肝要となる。



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