Sunday, January 6, 2008

細胞の変身と再生医療

 小学校のプール掃除の際にヤゴを救出するという目的で、初夏に息子が家にヤゴを持ち帰ってきました。家の中の水槽でヤゴはミミズを食べて大きくなり、最終的には水の中にいれておいた枝を上り、変身してトンボになります。変身とは、さなぎにならない不完全変態のことであります。ある真夜中の1時過ぎに偶然ヤゴが水面からでてきて、枝の先端のところまで上り、そこで止まり、ヤゴからエビぞりながら成虫であるトンボがでてきました。もう少しでエビぞりすぎて水面に落ちるのではないかというギリギリのところで反転して、自分の脱いだ殻にしがみついて羽を伸ばし乾かします。研究所にいる虫博士に聞きますと蝶々も同じようにでてくるんだそうです。研究所には虫博士が何人かいます。羽が伸びてきたので、観察者の興味がだいぶ薄れてきたので、写真を撮り、枝ごと屋外においておきました。次の朝、もうトンボはいなくなっていたので、飛んでいったのでしょう。実は、このヤゴを含めた虫の大変身を観察したのは人生初の経験で、その変身ぶり、つまり水の中にいる生物が空飛ぶ生物になる様子はかなりな驚きでした。

 「平成20年は、再生医療元年」と言われるくらい、再生医療がスタートしています。高度先進医療を行う施設及びいくつかの大学病院にて始まっており、新たな医療として骨欠損、軟骨欠損、虚血性心疾患、歯槽膿漏に、細胞を移植して症状を軽減しようとする戦略です。これらの治療では、骨の中の細胞が変身して、必要な細胞として、組織に移植され力を発揮します。骨髄からの細胞だけではありません。胎盤から、子宮内膜から、月経血から、臍帯から、皮膚から、たくさんの大切な細胞が増え出してくれて、変身して、力を発揮するんです。ヒトクローン胚が話題になり、マスコミで話題として紹介されています。現在はクローン胚作成は法律で禁止されている一方、将来に向けて基礎的な研究はひとつひとつ進められています。それも、細胞が神経や心筋や骨格筋や血管になって、患者様の症状を軽くしたり、治したりすることが期待されているからです。細胞にもきちっとした変身をしっかりやってもらって、わたし達を元気にしてもらいたい。



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