Tuesday, August 31, 2010

フロリダ大学での質問

 フロリダ大学での講演の前後に、招待していただいた教授が面談をセットアップしていただいた。2日間で10人くらいの教授達と30分ずつ話をすることができた。これはすばらしい仕組みで大変に嬉しかった。こちらの研究に対する質問だけではなく、自分の研究を紹介してくれる。かなり贅沢な時間であった。そういえばサンディエゴにいたときも、このような仕組みがあり、ポスドクを含めた研究者達が希望をすれば、招待講演者と話を30分くらいすることができた。また、偉い研究者と一緒にランチを共にすることができ、たいへん嬉しかった。

 ディスカッションの中で、先方に確認し、秘密と言われなかったもののみを記載します。この態度を守らないと質の高い情報や科学者との接点がなくなってしまう。

 レンチウィルスでiPS細胞を作製すると癌化する。びっくり。バーキット・リンパ腫になるって。先方の准教授が病理だというので標本を拝見したら、たしかに、がん化していた。レンチウィルスは染色体に組み込まれた後にサイレンシングを受けないので、どうもc-myc, Klf-4のせいでがん化するようだ。研究室で500種以上のiPS細胞を作製したが、ヒト細胞ではがん化した例がないので、びっくりした。遺伝子治療用ベクターはサイレンシングを受けないのでリプログラミングのためには不適切なんだね。iPS細胞を最初に作製したのはレトロウィルスベクターを使用しているけど、サイレンシングを受けるというベクターの欠点がリプログラミングでは長所になっていたんだ。

 ウィルスベクターを使用しないでiPS細胞を作製する研究も行われていた。蛋白質トランスファーを細菌で行う研究である。これもみんなに話してもいいのかと確認してあります。細菌を使用するとLPSがコンタミするので細胞医療には不適切のように感じるかもしれないけど、ゲンタマイシンで処理すれば全く問題ないとのこと。笑ってしまったのは、細菌をかけていない側にも細菌が検出されてしまったのはご愛敬。ハンス・シェーラー博士のところに留学したらしい。

 再生医療とは関係がないが、日本でパーキンソン病が遺伝子治療で治癒した話をArunから聞いた。良く存じ上げている先生が行った遺伝子治療で、サルを用いた発表までは聞いていたが、人でも行われたらしい。嬉しい話である。

 MapItというエピジェネティックを解析したデータベースの話をうかがった。Michaelというとても面白い明るい方でサンディエゴにいたらしく、ちょうど時期が重なっていた。Michaelが大学院生のころに私がポスドクをしていた関係にあり、共通の知り合いが多くいた。NARに出版されていたので、今度読んでみよう。

 Leber congenital amaurosisに対する遺伝子治療に関する話をたくさん伺った。遺伝子治療センターができていて、GMP体制が確立しているように見えた。大学でこのような施設ができているのはフロリダ大学くらいなのではないか。

 たくさんの勉強をさせていただきました。招待していただいた方には、本当に感謝したい。科学者との議論の場を用意してくれたのは、最高の贅沢な時間となりました。日本でも今度からそうしよう。


明日の外来を一日前の夕方から待つ患者達

 華山医院(ファサンイーユェン)と記載するとまるでクリニックのように思えるが、実際には大学病院である。復旦大学(フータンターシュエ)の附属病院で、復旦大学とは北京大学に次ぐ大学と言っても過言ではないくらいの実力である。iPS細胞の話をして、副院長と一緒に帰るときに夕方なので薄暗い病院の周りでたくさんの人が座っている。「明日の外来のために待っているんだよ。」と教えてくれた。「上海 華山医院 皮膚科外来 一日3000人以上」という話も理解したが、前日から徹夜で並ぶそうだ。すごい話だ。チケットを貰うためにならぶようで、金持ちは並ばずにそのチケットをお金で買うそうだ。ダフ屋はいなかったけど、朝によく見ればいたのかもしれないっ。 

 副院長も30歳を超えたくらいで誰よりも若く、野心を感じた。教授も最高年齢が50歳を超えたくらいで、皆若かった。話をすると、病院における収益が最も優先される行動をとっていることが分かる。少々、びっくりしたのはほとんどの医師が英語を話せないことであった。上海というと工学系の人たちと関わったことがあるが皆ネイティブと同じくらいに良く話すことができる。話せる人がいたので、聞いてみるとボストンのベスイスラエル病院にいたそうだ。話を戻すと、皆忙しく、67人の皮膚科医で3000人以上の外来をさばくんだそうだ。遠くから来ているみたいなんで、金持ちかと聞くと、農民だとの返事が返ってきた。病院の総収入は330億円らしく、外来の数に比較すると少ない感じがした。ベッド数は1400とのこと。医療費が安いのかもしれないが、医師も忙しそうであり、そんなに金持ちって言う訳ではなさそうだ。なお、教授達が若いのは文化大革命のせいというかおかげというか、そんなことらしい。歴史をもう一度勉強しなくてはいけない。

 医師達と話をすると皆つい最近まで貧乏で、この10年くらいの発展で金持ちになったみたいな感じがする。親兄弟親戚も医師であるとのこと。これはフロリダ大学で遺伝子治療の話をした、瀋陽から来た准教授も同じことを言っていた。経済の発展にともなって、病院が満杯で、病気の心配、特に癌の心配をしているという実体はたいへんに興味深かった。

 下に崋山医院の情報を日本語に訳してくれたXL氏の文章を貼り付ける。

復旦大学付属華山病院は1907年に設立され、復旦大学の総合病院および中国赤十字社の直属病院であり、現在、国際社会に注目され、中国で最高レベルの医療、教育、研究センターである。
華山病院は高等先進医療技術を持ち、2000人以上の全職員の中で医師や看護師、薬剤師、技師など医療人が1600人以上であり、その中で中国科学院院士と中国工程院院士を含めて3人であり、高いレベルの医療専門家が300人以上である。それに、当院の専門家の中で13人が中国国家レベルの医学学術性協会の会長と副会長を務め、28人が上海の医学学術性協会の会長と副会長を務め、多くの専門家は中国国内にだけではなく国際医療にも有名である。
華山病院は一般的な診療機器の購入に加え、PETやガンマナイフ、MRI、CT、SPECT、DSA、EBIS、超音波カラードップラーシステム、アルゴンプラズマ凝固機、超音波メス、Xナイフ、体外衝撃波結石破砕治療機、線形加速器など国際的な先進医療機器も導入してある。
華山病院は主に34個診療科と医療技術部門を設定してあり、特色ある学科が多い病院である。診療科の中で神経内科や、脳神経外科、皮膚科、手外科、中西医融合、循環器内科、感染症内科、脊柱と関節外科、腎臓内科、泌尿器外科、腎臓移植科、膵外科、乳腺外科、内分泌内科、職業病とリウマチ内科、顔面外科、放射線と核医学科、運動医学科、リハビリテーション科などは全国で有名な特色的な診療科であり、特に脳神経外科、手外科、中西医融合、泌尿器外科、神経内科、感染病内科と抗生物、腎臓内科、循環器内科、放射線と核医学科、一般外科は中国国家重点学科である。脳神経外科と手外科はさらに上海市先端学科と上海市臨床医学センターと命名された。
  華山病院は病棟のベッド数が1326床であり、高レベルの診療と高品質なサービスが患者から高い評価をもらった。それに、特色ある診療科は全国各地の患者にも人気があるため、毎年病院の外来と救急外来の患者さんは270万人以上であり、手術数は2.6万件以上であり、入院患者は4.7万人以上である。そのなか、50パーセントは全国各地から転院された難治病の患者である。特に、神経内科、脳神経外科、手外科、と皮膚科の比率はより高い。それに、病院の腎臓病透析センター、ICUは相当高等な規模と治療レベルを持つため、重症患者の治療率は90パーセント以上である。病院は1996年から「遠距離衛星診療センター」を設立し、衛星からの信号を通じて全国各地の患者に高品質の診療を提供する。
  患者の受診の便利性といろいろレベルの医療ニーズに応じて、病院は年中無休の制度を選択した上に、専門家外来や、難冶病診療センター、特別サービス部など制度を設定した。1989年病院は上海初の外賓病棟を開設した。外賓病棟は現在まで世界60ヶ国からの一万人近くの患者の診療を受け取った。外賓患者から信任をもらって、さらに1994年上海駐在の八国領事館に栄耀金牌を贈与された。それに、病院は海外医療機構と協力して相次ぎ眼病センター、伽玛医院、と高級病棟を成立した。
華山病院は大学付属病院として、大量の医療任務とともに、医学の科学研究と教育の任務も担任する。過去5年間、病院は省部級以上の成果45項、衛生部臨床重点項目4項、復旦大学“985”工程学科4項を獲得し、10個学科を国家教育部重点学科に評定され、病院の19個学科が医学博士号、32個学科が医学修士号を授与する資格を持ち、年間修士230名と博士210名ぐらいと医学部学生の教育を担当する。  
華山人は必ず「改革、奉献、創業、敬業」の華山精神を持ち続けて、将来に華山病院を「一流の管理、一流の技術、一流の設備、一流のサービス」の上流総合病院に建設する目標のため、力と汗を惜しまず、努力をつづく。






 


Saturday, August 14, 2010

GMPの考え方

GMPとは、「製造の固定化」。

GCPに乗っ取った治験で、有効性・安全性が示された製品を振りかえって、その過程で行った製造方法の固定化が、GMPの基本的な考え方。

CPCで粒子の量や細菌数を数えるのは施設要件のバリデーション。施設要件やその作業手順をGMPと勘違いしておった。


Monday, August 9, 2010

ケルナック

口内炎

苦いが効くらしい (by TM)。胃薬らしいが、抗がん剤での口内炎でいいらしいぞ。口内炎になったら、試してみよう。どうも、ただ飲めばいいって訳じゃないみたいだ。苦い薬を口の中で塗り込むのか?


Controversial reports in spontaneous transformation of MSCs

・Points to Consider in the Characterization of Cell Lines Used to Produce Biologicals 7/12/1993
http://www.fda.gov/cber/gdlns/ptccell.pdf


Spontaneous malignant transformation of human mesenchymal stem cells reflects cross-contamination: putting the research field on track - letter.
Torsvik A, R??sland GV, Svendsen A, Molven A, Immervoll H, McCormack E, L??nning PE, Primon M, Sobala E, Tonn JC, Goldbrunner R, Schichor C, Mysliwietz J, Lah TT, Motaln H, Knappskog S, Bjerkvig R.
Cancer Res. 2010 Aug 1;70(15):6393-6.

Deficiency in p53 but not retinoblastoma induces the transformation of mesenchymal stem cells in vitro and initiates leiomyosarcoma in vivo.
Rubio R, Garc??a-Castro J, Guti??rrez-Aranda I, Paramio J, Santos M, Catalina P, Leone PE, Menendez P, Rodr??guez R.
Cancer Res. 2010 May 15;70(10):4185-94.



Long-term cultures of bone marrow-derived human mesenchymal stem cells frequently undergo spontaneous malignant transformation.
R??sland GV, Svendsen A, Torsvik A, Sobala E, McCormack E, Immervoll H, Mysliwietz J, Tonn JC, Goldbrunner R, L??nning PE, Bjerkvig R, Schichor C.
Cancer Res. 2009 Jul 1;69(13):5331-9.

Cancer Res. 2005 Apr 15;65(8):3035-9.
Spontaneous human adult stem cell transformation.
Rubio D, Garcia-Castro J, Mart??n MC, de la Fuente R, Cigudosa JC, Lloyd AC, Bernad A.

Department of Immunology and Oncology, Centro Nacional de Biotecnolog??a/Consejo Superior de Investigaciones Cientificas, UAM Campus de Cantoblanco, Darwin, 3 E-28049 Madrid, Spain.
Erratum in:

Cancer Res. 2005 Jun 1;65(11):4969.
Comment in:
Cancer Res. 2005 Oct 15;65(20):9601; author reply 9601.
Abstract
Human adult stem cells are being evaluated widely for various therapeutic approaches. Several recent clinical trials have reported their safety, showing them to be highly resistant to transformation. The clear similarities between stem cell and cancer stem cell genetic programs are nonetheless the basis of a recent proposal that some cancer stem cells could derive from human adult stem cells. Here we show that although they can be managed safely during the standard ex vivo expansion period (6-8 weeks), human mesenchymal stem cells can undergo spontaneous transformation following long-term in vitro culture (4-5 months). This is the first report of spontaneous transformation of human adult stem cells, supporting the hypothesis of cancer stem cell origin. Our findings indicate the importance of biosafety studies of mesenchymal stem cell biology to efficiently exploit their full clinical therapeutic potential.


Human bone marrow derived mesenchymal stem cells do not undergo transformation after long-term in vitro culture and do not exhibit telomere maintenance mechanisms.
Bernardo ME, Zaffaroni N, Novara F, Cometa AM, Avanzini MA, Moretta A, Montagna D, Maccario R, Villa R, Daidone MG, Zuffardi O, Locatelli F.
Cancer Res. 2007 Oct 1;67(19):9142-9.


Human bone marrow derived mesenchymal stem cells do not undergo transformation after long-term in vitro culture and do not exhibit telomere maintenance mechanisms.
Bernardo ME, Zaffaroni N, Novara F, Cometa AM, Avanzini MA, Moretta A, Montagna D, Maccario R, Villa R, Daidone MG, Zuffardi O, Locatelli F.
Cancer Res. 2007 Oct 1;67(19):9142-9.
PMID: 17909019


Friday, August 6, 2010

研究室の学位を取得した仲間が教えてくれた凄い論文。

この細胞の老化の過程で発現した酵素活性は、マーカーだったのかね。そうなんだろうね。

細胞移植するときに、この酵素が欠損しているG(M1)-gangliosidosis患者に対しては、senescenceに陥った細胞ないしは陥りそうな細胞を移植すると効率が高い。効率がいいというのは、移植する細胞数が少なくて済むなという意味です。細胞数の問題は結構大きいと思う。



Aging Cell. 2006 Apr;5(2):187-95.
Senescence-associated beta-galactosidase is lysosomal beta-galactosidase.
Lee BY, Han JA, Im JS, Morrone A, Johung K, Goodwin EC, Kleijer WJ, DiMaio D, Hwang ES.

Department of Life Science, University of Seoul, Dongdaemungu, Jeonnongdong, Seoul, Korea 130-743.
Abstract
Replicative senescence limits the proliferation of somatic cells passaged in culture and may reflect cellular aging in vivo. The most widely used biomarker for senescent and aging cells is senescence-associated beta-galactosidase (SA-beta-gal), which is defined as beta-galactosidase activity detectable at pH 6.0 in senescent cells, but the origin of SA-beta-gal and its cellular roles in senescence are not known. We demonstrate here that SA-beta-gal activity is expressed from GLB1, the gene encoding lysosomal beta-D-galactosidase, the activity of which is typically measured at acidic pH 4.5. Fibroblasts from patients with autosomal recessive G(M1)-gangliosidosis, which have defective lysosomal beta-galactosidase, did not express SA-beta-gal at late passages even though they underwent replicative senescence. In addition, late passage normal fibroblasts expressing small-hairpin interfering RNA that depleted GLB1 mRNA underwent senescence but failed to express SA-beta-gal. GLB1 mRNA depletion also prevented expression of SA-beta-gal activity in HeLa cervical carcinoma cells induced to enter a senescent state by repression of their endogenous human papillomavirus E7 oncogene. SA-beta-gal induction during senescence was due at least in part to increased expression of the lysosomal beta-galactosidase protein. These results also indicate that SA-beta-gal is not required for senescence.


研究室の学位を取得した仲間が教えてくれた凄い論文。

この細胞の老化の過程で発現した酵素活性は、マーカーだったのかね。そうなんだろうね。

Aging Cell. 2006 Apr;5(2):187-95.
Senescence-associated beta-galactosidase is lysosomal beta-galactosidase.
Lee BY, Han JA, Im JS, Morrone A, Johung K, Goodwin EC, Kleijer WJ, DiMaio D, Hwang ES.

Department of Life Science, University of Seoul, Dongdaemungu, Jeonnongdong, Seoul, Korea 130-743.
Abstract
Replicative senescence limits the proliferation of somatic cells passaged in culture and may reflect cellular aging in vivo. The most widely used biomarker for senescent and aging cells is senescence-associated beta-galactosidase (SA-beta-gal), which is defined as beta-galactosidase activity detectable at pH 6.0 in senescent cells, but the origin of SA-beta-gal and its cellular roles in senescence are not known. We demonstrate here that SA-beta-gal activity is expressed from GLB1, the gene encoding lysosomal beta-D-galactosidase, the activity of which is typically measured at acidic pH 4.5. Fibroblasts from patients with autosomal recessive G(M1)-gangliosidosis, which have defective lysosomal beta-galactosidase, did not express SA-beta-gal at late passages even though they underwent replicative senescence. In addition, late passage normal fibroblasts expressing small-hairpin interfering RNA that depleted GLB1 mRNA underwent senescence but failed to express SA-beta-gal. GLB1 mRNA depletion also prevented expression of SA-beta-gal activity in HeLa cervical carcinoma cells induced to enter a senescent state by repression of their endogenous human papillomavirus E7 oncogene. SA-beta-gal induction during senescence was due at least in part to increased expression of the lysosomal beta-galactosidase protein. These results also indicate that SA-beta-gal is not required for senescence.