フロリダ大学での講演の前後に、招待していただいた教授が面談をセットアップしていただいた。2日間で10人くらいの教授達と30分ずつ話をすることができた。これはすばらしい仕組みで大変に嬉しかった。こちらの研究に対する質問だけではなく、自分の研究を紹介してくれる。かなり贅沢な時間であった。そういえばサンディエゴにいたときも、このような仕組みがあり、ポスドクを含めた研究者達が希望をすれば、招待講演者と話を30分くらいすることができた。また、偉い研究者と一緒にランチを共にすることができ、たいへん嬉しかった。
ディスカッションの中で、先方に確認し、秘密と言われなかったもののみを記載します。この態度を守らないと質の高い情報や科学者との接点がなくなってしまう。
レンチウィルスでiPS細胞を作製すると癌化する。びっくり。バーキット・リンパ腫になるって。先方の准教授が病理だというので標本を拝見したら、たしかに、がん化していた。レンチウィルスは染色体に組み込まれた後にサイレンシングを受けないので、どうもc-myc, Klf-4のせいでがん化するようだ。研究室で500種以上のiPS細胞を作製したが、ヒト細胞ではがん化した例がないので、びっくりした。遺伝子治療用ベクターはサイレンシングを受けないのでリプログラミングのためには不適切なんだね。iPS細胞を最初に作製したのはレトロウィルスベクターを使用しているけど、サイレンシングを受けるというベクターの欠点がリプログラミングでは長所になっていたんだ。
ウィルスベクターを使用しないでiPS細胞を作製する研究も行われていた。蛋白質トランスファーを細菌で行う研究である。これもみんなに話してもいいのかと確認してあります。細菌を使用するとLPSがコンタミするので細胞医療には不適切のように感じるかもしれないけど、ゲンタマイシンで処理すれば全く問題ないとのこと。笑ってしまったのは、細菌をかけていない側にも細菌が検出されてしまったのはご愛敬。ハンス・シェーラー博士のところに留学したらしい。
再生医療とは関係がないが、日本でパーキンソン病が遺伝子治療で治癒した話をArunから聞いた。良く存じ上げている先生が行った遺伝子治療で、サルを用いた発表までは聞いていたが、人でも行われたらしい。嬉しい話である。
MapItというエピジェネティックを解析したデータベースの話をうかがった。Michaelというとても面白い明るい方でサンディエゴにいたらしく、ちょうど時期が重なっていた。Michaelが大学院生のころに私がポスドクをしていた関係にあり、共通の知り合いが多くいた。NARに出版されていたので、今度読んでみよう。
Leber congenital amaurosisに対する遺伝子治療に関する話をたくさん伺った。遺伝子治療センターができていて、GMP体制が確立しているように見えた。大学でこのような施設ができているのはフロリダ大学くらいなのではないか。
たくさんの勉強をさせていただきました。招待していただいた方には、本当に感謝したい。科学者との議論の場を用意してくれたのは、最高の贅沢な時間となりました。日本でも今度からそうしよう。
No comments:
Post a Comment