山中氏が、Nature誌 (Nature, 460:49, 2009)にiPS細胞作製メカニズムに2つのモデルを提唱した。確率モデルとエリートモデルだ。宮崎大学の西野光一郎准教授は、成育の研究室にいたときに、確率モデルが正しいことをエピジェネティクス動態から証明した。エリートモデルでは、どの細胞もがiPS細胞になれるわけではなく、細胞集団の中でiPS細胞になることを潜在的に運命づけられた「エリート」細胞のみがiPS細胞に変身できる。一方、確率モデルでは、細胞集団のどの細胞もiPS細胞になることができ、iPS細胞になれるかなれないかは、メチル化の波が次々と生じることによっておき、そのメチル化部位は細胞ごとに全く異なり、確率的であった。運命づけられている訳ではなく、確率によって細胞の運命は左右されることになる。
細かいことをいうと、西野氏の実験は山中4因子がサイレンシングされ、影響がなくなってからの話である。すなわち、山中4因子に依存しないフェーズでメチル化ダイナミズムが継続し、次々と新たなゲノム・メチル化を生じ、その中で偶然iPS細胞になれる形のメチル化を生じた細胞のみがiPS細胞になるということだ。また、その波は培養を続けるとだんだんと小さくなって最終的にはES細胞のように落ち着く。落ち着いてしまった後には、強烈なメチル化ダイナミズムは跡形もなくなっている。ゲノムメチル化を経時的に見ていった西野氏の努力と緻密さからこの発見はなされたと思う。
この結果は、PLoS Geneticsに掲載予定だ。タイトルは掲載されてから紹介します。
Nishino's studies favor the stochastic model of theYamanaka model (Nature, 460:49, 2009) rather than the elite model.
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