Natureのデータを見る限り、Glis1はmaternal geneであり、zygotic gene activationに関わらないと思われる。受精卵での発現も卵で残ったmRNAが検出されたのだろう。議論に書かれていたように、Nuclear transferにおける重要因子であると思われる。Nuclear transferにおいて、Glis1は十分条件ではないかもしれないが、必要条件ではあるだろう。十分条件だったら、すごいね。論文では著者らはGlis1をpro-reprogramming factorと考えているが、内部細胞塊(ESと同等ではないが近い)を形成する際のreprogramming factorと言えるかも。着床前期胚では、リプログラミングは生じていると言えるのだろうか。そんなふうに考えたことが、讀賣新聞(大阪版)の以下のコメントにつながる。
論文中でもうひとつ面白いことはGlis1はES細胞では発現しておらず、ES細胞に導入すると増殖を阻害すること。
iPS細胞は、皮膚などの細胞に3、4種類の遺伝子を組み込んで作る。がん遺伝子を含む4種類の遺伝子を使えば効率よく作れるが、がん化の恐れが高まる。がん遺伝子を除くと、安全性は改善するものの作製効率は100分の1以下になり、作製効率と安全性の両立が課題となっていた。 様々な組織の細胞に変化できるiPS細胞(新型万能細胞)で、作製効率と安全性を大幅に向上させることに、京都大の山中伸弥教授と前川桃子助教らのグループが成功した。作製にがん遺伝子を使わない方法で、がん化の危険性が少ないうえ、iPS細胞になり損ねた危険な細胞も排除されるという。9日付の英科学誌ネイチャーで... (途中略)
山中教授は「iPS細胞の実用化にとって、非常に有利な性質を兼ね備えた『魔法の遺伝子』だ」と話している。
国立成育医療研究センターの梅澤明弘・再生医療センター長の話「卵子で働く『母なる遺伝子』がカギになっており、がん遺伝子と違って安全性が格段によくなるのもうなずける。生命の誕生の研究にも影響を与えるだろう」
(2011年6月9日 読売新聞)
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