iPS細胞は、ES細胞と同様の分化能を有していると考えられることより、その分化能は多岐に渡る。ヒトES細胞にて確認された分化形質は、神経、心筋、血液細胞、軟骨、骨、平滑筋、上皮があげられる。ヒトES細胞は、欧米、アジア、豪州にて樹立されているが、iPS細胞は日米にて樹立が確認されている。iPS細胞が医療において治療薬として期待されているのは、その多分化能のみならず、自分自身のES細胞を極めて低侵襲に作成することができるためである。例をあげれば、自らの口腔粘膜を生検し、試験管内で増殖させ、万能化させる(4因子を加える)ことにより、自分自身のES細胞(万能細胞、iPS細胞)を得ることができる。自分自身のiPS細胞を得ることのメリットは、自分自身の細胞であることより、HLAが一致しており、免疫拒絶のない細胞移植が可能となることである。
iPS細胞が樹立できることが発見される前は、自分自身の体細胞の核を取り出し、卵子に入れることでES細胞を作るクローン技術法または核移植法が自分自身のES細胞を作り出す唯一の手段であった。このクローン技術法は、残念ながら卵子の入手が困難であること、クローン人間を作出する方法と一部同じであること、ES細胞同様にヒト生命の萌芽を滅失することから、倫理的な面からもむずかしい。また、技術的にもヒトでは、マウスや牛とは異なり、クローン技術法を用いてES細胞の作成に成功したという報告はない。クローン技術法に変わる方法として、自分自身のES細胞を得るためにiPS細胞の発見は大きい意義がある。
iPS細胞を得るためには体細胞を培養し、因子を導入し、コロニーを単離する作業が必要となり、どんなに少なく見積もっても2ヶ月は最低時間が必要となる。この2ヶ月という期間は、疾病にかかった患者がiPS細胞を用いて再生医療を受けたいと思ったとしても自分自身のiPS細胞を得るためには2ヶ月以上待たなくてはいけないことを意味している。これは急性、亜急性の疾病では意味をなさないので、前もって様々なHLAの型を有したiPS細胞を作成しておき、バンク化しておくことが考えられる。細胞をバンク化して共通の供給源とするという発想は、臍帯血バンクでの成功例があり、将来の興味深い課題として残されている。また、iPS細胞を用いた再生医療が普遍的な一般の医療になるためには、医療界が産業界と協調することが必要不可欠である。
Friday, November 14, 2008
iPS細胞を利用した医療の良いところ
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