Tuesday, June 15, 2010

再生医療 ---ヒトES細胞、iPS細胞、体性幹細胞を用いた戦略---

  今年は、再生元年と言われる.臨床の現場で、さまざまな形で再生医療が始まり、その検証を受けようとしている.また、産業界にもいわゆる「勝ち組」が出現する可能性があり、活性化したように見受けられる.骨髄単核球細胞、末梢血単核球、CD34陽性細胞の虚血下肢への移植、培養細胞を用いた皮膚表皮への移植は医療において確固たる地位を獲得し、心筋組織への移植は透明性・公開性をもって始められ、マスコミに暖かく迎えられた.整形外科、歯科口腔外科、循環器内科、心臓外科、形成外科を初めてとした領域が注目をあびており、正当な手続き(due process)を踏んで進める必要がある.このような現状の中で、再生医療にゼロリスクを求めようとするから、いくつかの明らかに有効と思われる再生医療が実現できないことがある.リスクが全くない医療は存在せず、再生医療を見守る側はゼロリスクを求めない代わりに厳しい態度で臨む.繰り返して言えば、再生医療に副作用があることを否定しない態度と同時に、利益(benefit)と不利益(drawbacks)を意識し、そのバランスの上で利益が不利益を上回るかどうかを臨床の現場で個々の患者について安全性を担保した上で考慮することが、再生医療の推進することになり社会の理解を得ることにつながる.厚生労働省「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の対象としている細胞は細則に記載されており、造血系細胞、神経系細胞、骨髄間質細胞、脂肪組織由来細胞、角膜細胞、皮膚細胞、毛包細胞、腸管細胞、肝細胞、骨格筋細胞、血管前駆細胞、臍帯血細胞があげられていることは興味深い.再生医療は、発生・分化の基礎研究の進歩のうえに成り立つ.基礎的研究の進展とその重要性を認識することは不可欠であり、同時に臨床応用が重要なことは議論の余地がない.再生医療は、「夢の医療」から、「書類上の医療」を経て、「現実の医療」としてスタートした。


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