ヒト間葉系幹細胞はOct-3/4高発現により未分化性を獲得するか
Friday, February 25, 2005 平成16年度 特定領域 公開班会議「幹細胞の可塑性と未分化性維持機構」
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/sct/stemcell/result.html
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Session 3 座長:中内啓光
10:18-10:33
10:18-10:33
ヒト間葉系細胞はOct-3/4高発現により未分化性を獲得するか.
宇山太郎、牧野初音、○梅澤明弘
(国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部)
(国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部)
成人由来の体性幹細胞のひとつである間葉系幹細胞は、試験管内における増殖が容易であり,骨細胞,脂肪細胞,軟骨細胞,神経細胞、骨格筋そして心筋細胞への分化能を有し、通常の培養過程において継代を重ねても間葉系細胞としての形質を保持する.このような細胞形質の保持は、細胞自身に内在する転写因子のネットワーク、ゲノムのメチル化・クロマチン構造によると考えられる.間葉系細胞は特異的な分化誘導をかけることにより明瞭な分化形質を示すけれども、その分化形質は間葉系ならびに神経系に限られ、胚性幹細胞に比較すると多分化能は限られているのが事実である.マウスにおいては間葉系細胞を胚盤胞に注入することで多分化能が示されている一方、ヒト間葉系細胞を用いた胚性幹細胞の未分化性獲得については検討されていない.
本研究では、「間葉系細胞は、Oct-3/4の高発現により脱分化し、胎児性由来細胞の形質を獲得する.」という作業仮説の元に、POU5F1 (Oct-3/4)が転座により高発現するヒト間葉系細胞 (Nakamura, T., et al., Genes Chromosome Cancer, 印刷中)を用いて、骨髄由来ヒト間葉系細胞、臍帯血由来間葉系細胞(Mol Biol Cell, 印刷中)、ヒト胎児性癌細胞NCR-G3と比較することにより、Oct-3/4高発現による未分化性の獲得の有無を検討した.特にヒト細胞を規定する表面抗原,転写因子の同定を行い,試験管内における脱分化形質を決定した.Oct-3/4を高発現する間葉系細胞は、驚くべきことに未分化性をうかがわせる細胞形態を示す.すなわち、増殖期にもかかわらずSphere様構造をとり、細胞境界が不明瞭となった.また、表面抗原では、間葉系細胞に特徴的なCD29, CD44, CD59が陽性となるばかりでなく、ヒト胚性幹細胞、胎児性癌細胞に認められるSSEA-4が弱陽性を示した.さらに、胚性幹細胞を特徴づける遺伝子であるNanog, Fbx15, UTF1の発現をRT-PCRにより検出した.
これらの結果は、Oct-3/4を高発現するヒト間葉系細胞は、完全な脱分化転換をなすものではなく、本来の間葉系細胞の枠を越える未分化性の特性を新たに獲得したことを示唆するものである.
本研究では、「間葉系細胞は、Oct-3/4の高発現により脱分化し、胎児性由来細胞の形質を獲得する.」という作業仮説の元に、POU5F1 (Oct-3/4)が転座により高発現するヒト間葉系細胞 (Nakamura, T., et al., Genes Chromosome Cancer, 印刷中)を用いて、骨髄由来ヒト間葉系細胞、臍帯血由来間葉系細胞(Mol Biol Cell, 印刷中)、ヒト胎児性癌細胞NCR-G3と比較することにより、Oct-3/4高発現による未分化性の獲得の有無を検討した.特にヒト細胞を規定する表面抗原,転写因子の同定を行い,試験管内における脱分化形質を決定した.Oct-3/4を高発現する間葉系細胞は、驚くべきことに未分化性をうかがわせる細胞形態を示す.すなわち、増殖期にもかかわらずSphere様構造をとり、細胞境界が不明瞭となった.また、表面抗原では、間葉系細胞に特徴的なCD29, CD44, CD59が陽性となるばかりでなく、ヒト胚性幹細胞、胎児性癌細胞に認められるSSEA-4が弱陽性を示した.さらに、胚性幹細胞を特徴づける遺伝子であるNanog, Fbx15, UTF1の発現をRT-PCRにより検出した.
これらの結果は、Oct-3/4を高発現するヒト間葉系細胞は、完全な脱分化転換をなすものではなく、本来の間葉系細胞の枠を越える未分化性の特性を新たに獲得したことを示唆するものである.
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