Friday, December 23, 2011

土地勘

最近、ブログを全く書かなくなったねと結構多くの方々から言われる。言われること自体は結構嬉しい。なぜかというと読まれているんだということを実感できるから。なぜ書かなくなったかというと、理由はそんなにないんだけど、「ブログを書く時間があるんだ!!」と言われることを恐れていることは事実。メールへの返事は全くない、依頼された仕事は終了していない、論文査読は終わっていない、委員会は出席していない、総務委員長の仕事はしていない、論文書いていない、FAXでの重要な問い合わせに対して返事が遅い、約束を守らない等々の理由がある。ブログを書いている時間があるなら、少なくともメールの返事をしろよという声が聞こえてくる。申し訳ないのだが、時々怖くなってメールを開けないことがある。メールのタイトルだけで、恐れおののく。メールは怖い。だいたい、幸せな気分にしてくれるメールは全くない。

それはともかく、細胞医療を支える幹細胞には、さまざまなレベルが存在する。たとえば、受精卵に近い全能性を有する胚性幹細胞がある一方、部分全能性を示す組織幹細胞では、骨髄に由来する間葉系幹細胞が知られている。骨髄由来の間葉系幹細胞は、生体マイクロデバイスとしての地位を築いてきたが、現在は骨髄のみならず胎盤、脂肪、月経血から単離されてきている。自分の残された(定年までの)年月を考えるとこの分野で集中してできることは限られている。結局、自分が行ってきたことと過去の方々が行ってきたことを元に、残りの8年の時間をデザインすることになる。8年と言っても現実的には5年もないのかなと感じている。自分の年齢を今朝完全に間違えていることを家族から指摘された。50歳だと思っていたけど、51歳でもうすぐ52歳なんだと。自分の年齢が分からなくなるなんて困ったもんだ。細胞医薬の有用性がどの疾患に対する再生医療に最も有効かという出口を見つけることは成功の確率を上げられる。残りの年月が少ない者には、最も実現可能性が高い分野にコミットするべきだし、もう少し言うと近くにいる患者のためになるほうがいい。それには、医療の知識、経験がある人に真剣にコミットして貰うことが好ましいとおり、これは経験に基づいた「土地勘」の有無が大事だ。自分は、自分ができることに集中して、後はその分野のプロにパスすることになる。自分で最後までやることはできないが、途中までやることだってとてもたいへんだ。皆様、ブログを書いているからって、皆様からのご指摘はちゃんとやっていますので、もう少しお待ちを。この年末年始は時間がたっぷりあって嬉しいな。おしかりを受けそうな仕事の対応だけでなくて、純粋に楽しめる映画や食事も行くぜ。

先日、Railwaysという映画を見た。富山県の話でした。おもしろかった。まわりは、60歳前後の方々ばかりで混んでいた。今まで使ってこなかったけど、どうも学割ならぬ年齢割引が既に使えるらしい。家族に朝指摘された。


Saturday, December 17, 2011

再生医療を骨髄移植や生殖補助医療と比較して(雑誌「再生医療」の巻頭言より)

 再生医療を推進するモデルはあるのかという問に対する答は、1.造血幹細胞移植(骨髄移植、臍帯血移植、末梢血移植)と 2. 生殖医療である。これは私の答えであるが、設問の是非はともかく、こんなものだろうと思っている。そこで、業界誌に自分の考えを記載したのが下の文章である。自分では自信作だったのに、あまり反響がない。ブログでも紹介している「iPS細胞におけるエピゲノム動態」は自信作でもあり反響もあった。業界誌に掲載した文章をそのままコピーペースとした。やはり、ブログで掲載しても反響ないのだろうかね。

 社会から暖かく迎えられる形で再生医療を推進したいといつも思っています。再生医療を考えるときに、自分自身に対し再生医療を理解させるために他の医療と比較しています。
 
 造血幹細胞移植は細胞移植そのものであり、現在の再生医療のお手本であります。再生医療と言っても問題ないのでしょうが、再生医療が将来の医療として紹介された時点で既に造血幹細胞移植が一般的な医療として定着していたことより、再生医療の範囲に入らなかったというところがあるのでしょう。実際に骨髄細胞を臓器・組織に直接注入したり、静注したりする一部の対象疾患に対しては再生医療としての扱いがなされています。造血幹細胞移植は骨髄移植から始まり40年を超える歴史があり、移植不全や移植片対宿主病という大きな問題があるにもかかわらず、一般の医療として定着し、この10年で臍帯血幹細胞移植そして末梢血幹細胞移植に発展し、さらに安全性の高い移植法が開発され続けています。この造血幹細胞移植では細胞はお薬としての扱いがなされていませんが、再生医療では一般に細胞は生物製剤として扱われ薬価がついていくことになります。細胞が生物製剤として扱われることに私はとてもポジティブにとらえており、その理由はその方が経済的な面から再生医療が進むと思っています。繰り返せば、細胞がお薬として扱われ対価が支払われることが健全だと思っています。もうひとつ気になっていることは、造血幹細胞移植では通常は同種なので免疫抑制剤を使用する点です。国立成育医療研究センターにて臓器移植を行っている方にお聞きすると免疫抑制剤を使用していても普通と変わらないと生活をおくることができるとのことですが、免疫抑制剤を使用するような臓器・組織移植や骨髄移植の対象疾患を見ると、相当な病気すなわち致死性疾患に適応されると考えた方が早いように思えます。造血幹細胞移植では、白血病を初めとした悪性腫瘍、リソソーム蓄積症、表皮水疱症といった疾病が対象になっています。免疫抑制剤を使用するわけであるから、免疫抑制剤による不利益を上回る利益がなくてはならないのでしょう。骨髄移植ほどの免疫抑制剤は使用しないだろうし、骨髄移植での移植片対宿主病といった副作用は細胞移植では存在しませんが、それでも同種の再生医療は重篤な疾患に限られるとういう考えが正しいのでしょう。少なくとも同種の再生医療を開始する当初は致死性疾患が対象疾患といってもいいかもしれません。
 
 再生医療の参考となるもうひとつの医療として、生殖補助医療を勉強しています。今ではクリニックを含めて多くの医療施設で受けられる生殖補助医療ですが、我が国では1983年に一人目の体外受精児が生まれ、1993年には顕微授精が始まりました。意外なほど歴史は浅く実験的医療と言われているにもかかわらず、既に生殖補助医療で生まれた赤ん坊の数は20万人であり、毎年2万人が生まれており、50人にひとりの割合です。感覚的に言えば、小学校のクラスにひとりは生殖補助医療で生まれた子どもがいるわけです。世界的には200万人程度が生まれています。受精胚は人間そのものであることより再生医療とは言われませんが、お母様から卵子を、お父様から精子を採取し、生体外での受精・培養、母体への移植という過程は再生医療とたいへん良く似ています。畜産繁殖での技術を人間に応用したレベルの高い技術であるものの、安全性が確認されている訳ではなく、現在もコホート研究が行われ、その安全性検証が行われています。受精卵の凍結保存技術のみならず、現在は卵子及び卵巣の凍結保存技術が開発されつつあり、凍結技術のみならず技術革新は眼を見張るものがあります。また、不妊治療助成として、都道府県より1年に1回15万円、2回までとし、通算5年支給されています。
 
 骨髄移植も生殖補助医療も社会に貢献したことよりノーベル賞がその開発者に授与されていますが、自分の子供が成長する頃、再生医療が同じように発展し、社会に暖かく迎えられていることを願っています。
 


Friday, December 9, 2011

ボイリング法---名古屋でやっていたぞ!!

名古屋に、プラズミド・コンストラクトの指導をしてくれた方がいる。先日、訪れたら、びっくり。自分でプラズミドを精製していた。なんと、ボイリング法。俺だってやったことないんじゃないか。アルカリ法だよね。いや、アルカリ法なんてやっている人なんていやしない。みんなキットだ。この大事な話は、また後で。

コンロの上に鍋があって、その中に水があって、ボイルするんだそうだ。一分間。ええっ!!

こういう人って強いよね。不況にも。戦いにも。そう、思った。


Sunday, December 4, 2011

ゲノム指針

ゲノム指針攻略本が欲しいって。

意見書をまとめようっていう組織もあるとのこと。


セミナー欠席で残念。

最近ブログの更新がないんだよね。複数人の方々からご指摘を受けた。二つの理由があって、ひとつは「研究費申請を優先している。」、ふたつめは「読む方が多くなって、臆病になっている。」。もうひとつあった。テレビ好きで、録画してあるテレビを一生懸命視聴している。

以下のセミナーに参加できなかった。とても残念。

日時: 平成23年11月30日(水) 15:00~16:00
 
場所: 研究所2階セミナールーム
 
演者: 自治医科大学 医学部 薬理学講座 環境毒性学部門・助教
    三瀬 名丹先生
 
演題: ES細胞とEG細胞の相似点と相違点から考えるエピジェネティクス制御
 
要旨:胚性幹(ES)細胞は胚盤胞期胚に由来する幹細胞である。一方、胚性生殖(EG)細胞は形態的にはES細胞によく似ているが、発生中の胚の始原生殖細胞(PGC)に由来する。両親から受け継いだインプリント遺伝子のDNAメチル化が消去された12日目胚のPGCからもEG細胞は樹立できるが、このEG細胞は生殖系列に寄与できない。我々は、様々な遺伝子型を持つES細胞と、12日目胚のPGCからEG細胞を新規に樹立し、その発現解析とDNAメチル化を中心にエピジェネティックな解析を行ってきた。発現プロファイルや繰り返し配列におけるDNAのメチル化からはES細胞とEG細胞は区別できなかったが、インプリント遺伝子群のメチル化については、両者で全く異なり、ES細胞が体細胞型だったのに対して、EG細胞では完全にメチル化が失われていた。こういった、ES細胞とEG細胞における相似点と相違点の解析から、DNAメチル化の制御について議論したい。