Wednesday, May 15, 2013

βカテニンを破壊したES細胞は奇形腫形成ができずに悪性胚細胞腫瘍となる。



奥村典子氏と阿久津英憲氏が、βカテニンを破壊したES細胞は奇形腫形成ができずに悪性胚細胞腫瘍となることを発表した。そもそもβカテニンはがん抑制遺伝子なので、驚くべきことはないというかもしれないけど、悪性胚細胞腫瘍ができるとはね。癌腫(carcinoma)とか肉腫(sarcoma)になると思ってもおかしくないよ。顕微鏡下では、癌腫(上皮性悪性腫瘍)も肉腫(間葉系悪性腫瘍)もなかった。以下のサイトに公開されている論文をお読みいただいた指導教授より、mixed embryonal ca with STGCのご診断を頂戴した。STGCっていう言葉も忘れていました。お恥ずかしい。また、βカテニンは分化にかかわるので、さまざまな分化形質を示す奇形腫ができるものおかしくない。分化と腫瘍化の両方の形質がでてきて、分かりやすい結果となった。

以下の論文でβカテニン破壊ES細胞のin vitroでの性質が報告されているが、それに加えて本論文では生体における腫瘍形成能及び分化能に踏み込んでいる。

これがヒトの胚細胞でも言えるかどうかは不明。まずは、論文で調べたが今のところは見つかっていない。自分でWhole exome sequencingするもの大事。もしかしたら、これはマウスだけの結果かもしれない。別論文で、やはりある遺伝子を破壊したら絨毛癌ができていた(どの遺伝子でどの論文だったかね)。マウスES細胞には比較的悪性化しやすいという性質があるのかもしれない。ヒトES細胞でもβカテニンをノックダウンして絨毛癌ができるのかを検討する必要があると思う。

胚性がん細胞にて、wntシグナルにかかわる遺伝子に変異があるかどうかも調べる必要がある。


FBには日本経済新聞の記事をコピペ。


読売新聞記事をコピペ(以下)。

 ES細胞(胚性幹細胞)から、精巣や卵巣にできるがんの「悪性胚細胞腫瘍」を形成させることに、国立成育医療研究センターと慶応大の研究チームがマウスの実験で成功したと発表した。



 ES細胞をがん化させた例は珍しく、治療薬の開発に生かせる成果という。15日付の米電子科学誌プロスワンに掲載された。

 同センターの阿久津英憲室長(幹細胞生物学)らは、受精卵から組織ができる過程で重要な役割を果たすとされる遺伝子「βカテニン」に着目した。この遺伝子がともにないマウスの精子を卵子に受精させたうえでES細胞を作製し、別のマウスの背中に移植した。

 その結果、移植したES細胞は約1か月後、セミノーマや胎児性がんなど精巣や卵巣にできる複数のがんが混在した悪性胚細胞腫瘍に変化した。また、作製したES細胞を調べたところ、通常のES細胞と同様に無限に増える一方、骨や皮膚などの組織になる能力は持っていなかった。
(2013年5月15日17時51分  読売新聞)


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