Wednesday, June 17, 2009

EWS-Oct4/3

がん研究所にて、骨軟部腫瘍にキメラ遺伝子EWS-Oct4/3があることが発見された。また、その骨軟部腫瘍から、細胞株が樹立された。何年か前の病理学会での発表を見た同僚が私にそのことを報告してくれた。その頃、間葉系細胞からヒト胚性幹細胞を作成しようと思っていたので、この腫瘍は胚性幹細胞の特徴を持っているのではないかと予想した。もらった細胞を調べてみるとそんなことはなく、ただの肉腫であった。結構がっかりしたのだが、報告しなきゃといろいろなことを試みた。キメラ遺伝子以外のゲノム異常はないのか。腫瘍細胞自体は胚性幹細胞の性質はもっていないが、EWS-Oct4/3は強いOct4/3活性を有しており、間葉系細胞を初期化できるのではないか。いろいろな可能性を探り、EWS-Oct4/3を間葉系細胞に導入したが結局、胚性幹細胞はできなかった。今で言うiPS細胞を作成しようとしていたわけであるが、当時は山中氏の発表もなく、何か雲をつかむような話であった。実際、やっている本人も半信半疑であるから、うまくいくわけがなかったのだろう。山中氏のような信念がなくては、iPS細胞はできないのであろう。

 しかし、話はまだつづき、なんとEWS-Oct4/3は信念があったとしても全くiPS細胞はできなかっただろう。山中四因子のうち、Oct4/3の代わりにEWS-Oct4/3を利用しても全くiPS細胞はできなかった。もちろん、同じ細胞を用いてOct4/3を含む山中4因子でiPS細胞はたくさんできてきたので、結局、EWS-Oct4/3は強いOct4/3活性どころか全くOct4/3としても転写活性を有していないことになる。この内容は、現在Exp Cell Resに印刷中であり、今年度中に論文が出版されることになる。このEWS-Oct4/3に、単にがん遺伝子としての機能しかないことは韓国のグループがOncogeneに発表している。Oct4/3はかなりの部分の遺伝子があるのに、EWSがくっついただけで「がん遺伝子」に変身してしまうとは悲しい。というわけで、EWS-Oct4/3の研究はこれで終わりとなります。昔からEwing肉腫の研究をしていたので、この手のキメラ遺伝子研究は楽しかったが、結果として論文にはなったものの、「間葉系細胞から胚性幹細胞へ」ということはならなかったわけで、繰り返すが悲しい。


哺乳類の単為発生に関するブログ


今日の講演で同じような話を聞いてきました。胎生期のエピジェネティクス制御にかかるお話でした。






Examples showing how important epigenetics is.

ロバ   ラバ
三毛猫
朝顔の縞模様

胎盤の進化 (石野先生のお仕事)
 有袋類 (カンガルー) 胎盤あり  インプリンティングあり
 カモノハシ (ほ乳類だけど卵あり) インプリンティングなし

子宮内胎児発育不全

乏精子症

反復性胞状奇胎

習慣流産(モデルマウス)

インプリンティングにかかる遺伝子は、クラスターになっている。染色体上で30カ所にクラスターしている。

IUGR Epi-genotype versus phenotype
Miscarriage-derived specimens have a unique epigenotype (DMR region identified by Prof Ito: e.g., syncytin, H19).
Abortion-derived specimens serve a control for this.

Illumina-Infinium analysis revealed that there is a big difference in epigenotype between plancenta and peripheral blood.






Sunday, June 14, 2009

塞翁が馬、いや浦島太郎か。

 ヒト細胞の初期培養では、PDGF, bFGF等で増殖を亢進させることにより、Rb/ink4a伝達経路が刺激され、最終的にpremature senescence(細胞老化)が促進されてしまう。いいこともあれば、悪いこともおきる。増殖が刺激されるが、寿命に変化を起こさせない方法として、フィーダー細胞を用いることが報告されているが、液性因子を用いることで解決できないかな。

 この現象はヒト細胞の培養における現象であるが、「人間万事、塞翁が馬」というのと似ているように思えるし、楽しい思いをして寿命が加速した「浦島太郎」の話にも似ているような気がする。もし、この内容を英語で総説を書く機会を与えられたら是非、この二つの話とともに書こう。

Takahashi, H., et al., J Cell Physiol, 2009






Saturday, June 6, 2009

行政指針

生命倫理法研究会での、中山茂樹氏(京都産業大学、気合いの入った法学者)のご講演での単語(配付資料)ーーー意味が理解できないところがあり、将来調べてみようと思っています。

学問の自由:人権と「特権」の2側面
 最大判昭和38.5.22刑集17-4-370(ポポロ事件)
 憲法23条の学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含み、それらを広く国民に対して保障するとともに、大学におけるそれらの自由を保障することをその趣旨とする。

 学問の自由が公共の利益にもとづく「特権」であるとすれば、社会の基本的な価値に関する社会的合意形成によって、自由が制限されることは自然である。

 学問の自由の憲法的保障の意義
 人権としての学問の自由も、他者危害禁止等の理由により制限をうけるのは当然。
 保護すべき法益(誰かの個人情報)ごとに規律を考えていく必要がある。

法益:法的に保護すべき利益。
私益:公益(公共の利益)に対する言葉。公益ではない、法益というのもあるらしい。

ヒト難治性疾患のゲノムバンクにかかるルールの法益とは、「誰か(患者ないし親族)の個人情報」を守ることである。小児難治性疾患であると症例数が限られるので、法益を担保するのがむずかしくなる。また、法益としては、「誰かの個人情報」のみならず、社会にゲノム情報が(たとえ連結不可能匿名化されたとしていても)流通しない方がいいという考えがある場合はそれを侵さないというルールが必要になるそうである。


民主主義:マクロな決定の手続きのあり方の問題
ミクロな具体的処分における当事者のdue processとは異なる。

社会のみんなを拘束する決定を行えるのは国民代表議会のみである(憲法)。
人権:社会全体の利益になるとしても侵すことのできない個人の私的領域。

指針
 法律で定めなくてよいのか。:民主的正統性
  研究費の給付の条件である。

「憲法の理性」(161ページ、長谷部恭男)
 人々は単にやっかいな問題について真剣に検討しないですませるためにこれらの文章を利用していることになる。。。

研究者(と言う変わった人たち)集団の自律性
 日本では、行政指針が定められ、それに従っていることで社会から非難を受けることなく研究が進められる、という面がある。
 倫理あるいは「正しさ」についての議論を他者あるいは行政にあずけてしまうべきではない。そもそも、この手の議論は行政ではなく立法(国会)で行うところである。行政の方が、国会より、(日本では)信頼されているようだ。

「予定調和」
 小説やドラマなどの物語世界において決まった結末が定められ、物語がその結末へ向けて収束する事を予定調和と呼ぶ。ミステリー小説においてはどのような形であれ事件は解決し、恋愛小説においては何らかの恋愛が成就する……というように多くの物語では一定の結末を迎える事が約束されており、何らかの予想可能な結末を迎える事になる。そのような意味から考えれば、物語は広い意味での予定調和の上に成り立っていると言えるだろう。ただし一般的には、時代劇において悪代官や腹黒商人が、民衆の味方である先の天下の副将軍や退屈な旗本によって懲らしめられるといった予め結末はわかっている物語において、その予定通りの結末が描かれる事を予定調和と呼ぶ事が多い。またゲームなどにおいては、どんな行動をとったかに関わらず一定の結末へ向かうようなベクトルが定められているものを揶揄する表現として使われる場合もある。

 ライプニッツは、神が、予め、個々のモナドが結果として一致して、ひとつの宇宙を反映するように、うまく初期状態を定めたからだ、ということであった。たとえば二つの異なるメカニズムの時計をそれぞれ同じ時刻に鳴るように仕組んだ場合、二つの時計の間に相互作用はないにもかかわらず、あたかも相互作用があるかのような一致が結果として生まれる。このモナドの相互調和、そしてそれによって反映される共通のひとつの宇宙が、可能世界のうちで「最善」の世界である。この反映される調和状態、宇宙が可能なうち「最善」の世界であるとされるのは、単に最も善いものを反映するように複数のすべてのモナドを強調させることは論理的に不可能であるかもしれないからだ。誰もがハッピーという状態は並存不可能だというのは明らかなところだろう。


 重要な課題でいつも考えなくてはいけなくてはいけないことなのでしょう。時間と労力の問題だよね。まじめにずっとやれば、これだけで一生終えることができると思う。






Wednesday, June 3, 2009

Nosology of Osteogenesis Imperfecta

Type Iは、Haploinsufficiency.
Type IIは、Dominant negative.

だから、Type IとType IIは、変異を伴った遺伝子産物の作用機序が異なるのだそうな。

nosology【名】 1. 疾病分類学

Type I
Collagen is of normal quality but is produced in insufficient quantitie

Type II
Collagen is not of a sufficient quality or quantity





SDF-1とCXCR4

骨髄間質細胞から、SDF-1が産生される。その受容体はCXCR4であり造血幹細胞に発現する。間質と造血幹細胞の関連が明確になっている分子機構のひとつである。ヒト遺伝学研究が分子の機能解明に役立っているひとつの良い例である。

 SDF-1(CXCL12/PBSF)は、造血、器官形成などの発生現象への寄与が明らかとなったサイトカイン(ケモカイン)であり、その受容体であるCXCR4は HIV-1の宿主細胞における受容体としても働き、エイズ発症に必須の分子として知られている.CXCL12は骨髄由来の間葉系細胞から産生されており、造血系・免疫系・血管系の発生・再生に重要な役割を果たす.

CXCR4の変異はWHIM症候群にて認められる。SDF-1/CXCR4システムは、造血幹細胞が骨髄間質に接着し、造血細胞が末梢血に出るところで関わっている。WHIM症候群では骨髄は過形成になっているにもかかわらず、末梢では白血球減少に陥っている。CXCR4のC末端が短くなっていることにより、シグナルが常時伝達されることになる。Dominant active変異である。この変異体は、造血幹細胞が骨髄にホーミングすることを促進し、骨髄移植・臍帯血幹細胞移植における生着を促進する。その変異体の機能を利用して、一過性に発現できる系を確立して、造血幹細胞移植の骨髄生着率を上げることが可能である。一過性の発現とは、遺伝子が染色体に組み込まれない方法で行うことを意味している。

SDF-1は多くの間充織細胞に発現しているにもかかわらず、骨髄のみにて造血細胞が増殖する。これは、おそらく骨髄間質にはSDF-1/CXCR4システム以外の系が働いている可能性と、骨髄には造血できる空間的スペースがあるからであるという可能性があげられる。また、骨髄間質自体にCXCR4が発現しているのでSDF-1がオウトクラインに働いて作用している可能性とそのことがWHIM症候群に関与している可能性は不明とのことである。

KI氏の教え

血管性ニッチ
CAR cell: CXCL12 abundant reticular cell
CXCL12 (SDF-1: Stromal cell-derived factor-1)
CXCL12 and its receptor CXCR4

骨芽細胞性ニッチ
SNO cell: spindle-shaped N-cadherin-positive osteoblastic cell
TPO and its receptor c-mpl
Neurtralizing Ab to mpl1 inhibits TPO/Mpl signaling.


Ang-1 and its receptor Tie2

CD150
CD150+ CD244- CD48-

CD69
別名
Very early activation antigen (VEA)
Activation Inducer Molecule (AIM)
C-type lectin domain family 2C (CLEC2C)
EA1
MLR3
gp34/28


The identification of mutations in CXCR4 in individuals with WHIM syndrome represents the first example of aberrant chemokine receptor function causing human disease and suggests that the receptor may be important in cell-mediated ...