Wednesday, April 1, 2009

糖鎖は幹細胞のマーカー---豊田博士の論文とプロジェクトの餡パン

Medical Glycomicsという糖鎖を研究するプロジェクトがある。そこのひとつのプロジェクトに、幹細胞の糖鎖に対するプローブ開発がある。



おひるごはんにでたアンパンに大きなMGの文字は印象的でした。

豊田雅士博士がお書きになったマーカーの一例です。とっても勉強になります。

Tra-1(Tumor rejection antigen)はヒト胚細胞性腫瘍 (germ cell tumor)の患者血清中に見出された抗原の一つである。このうち、1998年J.A.Thomsonらによる最初のヒト胚性幹(ES)細胞樹立に際しTra-1-60,Tra-1-81を細胞表面マーカーとして報告したことから、これらは今ではヒトES細胞のマーカーとして欠くことのできない存在としての地位を確保している。Tra-1-60, Tra-1-81は、ヒトES細胞のほか多分化能をもつ未分化なヒト胎児性癌(EC)細胞、ヒト胚性生殖(EG)細胞においても発現が認められ、細胞分化にともない失われる。

これら抗原に対する抗体はいずれも同じ高分子のケラタン硫酸プロテオグリカンをエピトープとして認識している。ケラタン硫酸は、硫酸化されたガラクトース(Gal)とN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の二糖の繰り返し構造から構成される。硫酸基はGalとGlcNAcの両方または片方の6位炭素に結合した構造をしており、コアとなるタンパク質との結合様式や硫酸化度、鎖長は組織により多様であることが知られている。  

Tra-1-61抗体によって認識されるエピトープは、Tra-1-81抗体と異なりノイラミニダーゼ消化によって消失することから、シアル酸を含む糖鎖構造を認識している。
2007年W.M.SchopperleらによってTra-1-60, Tra-1-81抗体がシアロムチンのCD34ファミリーメンバーでケラタン硫酸化糖タンパク質ポドカリキシン(podocalyxin)上の、糖質エピトープを特異的に認識することを明らかにしている。ポドカリキシンは膜貫通型の糖タンパク質で足細胞として知られる上皮性糸球体細胞から同定され、糸球体の機能・形態の保持において重要な役割をしているほか、種々の癌の発達にも関係していることが知られている。ヒト幹細胞でのポドカリキシンの役割は不明であるが、未分化細胞において分子サイズが大きく糖鎖修飾の違いが未分化の維持に関与していることが推定されている。

参考文献
1. 豊田雅士、梅澤明弘、再生医療における糖鎖マーカー 遺伝子医学MOOK 2008;11:240-244.
2. Schopperle WM and DeWolf WC, The TRA-1-60 and TRA-1-81 human pluripotent Stem cell Markers are expressed on podocalyxin in Embryonal Carcinoma. Stem cells 2007; 25: 723-730.


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