Sunday, February 27, 2011

樋口亜紺氏のiPS総説論文

 樋口亜紺教授がChemical Reviews誌にiPS細胞に関する総説論文を記載した。Chemical Reviews誌は、このブログの読者はご存じないだろうが、伝統あるAmerican Chemical Societyの雑誌でインパクトファクターが35.957 (2009)である。インパクトファクターが36ってすごい。もちろん、Review誌であるからであることは間違いないが、論文が厳選されている。以下の論文で、PubMedから読めるだろうし、(有料だが)全文ダウンロードできる。樋口教授の力作であり、たいへんiPS細胞の材料に関する論文を総ざらいにしている。とてもいい論文である。話を聞くと、とても時間がかかったようである(半年とか)。是非、一読を奨める。なお、第一著者が全て論文を書いており、私は最終著者となっているが、一番貢献度が少ない著者として最終著者となっている。

 なお、Copyrightを侵さない範囲で、著者らのサイトから読めるようにしようと思っています。



Sunday, February 20, 2011

多能性幹細胞(iPS細胞)で、HLA type I を合わせる 

HLA type I の両方のアリールが同じのヒトからiPS細胞 (HLA homo iPS cells)をつくると、免疫学的に合う確率がとても高くなる。免疫抑制剤を使用しなくてもいい訳だ。HLAホモ iPS細胞で50種類で90%をカバーできるらしい。HLA hetero ES細胞が50種類で90%をカバーするっていう話を聞いたことがあるけど、どっちが本当なのだろう。

成育が作成したES細胞の中にHLA type Iの両方のアリールが同じなものになっている可能性ってないだろうな。確率的には極めて低い。あまり免疫学的に合致したES細胞だと、移植して好ましくない状況(腫瘍化)となったときに、免疫抑制剤の使用中止しても排除されなくなってしまい良くないか。

たくさんの種類のiPS細胞を作製するのに末梢血を使用することが推奨されているけど、月経血の方が楽だよね。痛くないし、作製が簡単だろうと思う。


骨髄間質細胞による皺取り

信頼している研究者(産業界)に、電車の中で質問した。「骨髄間質細胞を移植することで、コラーゲンを増やし、皺をとるっていう治療は実際に有効なのか。」 答えは、イエスであった。正直言って、信じていなかったので、意外な感じがしたが、皺がとれるという。感じで言うと、皺取りの美容形成手術とは全然違う感じで皺がとれるようだ。

 また、知り合いの研究者(大学教授)からの講演。光レーザーにより、皮膚真皮の線維芽細胞からの膠原線維の産生を増やすという。実際に、試験管内でも実験ができるのであろうか。また、光レーザーの受容体ってなんなのであろうか。昔、1980年代であるけど、PDGFやTGF-betaにより、間葉系細胞からコラーゲン産生が増加するということは報告されてきた。自身が、UCSDでブレナー医学部長の下でコラーゲン type I alpha1の転写調節の研究をしてきたことから、たいへん興味深い。あの頃は、5' のプロモータのメチル化の影響と、3'のエンハンサにおけるTGF-betaのresponsive elementを決めていた。後半で学会にて二つの賞を貰った。ふたつの学会での賞金が20万円程度だったので、ボスは出張費を出してくれなかった。自腹で学会出席となったが、賞として記載できるのは嬉しかった。その発見は、美容の分野でも生きればいいなと思っている。


肝線維化を軽減する自己骨髄細胞投与療法

骨髄間質細胞を含む骨髄細胞を移植することで、肝硬変の線維化を軽減できるらしい。線維化を軽減させると、残存している肝細胞の活性化促進が起こり、肝機能の改善をもたらすと思われている。

 線維化は肝障害の結果だと思っていたが、実際には線維化自体が肝機能を悪化させているようだ。その線維化を骨髄細胞(骨髄間質細胞)で軽減すればいいという戦略は有効なのだろうか。専門家の方々による動物実験の結果を待ちたい。重要な研究である。


多分化能を示すたのめ分化誘導剤である脱メチル化剤が、高リスクMDSの治療に。

 骨髄異形性症候群の治療はこのブログと関係がないじゃないかという方。また、このブログはいいかげんで何でも書いたり、メモ書きになっていたりするから、本人が興味を持っているだけはないかという方もいるかもしれません。

 脱メチル化剤 5-aza-cytidineは、昔(1985年)から分化誘導剤として私は使用してきた。ランダムな脱メチル化剤なので、多分化能を示すことに使える。また、前脂肪細胞に脱メチル化剤を使用するととても大きな脂肪滴を有する脂肪細胞がでてくる。

 その脱メチル化剤がMDSの薬として使用でき、高リスクMDSでの生存期間を延長できるから同種移植を実施できない例では第一選択薬になりえるらしい。全生存期間が1年から2年になるくらいらしい。治癒をもたらす治療は同種移植だけだそうだ。

 再生医療で、移植前に細胞に5-azacytidineの前処理することで骨格筋分化を起こし、筋ディストロフィーのモデルマウスに移植してきた。その時の分化誘導剤として使用してきた5-azacytidineが実際に薬として販売されている意義は大きい。骨髄間質細胞の多分化能を示すときにも、5-azacytidineを使用してきた。


Systematic (IUPAC) name: 4-amino-1-β-D-ribofuranosyl-1,3,5-triazin-2(1H)-one
Synonyms:5-azacytidine

Wikipediaより(ちょっと改変)
Azacitidine (INN) or 5-azacytidine, sold under the trade name Vidaza, is a chemical analogue of cytidine. Azacitidine and its deoxy derivative, decitabine (also known as 5-aza-2′deoxycytidine), are used in the treatment of myelodysplastic syndrome. Both drugs were first synthesized in Czechoslovakia as potential chemotherapeutic agents for cancer (ref. below).

Cih??k A (1974). "Biological effects of 5-azacytidine in eukaryotes". Oncology 30 (5): 405–22.