「再生医療における“エピジェネティクス”による安全性担保」について。
国立成育医療研究センター
西野光一郎
西野光一郎
西野「薬事指針にエピジェネティクスが記載されたと騒いでいますが、何のことなんですか?」
梅澤「薬事法上の再生医療に関する指針(案)(ガイドライン案)に、エピジェネティクスの解析が記載された。細胞のバリデーションに使えるという発想なんだ。」
西野「エピジェネティクスを研究している者ならエピジェネティクスで細胞のバリデーションが可能であるというのは常識的な感じがしますが?」
梅澤「これまでのエピジェネティクス研究の重要性が認められて、法令上に規定されたというのが重要なんだ。新たな局面を迎えている再生医療・細胞治療分野において、選択すべき重要な細胞特性指標としてエピジェネティクスに注目が集まっているということ。」
西野「つまり具体的には再生医療に使う移植細胞なんかの規格化にエピジェネティクスを使うということ?」
梅澤「そう。ドナー細胞としての有効性・安全性の担保に使えないかということ。」
西野「で、薬事指針にエピジェネティクスが記載されたと。どのように指針に組み込まれたの?」
梅澤「ここを見なさいよ!“試験的検体を用いた検討に際して、・・エピジェネティクス・・を用いた解析が有用・・”と書いてあるだろう?5個の指針(案)に合計10箇所もエピジェネティクスの記載があるんだよ。」
西野「5指針というのは?」
梅澤「体性幹細胞とiPS細胞の自己、同種とES細胞に関する指針案だ。(文献1-5)」
西野「指針の内容を読んだけど、文字も小さいし、同じような文章の繰り返しだし、難解ですね。なんかすごそうなのは分かったけど、僕みたいな基礎研究者にはメリットなさそうですね。」
梅澤「繰り返すけど、法令上に記載されたということ。この意味は大きい。エピジェネティクスを無視できなくなるんだよ。そうなると医療に限らず、畜産物や食物など人間の口に入るものとかにも影響が波及し・・・・」
西野「結果、生物学全般でエピジェネティクスを無視できなくなる、と。」
梅澤「そういうこと。」
西野「ふ~~ん。なんか最後は煙に巻かれた感がありますが、エピジェネティクスに注目が集まるのは良いことですね。」
参考文献
1. 早川堯夫、梅澤明弘、山中伸弥、他。ヒト(自己)体性幹細胞加工医薬品等の品質及び安全性の 確保に関する指針案(中間報告)、再生医療、 9(1):116-127, 2010
1. 早川堯夫、梅澤明弘、山中伸弥、他。ヒト(自己)体性幹細胞加工医薬品等の品質及び安全性の 確保に関する指針案(中間報告)、再生医療、 9(1):116-127, 2010
2. 早川堯夫、梅澤明弘、山中伸弥、他。ヒト(同種)体性幹細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針案(中間報告)。 再生医療、9(1):128-138, 2010
3. 早川堯夫、梅澤明弘、山中伸弥、他。 ヒト(自己)iPS(様)細胞加工医薬品加工等の品質及び安全性の確保に関する指針案(中間報告)。 再生医療、9(1):139-151,2010
4. 早川堯夫、梅澤明弘、山中伸弥、他。 ヒト(同種)iPS(様)細胞加工医薬品加工等の品質及び安全性の確保に関する指針案(中間報告)。 再生医療、9(1):152-165, 2010.
5. 早川堯夫、梅澤明弘、山中伸弥、他。 ヒトES細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針案(中間報告)、 再生医療、 9(1):166-180, 2010.
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