分化能を利用した戦略では、間葉系幹細胞移植による血管新生・心筋再生を介した心不全の軽減があげられる.心不全の実験動物モデルに対し、骨髄由来の間葉系幹細胞を移植した場合に心機能の改善がみられた.その機序として間葉系幹細胞が心筋や血管の細胞に分化することにのみならず、VEGF, HGF, adrenomedullin, IGF-1といったサイトカイン効果があげられる.ヒト拡張性あるいは虚血性心筋症に対するカテーテルを介した間葉系幹細胞移植の臨床研究でも良好な結果が得られたと報告されている.
歯科領域においても、歯槽骨の再生に骨髄由来の間葉系細胞が用いられ、効果があることが知られる.一方、間葉系細胞のみではセメント質、歯根膜の再生には至っていない.歯や歯周組織の発生には、口腔粘膜上皮に由来するエナメル上皮と周囲に凝集した神経堤由来の外胚葉性間葉系細胞が相互に様々な細胞増殖因子を分泌して増殖や分化を繰り返しながら進行し、歯冠、歯根、歯周組織が形成されていく.歯の発生には、上皮細胞と間葉系細胞との間でシグナル分子のやりとりをする上皮間葉系相互作用が必要となる.
もっとも、症例数が多い間葉系細胞を用いた細胞治療は、自家軟骨細胞移植である.関節軟骨の部分損傷に対し、軟骨細胞を損傷部に移植して修復する方法が報告されている.荷重がかからない部分の関節軟骨を採取し、軟骨細胞を培養して増殖させた後、骨膜で被覆した欠損部に移植する.既に数千例が行われており、産業界もこの分野に参入している.しかし、軟骨細胞の増殖能が限られていること、軟骨形成が完全でない場合があることより、問題点も指摘されている.
Tuesday, March 6, 2007
細胞移植の供給源としての間葉系幹細胞
Labels:
未分類
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
No comments:
Post a Comment