Thursday, March 15, 2007

Wikipediaに、骨髄間質細胞と間葉系幹細胞についての項目を書こうと思っています

骨髄間質細胞をご存じですか.骨髄間質細胞も間葉系幹細胞も英語にして略語ではMSC となる。この項目をWikipediaに掲載しようと思っています。少しずつ、書きためていってから、掲載しようと思っています。英語でみると既に項目として登録されているので、その訳でもいいんでしょうけど、自分でいろいろなところの文章を掲載しようと思っています。

 1970年代の後半,造血臓器である骨髄において造血機能が円滑に行われるためには,造血環境を支持する造血微小環境の存在が必須であることが明らかにされ,初めて骨髄間質が間を埋める細胞としてだけでなく機能的にも役に立っていることが示唆された.その後,この造血微小環境は試験管内の研究を中心として発展し,間質細胞のいくつもの不死化した細胞が得られた.それらは当初より,脂肪細胞への分化といった分化能は知られていたが,主に血液幹細胞と免疫細胞の支持能を有しているなどの造血への貢献で分類がなされ,より未分化血球細胞を維持する能力を有している間質細胞がもてはやされ,科学への貢献も多大なるものがあった.

 こんな中で,分化の研究は成体より単離した細胞の分化から,胎児性幹(ES)細胞や胎児性癌(EC)細胞といった未分化多能性幹細胞に関わる分化が注目を浴びた.これら未分化細胞は,生体内であらゆる細胞へ分化すると知られた.試験管内でもこの多分化能が次々と再現され,再生医療の供給源となる.一方,1990年頃に骨髄間質にも信じられない事実がみられた.造血微小環境の維持という高度の機能を有している骨髄間質細胞に,未分化細胞に特有な多分化能が存在するという事実がみられた.詳細には,成人から採取した骨髄間質細胞は間葉系由来であり,骨,軟骨,心筋,骨格筋,脂肪に分化し,心筋細胞に分化した際には拍動を始めるようになる.さらには胚葉を越えて,神経幹細胞のようにニューロンにまで分化することが明らかになってきた.

 こうした研究成果は,必然的に骨髄間質細胞の再生医療への応用という,極めて実際的な医療行為につなげる動きがみられた.特にヒトへの応用という観点からすると,1.骨髄細胞は,日常行われる骨髄穿刺液より容易に分離,培養することができるため,その利用が簡単であり,2.自己細胞を用いることができるため,拒否反応を避けることができ,また倫理的な問題が生じる余地も限られる.また,3.上述のごとく,間質細胞の多分化能を利用すれば,心筋,骨,軟骨組織への広範な組織への利用への可能性がひろがる.最後に一言付け加えれば,間葉系細胞であるがゆえに試験管内で増殖が盛んであり,大量の細胞を得ることが可能であり,遺伝子操作もしやすい.

 多分化能を有する間質細胞を機能性細胞に転換するには,発生学の知識を利用している.さらに現実的なことを言えば,発生学の知識にしたがって,機能性細胞を作成するしか方法が思い付かない.分化した細胞(核)の初期化における実際の誘導方法を明らかにすることは,細胞移植を考えるうえで現実的な課題であり,発生学の知識からスタートする.このような現実に則した面が,細胞移植・再生の研究が錬金術的と指摘される所以であると考える.指摘は指摘として,細胞の全能性を明らかにするには,ゲノムまたは核の「全能性」の分子機構を明らかにする必要があることは,間違いない.一方,このような分子機構を明らかにすることと同時に,細胞を別の細胞へと分化させる細胞転換を考えるうえでは,低分子化合物によるリセットで,細胞の「初期値」をクリアすることが最も効率が良いと感じていた.さらに言えば,「初期値」の情報をリセットするには,誘導剤,コーティング,培養方法だけでは不十分であると思っていた.その考えはどうも誤りであったようだ.



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