Friday, December 23, 2011

土地勘

最近、ブログを全く書かなくなったねと結構多くの方々から言われる。言われること自体は結構嬉しい。なぜかというと読まれているんだということを実感できるから。なぜ書かなくなったかというと、理由はそんなにないんだけど、「ブログを書く時間があるんだ!!」と言われることを恐れていることは事実。メールへの返事は全くない、依頼された仕事は終了していない、論文査読は終わっていない、委員会は出席していない、総務委員長の仕事はしていない、論文書いていない、FAXでの重要な問い合わせに対して返事が遅い、約束を守らない等々の理由がある。ブログを書いている時間があるなら、少なくともメールの返事をしろよという声が聞こえてくる。申し訳ないのだが、時々怖くなってメールを開けないことがある。メールのタイトルだけで、恐れおののく。メールは怖い。だいたい、幸せな気分にしてくれるメールは全くない。

それはともかく、細胞医療を支える幹細胞には、さまざまなレベルが存在する。たとえば、受精卵に近い全能性を有する胚性幹細胞がある一方、部分全能性を示す組織幹細胞では、骨髄に由来する間葉系幹細胞が知られている。骨髄由来の間葉系幹細胞は、生体マイクロデバイスとしての地位を築いてきたが、現在は骨髄のみならず胎盤、脂肪、月経血から単離されてきている。自分の残された(定年までの)年月を考えるとこの分野で集中してできることは限られている。結局、自分が行ってきたことと過去の方々が行ってきたことを元に、残りの8年の時間をデザインすることになる。8年と言っても現実的には5年もないのかなと感じている。自分の年齢を今朝完全に間違えていることを家族から指摘された。50歳だと思っていたけど、51歳でもうすぐ52歳なんだと。自分の年齢が分からなくなるなんて困ったもんだ。細胞医薬の有用性がどの疾患に対する再生医療に最も有効かという出口を見つけることは成功の確率を上げられる。残りの年月が少ない者には、最も実現可能性が高い分野にコミットするべきだし、もう少し言うと近くにいる患者のためになるほうがいい。それには、医療の知識、経験がある人に真剣にコミットして貰うことが好ましいとおり、これは経験に基づいた「土地勘」の有無が大事だ。自分は、自分ができることに集中して、後はその分野のプロにパスすることになる。自分で最後までやることはできないが、途中までやることだってとてもたいへんだ。皆様、ブログを書いているからって、皆様からのご指摘はちゃんとやっていますので、もう少しお待ちを。この年末年始は時間がたっぷりあって嬉しいな。おしかりを受けそうな仕事の対応だけでなくて、純粋に楽しめる映画や食事も行くぜ。

先日、Railwaysという映画を見た。富山県の話でした。おもしろかった。まわりは、60歳前後の方々ばかりで混んでいた。今まで使ってこなかったけど、どうも学割ならぬ年齢割引が既に使えるらしい。家族に朝指摘された。


Saturday, December 17, 2011

再生医療を骨髄移植や生殖補助医療と比較して(雑誌「再生医療」の巻頭言より)

 再生医療を推進するモデルはあるのかという問に対する答は、1.造血幹細胞移植(骨髄移植、臍帯血移植、末梢血移植)と 2. 生殖医療である。これは私の答えであるが、設問の是非はともかく、こんなものだろうと思っている。そこで、業界誌に自分の考えを記載したのが下の文章である。自分では自信作だったのに、あまり反響がない。ブログでも紹介している「iPS細胞におけるエピゲノム動態」は自信作でもあり反響もあった。業界誌に掲載した文章をそのままコピーペースとした。やはり、ブログで掲載しても反響ないのだろうかね。

 社会から暖かく迎えられる形で再生医療を推進したいといつも思っています。再生医療を考えるときに、自分自身に対し再生医療を理解させるために他の医療と比較しています。
 
 造血幹細胞移植は細胞移植そのものであり、現在の再生医療のお手本であります。再生医療と言っても問題ないのでしょうが、再生医療が将来の医療として紹介された時点で既に造血幹細胞移植が一般的な医療として定着していたことより、再生医療の範囲に入らなかったというところがあるのでしょう。実際に骨髄細胞を臓器・組織に直接注入したり、静注したりする一部の対象疾患に対しては再生医療としての扱いがなされています。造血幹細胞移植は骨髄移植から始まり40年を超える歴史があり、移植不全や移植片対宿主病という大きな問題があるにもかかわらず、一般の医療として定着し、この10年で臍帯血幹細胞移植そして末梢血幹細胞移植に発展し、さらに安全性の高い移植法が開発され続けています。この造血幹細胞移植では細胞はお薬としての扱いがなされていませんが、再生医療では一般に細胞は生物製剤として扱われ薬価がついていくことになります。細胞が生物製剤として扱われることに私はとてもポジティブにとらえており、その理由はその方が経済的な面から再生医療が進むと思っています。繰り返せば、細胞がお薬として扱われ対価が支払われることが健全だと思っています。もうひとつ気になっていることは、造血幹細胞移植では通常は同種なので免疫抑制剤を使用する点です。国立成育医療研究センターにて臓器移植を行っている方にお聞きすると免疫抑制剤を使用していても普通と変わらないと生活をおくることができるとのことですが、免疫抑制剤を使用するような臓器・組織移植や骨髄移植の対象疾患を見ると、相当な病気すなわち致死性疾患に適応されると考えた方が早いように思えます。造血幹細胞移植では、白血病を初めとした悪性腫瘍、リソソーム蓄積症、表皮水疱症といった疾病が対象になっています。免疫抑制剤を使用するわけであるから、免疫抑制剤による不利益を上回る利益がなくてはならないのでしょう。骨髄移植ほどの免疫抑制剤は使用しないだろうし、骨髄移植での移植片対宿主病といった副作用は細胞移植では存在しませんが、それでも同種の再生医療は重篤な疾患に限られるとういう考えが正しいのでしょう。少なくとも同種の再生医療を開始する当初は致死性疾患が対象疾患といってもいいかもしれません。
 
 再生医療の参考となるもうひとつの医療として、生殖補助医療を勉強しています。今ではクリニックを含めて多くの医療施設で受けられる生殖補助医療ですが、我が国では1983年に一人目の体外受精児が生まれ、1993年には顕微授精が始まりました。意外なほど歴史は浅く実験的医療と言われているにもかかわらず、既に生殖補助医療で生まれた赤ん坊の数は20万人であり、毎年2万人が生まれており、50人にひとりの割合です。感覚的に言えば、小学校のクラスにひとりは生殖補助医療で生まれた子どもがいるわけです。世界的には200万人程度が生まれています。受精胚は人間そのものであることより再生医療とは言われませんが、お母様から卵子を、お父様から精子を採取し、生体外での受精・培養、母体への移植という過程は再生医療とたいへん良く似ています。畜産繁殖での技術を人間に応用したレベルの高い技術であるものの、安全性が確認されている訳ではなく、現在もコホート研究が行われ、その安全性検証が行われています。受精卵の凍結保存技術のみならず、現在は卵子及び卵巣の凍結保存技術が開発されつつあり、凍結技術のみならず技術革新は眼を見張るものがあります。また、不妊治療助成として、都道府県より1年に1回15万円、2回までとし、通算5年支給されています。
 
 骨髄移植も生殖補助医療も社会に貢献したことよりノーベル賞がその開発者に授与されていますが、自分の子供が成長する頃、再生医療が同じように発展し、社会に暖かく迎えられていることを願っています。
 


Friday, December 9, 2011

ボイリング法---名古屋でやっていたぞ!!

名古屋に、プラズミド・コンストラクトの指導をしてくれた方がいる。先日、訪れたら、びっくり。自分でプラズミドを精製していた。なんと、ボイリング法。俺だってやったことないんじゃないか。アルカリ法だよね。いや、アルカリ法なんてやっている人なんていやしない。みんなキットだ。この大事な話は、また後で。

コンロの上に鍋があって、その中に水があって、ボイルするんだそうだ。一分間。ええっ!!

こういう人って強いよね。不況にも。戦いにも。そう、思った。


Sunday, December 4, 2011

ゲノム指針

ゲノム指針攻略本が欲しいって。

意見書をまとめようっていう組織もあるとのこと。


セミナー欠席で残念。

最近ブログの更新がないんだよね。複数人の方々からご指摘を受けた。二つの理由があって、ひとつは「研究費申請を優先している。」、ふたつめは「読む方が多くなって、臆病になっている。」。もうひとつあった。テレビ好きで、録画してあるテレビを一生懸命視聴している。

以下のセミナーに参加できなかった。とても残念。

日時: 平成23年11月30日(水) 15:00~16:00
 
場所: 研究所2階セミナールーム
 
演者: 自治医科大学 医学部 薬理学講座 環境毒性学部門・助教
    三瀬 名丹先生
 
演題: ES細胞とEG細胞の相似点と相違点から考えるエピジェネティクス制御
 
要旨:胚性幹(ES)細胞は胚盤胞期胚に由来する幹細胞である。一方、胚性生殖(EG)細胞は形態的にはES細胞によく似ているが、発生中の胚の始原生殖細胞(PGC)に由来する。両親から受け継いだインプリント遺伝子のDNAメチル化が消去された12日目胚のPGCからもEG細胞は樹立できるが、このEG細胞は生殖系列に寄与できない。我々は、様々な遺伝子型を持つES細胞と、12日目胚のPGCからEG細胞を新規に樹立し、その発現解析とDNAメチル化を中心にエピジェネティックな解析を行ってきた。発現プロファイルや繰り返し配列におけるDNAのメチル化からはES細胞とEG細胞は区別できなかったが、インプリント遺伝子群のメチル化については、両者で全く異なり、ES細胞が体細胞型だったのに対して、EG細胞では完全にメチル化が失われていた。こういった、ES細胞とEG細胞における相似点と相違点の解析から、DNAメチル化の制御について議論したい。


Sunday, November 20, 2011

知らなかったこと "Transfection" and "Transduction"

学生時代を含めて全然知らなくて、間違いを指摘されたこと。反省したい。でも、他にもたくさん間違って使用しているような気がするな。どうやったら、正確な語彙を学べるのかな。

The technically distinct terms "Transfection" and"Transduction" are very loosely used throughout the manuscript.Please note that when nucleic acids are introduced to cells through viral infection, the method is referred as transduction.



Wikipedia (http://en.wikipedia.org/wiki/Cell_culture#Transfection_and_transduction)より

Transfection and transduction

Another common method for manipulating cells involves the introduction of foreign DNA by transfection. This is often performed to cause cells to express a protein of interest. More recently, the transfection of RNAi constructs have been realized as a convenient mechanism for suppressing the expression of a particular gene/protein. DNA can also be inserted into cells using viruses, in methods referred to as transduction, infection or transformation. Viruses, as parasitic agents, are well suited to introducing DNA into cells, as this is a part of their normal course of reproduction.




Tuesday, November 15, 2011

4人みたい。

臨床試験は二人だと思っていたけど、日本語の新聞だと4人みたい。ジェロンの話。

「これまで4人に行われた治験で、効果がみられたとの結果は得られていないという。また米紙ワシントン・ポストは「希望を持たせておいて金銭上の理由でやめるとはひどい」という患者団体側の声を紹介している。」


Geron社は、ヒトES 細胞の臨床試験をやめるみたい

Geron社は、ヒトES 細胞の臨床試験をやめるみたい

ジェロン社は、幹細胞ビジネスから完全撤退するみたい。 John A. Scarlett, the chief executive of Geronは、ウィスコンシン大学からのES 細胞を使用している。このES 細胞が発表されたのは、1998年頃かな。2010年にFDAから治験届が受理されている。カリフォルニア州から25億円程度のお金を借りて、6億円くらい返したみたい。脊損患者2例に投与したけど、効果がなかったようだ。安全性に問題はないけど、有効性が示せなかったみたい。2例のうち、一例でも効けば事態は変わっただろうに。66人クビにしているみたい。会社の40%近くをクビにして、抗癌剤に選択・集中するみたい。ジェロン社は幹細胞ビジネスを売るかライセンシングしたいみたいだけど、買ってくれる企業があるといいな。今はACT社が唯一のES細胞を薬として売ろうと考えている会社だ。ACT社の首脳陣は、株主からのプレッシャーをはねのけるのに時間と労力が必要となってくるだろう。StemCells Inc. は中絶胎児からの神経幹細胞をして臨床試験しているけど、持ってくれるといいな。


Kさん、貴重な情報をありがとう。また、いろいろと教えてね。


Sunday, October 16, 2011

宮戸さんの論文がNature Japanのウェブで紹介。

宮戸さん、おめでとう!!!!

これって、宮戸構造体(Exosome)の話とは少々、ずれるんだけど、実験デザインが面白いんだ。






β-カテニンは、細胞接着から細胞融合への移行を調節する分子スイッチである


β-catenin is a molecular switch that regulates transition of cell-cell adhesion to fusion

doi: 10.1038/srep00068 (2011)

受精によって精子と卵が合体する際には、細胞膜が接着し、融合するが、精子と卵の細胞接着を調節する因子についてはほとんど知られていない。今回我々は、精子と卵の細胞接着におけるβ-カテニンの役割を詳しく調べた。生化学的解析により、E-カドヘリンとβ-カテニンが卵内で、また精子内でも複合体を形成することが判明した。β-カテニン欠損卵を精子と受精させると、精子と卵の細胞接着がうまく起こらない。さらに、精子と卵の細胞接着が完了した後は、精子頭部や卵の精子付着部位でのβ-カテニンの発現が減少する。ユビキチン活性化酵素の阻害剤であるUBE1-41はβ-カテニンの分解を阻害し、また野生型卵の精子との融合能力を低下させた(一方、β-カテニン欠損卵では精子との融合能力の低下は起こらなかった)。これらの結果は、β-カテニンが細胞膜の接着にかかわるだけでなく、受精に伴う膜融合への移行にもかかわっていることを示している。

竹澤 侑希1*, 吉田 恵一1*, 宮戸 健二1, 佐藤 正宏2, 中村 彰宏1, 河野 菜摘子1, 榊原 圭一1, 近藤 喬彦1, 原田 裕一郎1, 大浪 尚子1, 金井 誠也1, 宮戸 真美1, 斉藤 英和3, 高橋 祐司3, 阿久津 英憲1 & 梅澤 明弘1

  1. 独立行政法人 国立成育医療研究センター 生殖・細胞医療研究部
  2. 鹿児島大学 フロンティアサイエンス研究推進センター
  3. 独立行政法人 国立成育医療研究センター
    *These authors equally contributed to this work




Wednesday, June 29, 2011

Web-Based Genome-Wide Association Study

Web-Based Genome-Wide Association Study Identifies Two Novel Loci and a Substantial Genetic Component for Parkinson's Disease

上のタイトルの論文がたいへんに読まれている。パーキンソン病は一般に環境因子が強いとされているが、遺伝要因について、web上でのケース・コントロール・スタディを行ったようだ。知識がないので、一言で言えば、結果の評価を(私は)できない。しかし、本当であったとしたら、嘘だとしたら、と両方の面から考えると、いろいろと考えさせる論文である。


Aperioでアップロード

SecondSlide 

umezawa @  nch
いつもの6文字


Sunday, June 26, 2011

讀賣新聞の記事

iPS細胞についての、本日の讀賣新聞「暮らし」欄での記事。

研究室の仲間が日曜日なのにコピーして送ってくれました。ありがとう。讀賣新聞も宅配してもらっているけどね、すごく助かるよ。iPS細胞のエピジェネティクスに関する記事は、最後のところに。字が小さいけど、読めると嬉しい。







Tuesday, June 21, 2011

PLoS Geneticsで最も読まれている論文

本日時点で、我々の論文がPLoS Geneticsで最も読まれている論文の一位にランクされている。共著者達の解析によると、読まれている回数はウェブに掲載された時点よりもPubMedに掲載された時点から急上昇しているので、今月いっぱいは一位を確保できる!!とのこと。まあ、瞬間風速であることは間違いないけど、読まれていること自体はとてもいいぞ!!!! 以下に一位になった時点の証拠を貼り付けます。一番上の論文ね。







6月20日の日本経済新聞


iPS細胞樹立過程のエピジェネティクスの波には、自分自身も驚いている。この研究結果から予想されることは、どんな細胞からでもiPS細胞は作製可能であること。また、その作製効率は、元細胞のエピジェネティクスに影響されることは否定しないが大きく変わらない。この2点。


国立成育医療研、iPS細胞の異常を解明 

2011/6/20 0:35
日本経済新聞 電子版



 国立成育医療研究センターの梅沢明弘再生医療センター長らは、ヒトの新型万能細胞(iPS細胞)で「メチル化」と呼ぶ遺伝子調節機能の異常が起きる仕組みを明らかにした。メチル化はすべての細胞で一様には起きないと判明。もとの細胞のメチル化は、そこから作ったiPS細胞には引き継がれないことも分かった。再生医療に必要な安全なiPS細胞作りなどに役立つ成果だ。

 米科学誌プロス・ジェネティクス(電子版)に掲載され。。。 以下は会員のみが読めるそうな。




レクチンアレイでiPS細胞の糖鎖を研究している三つの報告

 一つ目は、言わずとしれた我々の論文である。iPS細胞のIdentityを決めるだけでなくて、Purityだって分かるし、Contaminationだって分かるかも。
タイトルは、

Lectin microarray analysis of pluripotent and multipotent stem cells.

表紙がとてもきれいな雑誌の巻頭論文となっている。表紙だけでも一見の価値があるよ。2011年の幕開け論文。以下のサイトから読むことができます。

 二つ目は、浅島先生、堀本先生の論文である。図がelegantにそして詳細にまとまっていて、勉強するのに一番いいと思います。

 三つ目は、今年の国際幹細胞学会での演題。西原教授が教授してくれました。下の方に貼り付けます。サンディエゴのチームと京都大学のチームの発表。

 この三つとも内容的にはあんまり変わらないけど、包括的糖鎖解析というアプローチが一般化するのを予感させる。


2220 - IDENTIFICATION OF HIGHLYSPECIFIC LECTIN BIOMARKERS FOR ISOLATION OF HUMAN PLURIPOTENT STEM CELLS

Wang, Yu-Chieh1,Nakagawa, Masato2, Garitaonandia, Ibon1, Slavin, Ileana1,Altun, Gulsah1, Lacharite, Robert M.1, Nazor, KristopherL.1, Tran, Ha T.1, Leonardo, Trevor R.1,Peterson, Suzanne E.1, Laurent, Louise C.3, Yamanaka,Shinya2, Loring, Jeanne F.1

1Dept of Chemical Physiology, Scripps ResearchInstitute, La Jolla, CA, USA, 2Center for iPS Cell Research andApplication (CiRA), Kyoto University, Kyoto, Japan, 3Dept ofReproductive Medicine, University of California, San Diego, La Jolla, CA, USA

Rapid and reliable methods for determining pluripotency in humanpluripotent stem cell (hPSC) populations are critically needed, not only forquality control in basic research but also for purification of differentiatedhPSCs intended for clinical use. Antibodies targeting cell surface antigens arecommonly used to identify pluripotent cells in preparations of viable cells.These pluripotency-associated antigens are often glycoproteins or glycolipids,suggesting that unique glycosylation patterns potentially recognized byspecific lectins may be a hallmark of pluripotency. Using protein microarrayscontaining 45 different lectins, we discovered unique glycosylation patternsand distinctive lectin-binding signatures that distinguish pluripotent cellsfrom non-pluripotent cells, identified by analysis of glycoproteins extractedfrom 26 hPSC and 15 differentiated cell samples. As few as 15 lectins weresufficient to accurately distinguish hPSCs from non-pluripotent cell types.These highly specific biomarkers were shared by all 12 human embryonic stemcell and 14 human induced pluripotent stem cell samples examined, regardless ofthe method of derivation, the culture condition, the cell type of origin, andthe reprogramming strategy used. We then demonstrated the utility of specificlectins as tools for identification and isolation of hPSCs from mixed cellpopulations. Lectin-mediated fluorescence staining showed extremely highconcordance with staining for validated pluripotency-associated transcriptionfactors, such as OCT4/POU5F1. In addition, we were able to separate a 1:1mixture of hPSCs:non-pluripotent cells into two cell populations that were 90%pure using lections conjugated to magnetic beads. Gene expression analysisusing cDNA microarrays suggested the differential expression offucosyltransferases and sialyltransferases may be the mechanism underlying theassociation between pluripotency and specific patterns of proteinglycosylation. Our results demonstrate that protein glycosylation differsconsiderably between pluripotent and non-pluripotent cells, and suggest thatregulation of pluripotency-associated glycoproteins may be mediated bydifferential gene expression of glycosyltransferases. Specific lectins thatrecognize the pluripotency-associated glycoproteins are potentially usefulbiomarkers that can be used to monitor pluripotency in stem cell populationsand separate pluripotent and non-pluripotent cell populations for both researchand therapeutic purposes.



Sunday, June 12, 2011

今井眞一郎氏 NHKスペシャル出演 長生き遺伝子の発見者

今日のNHKスペシャルは、長生き遺伝子。

長生き遺伝子って言えば、その昔、古い校舎の4階で、同級生が教授から細胞の長生き遺伝子を見つけろという指示を貰っていたっけ。1984年の話です。正直言って、当時はどうするんだろうと思っていた。だいたい、どうやって見つけりゃいいんだっていう感じだった。最終的には、ブラックバーン博士が細胞の長生き遺伝子を見つけてノーベル賞をとった。その当時、学生だった今井眞一郎氏は、朝から晩まで実験して、細胞の長生きの指標(スケールっていうのかなマーカーっていうのかな)を発見し、国際誌に発表しました。すんごい努力で、いろんなものをかなぐり捨てて、科学に没頭していました。

その後、今井眞一郎氏は25年間米国を中心に活躍して、個体の長生き遺伝子を発見し、寿命延長を実現しようとしています。細胞だけじゃなく、個体ですよ。すごいよね。その話が今日のNHKスペシャル。良い意味でも、そうでない意味でも話題になるんじゃないかな。

娘と一緒にNHKスペシャルを見て、このおじさんはお友達だよと言って自慢し、寝ていた妻を起こして見させました。今井眞一郎氏は、「光陰矢のごとし、学成りがたし」と言ってがんばっていましたが、画面上では若々しかったです。さすがに、老化の科学者だけあります。秘密の薬を飲んでいるのかもしれません。今度、個人的に教授いただこうかと思います。残念ながら、このブログの読者にはまだ教えられないと思いますけど、僕の記憶力が良くなったら、ああ今井さんから情報を貰っているなと思ってください。

そんなことを思っていたら、米国で活躍している今井教授から電話を貰いました。子どもには、「ほら、さっきのテレビに出演していた教授は友達だろう。」と伝え、父親の株が上がりました。今井教授は、この8月と12月に一時帰国するそうです。運の良い方は講演を聴くことができるかもしれません。

長生き遺伝子にかかわる初めての論文は以下です。参考まで。

Imai S, Armstrong CM, Kaeberlein M, Guarente L. Transcriptional silencing and longevity protein Sir2 is an NAD-dependent histone deacetylase. Nature. 2000 Feb 17;403(6771):795-800.

そう言えば、4年以上前、中等部で今井教授からスライドを借りて、寿命に関する特別講義をしたけど、みんな分からなそうな感じだったな。今日のNHKスペシャルみたいにするのは、なかなか難しいよね。あーあ。当時の中学生も今は大学生。その時の話だって思い出してくれた人はいないかな。医学部の学生になった人もいるだろうしな。








Thursday, June 9, 2011

2011年6月9日 読売新聞 (大阪版のみ)コメント

 Natureのデータを見る限り、Glis1はmaternal geneであり、zygotic gene activationに関わらないと思われる。受精卵での発現も卵で残ったmRNAが検出されたのだろう。議論に書かれていたように、Nuclear transferにおける重要因子であると思われる。Nuclear transferにおいて、Glis1は十分条件ではないかもしれないが、必要条件ではあるだろう。十分条件だったら、すごいね。論文では著者らはGlis1をpro-reprogramming factorと考えているが、内部細胞塊(ESと同等ではないが近い)を形成する際のreprogramming factorと言えるかも。着床前期胚では、リプログラミングは生じていると言えるのだろうか。そんなふうに考えたことが、讀賣新聞(大阪版)の以下のコメントにつながる。

 論文中でもうひとつ面白いことはGlis1はES細胞では発現しておらず、ES細胞に導入すると増殖を阻害すること。

 iPS細胞は、皮膚などの細胞に3、4種類の遺伝子を組み込んで作る。がん遺伝子を含む4種類の遺伝子を使えば効率よく作れるが、がん化の恐れが高まる。がん遺伝子を除くと、安全性は改善するものの作製効率は100分の1以下になり、作製効率と安全性の両立が課題となっていた。 様々な組織の細胞に変化できるiPS細胞(新型万能細胞)で、作製効率と安全性を大幅に向上させることに、京都大の山中伸弥教授と前川桃子助教らのグループが成功した。作製にがん遺伝子を使わない方法で、がん化の危険性が少ないうえ、iPS細胞になり損ねた危険な細胞も排除されるという。9日付の英科学誌ネイチャーで... (途中略)

 山中教授は「iPS細胞の実用化にとって、非常に有利な性質を兼ね備えた『魔法の遺伝子』だ」と話している。
 国立成育医療研究センターの梅澤明弘・再生医療センター長の話「卵子で働く『母なる遺伝子』がカギになっており、がん遺伝子と違って安全性が格段によくなるのもうなずける。生命の誕生の研究にも影響を与えるだろう」
(2011年6月9日  読売新聞)


Tuesday, June 7, 2011

日本経済新聞社2011年6月6日


西野氏の論文から導き出せることをたくさん説明したんだけどね。説明不足だったな。一点を説明し続ければ良かったかな。反省!!

「iPSになる細胞は一部」 東北大が定説に異論
日本経済新聞社2011年6月6日
........
過去の実験からは「どんな細胞でも基本的にiPS細胞になれる」(国立成育医療研究センターの梅沢明弘・再生医療センター長)と考える研究者が多い。


Sunday, June 5, 2011

細胞でつくった成育マーク 阿久津氏による (細胞は本物、色は着色)

阿久津氏が、大日本印刷の基材を使用して作製した細胞による成育のシンボルマーク









Sunday, May 29, 2011

西野氏のiPSメチル化動態にかかる論文が掲載されました

iPSメチル化動態に関する、西野さんの論文がPLoS Geneticsに掲載されました。内容はiPS樹立にかかわるメカニズム解明であり、山中氏が提唱した2つのモデルであるエリートモデルと確率モデル(Nature, 460:49, 2009)のうち、確率モデルが正しいことをエピジェネティクス動態から明らかにしました。iPS細胞になれるかなれないかは、確率的メチル化動態によって決まるということです。エリート細胞のみがiPS細胞になれる訳ではなく、確率によって細胞リプログラミングの運命は左右されることになります。山中4因子に依存しないフェーズでメチル化ダイナミズムは継続し、次々と新たなゲノム・メチル化を生じ、その中で偶然iPS細胞になれるメチル化を生じた細胞のみがiPS細胞になります。また、その波は培養を続けるとだんだんと小さくなって最終的には落ち着き、強烈なメチル化ダイナミズムは跡形もなくなっています。

今回の論文タイトルは、「DNA methylation dynamics in human induced pluripotent stem cells over time」であります。投稿したときは、 Periodic aberrant DNA hyper-methylation in human induced pluripotent stem cells in long-term cultivationであったのですが、内容は全く逆なのに同じようなタイトル(「 Hotspots of aberrant epigenomic reprogramming in human ind
uced pluripotent stem cells」と、「Reference Maps of Human ES and iPS Cell Variation Enable High-Throughput Characterization of Pluripotent Cell Lines」)の論文が今年1月にNature誌、Cell誌に掲載され新聞を賑わせたので西野氏と相談してタイトルを変更しました。それらの論文に書かれているエピジェネティク・リプログラミングにホットスポットはありませんし、親の形質は残ったように見えるだけで実際はほとんど残りません。

 Supplementary materialsは多いので、以下のサイトからダウンロードしていただければ助かります。
http://www.plosgenetics.org/article/info:doi/10.1371/journal.pgen.1002085
もうこの一週間で1130回もダウンロードされているようです。PLoS Genetics のMost visited siteの第二位です。読まれていること自体はたいへんに嬉しいことです。






Thursday, May 26, 2011

K (P)

患者さん (For patients)
国民     (For people)
国民益      (For profit)
公衆衛生益  (For public health)


Monday, May 23, 2011

ddd

In β cells (Zhou et al., 2008) and retinal cells (Osakada et al., 2009), direct reprogramming is achieved with hepatocytes and iris cells, respectively, that are developmentally close to the generated cells. Successful reprogramming with other somatic cells for parental cells indicates that the conversion is indeed reprogramming. Auto-regulatory feedback and feed forward activation of downstream transcriptional regulators reinforce the expression of important cell-fate-determining genes and help to further stabilize the induced  transcriptional program. Robust changes in transcriptional activity can be explained by genome-wide adjustments of repressive and active epigenetic features such as DNA methylation, histone modifications and changes ofchromatin remodeling complexes that further stabilize the new transcriptional network (Zhou et al., 2008). It is possible that certain subpopulations of cells are "primed" to respond to these factors, depending on their pre-existing transcriptional or epigenetic states (Yamanaka, 2009). 


Friday, May 13, 2011

医療法か薬事法か ---

医療法で考えると、骨髄移植や臍帯血移植が参考例になるのではないか。ほとんどの医療費は、患者の無菌室や骨髄アベレーションに付随するものに使用される。もし、今の再生医療もこのスキームでいけば、臍帯血や骨髄のバンクのような活動をしなくてはならない。自己細胞でも一緒と考えられる。

薬事法でいけば、細胞自体に薬価がつく可能性があるから、医療費としてお金という価値が新たにでてくる。

そういった観点からすると、自己細胞移植であったとしても、薬として進めていった方が、患者を含めた医療界の利益が高いと考えられる。

上記の考え方として、異なる進め方の代表は、生殖補助医療であると思っている。

再生医療を考えるときに、造血幹細胞移植(骨髄、臍帯血、末梢血)と生殖補助医療と比較していくと、とても分かりやすくなる。これを再生医療学会誌の巻頭言に(読者に分かりやすく)書けるだろうか。書けないかもしれない。



別のメモ:

 再生医療を行うっていう観点だけからすると、医療法で十分。しかし、医療は継続しなくてはいけないし、それ自体で利益を生み出さなくてはいけない。その観点からすると薬事法だ。
 一方、細胞の準備とか全部を院内製剤という観点からすると、薬事法として、薬価を付けないととてもやっていけない。自己細胞でも、医療法にしたら、手術代だけしかつかないので、どの企業も手伝ってくれないかも。手伝ったとしたら、そのCPC運営にかかる費用を病院に請求できるのか。できないだろう。

 再生医療を行うっていう観点から見ても、薬事法で行くことは正しい選択である(可能性がある)。

 自己細胞再生医療法を立法しようとする場合は、どうすりゃいいんだ。自己細胞なんだから薬事法とのからみがあるが、どっちにしろ利益を生み出すような仕組みにしなくては、ダメと言うことは間違いない。


Friday, April 29, 2011

病理学会なう

病理学会で、発表した。ヒトES細胞の造腫瘍性について、未分化ES細胞を移植することに関し、質問を受けた。最終生産物(ES細胞製品)を移植するべきである。原材料を移植しても意味がない。山口大学教授と京都大学教授から、これで同じことを言われたことになる。ご指摘の通りなのです。ただ、こちらは、ご指摘の通りに行っているつもりでもあるのです。


Wednesday, April 20, 2011

Monday, April 18, 2011

ヒトES細胞の標準化 Identity 同一性

Guideline on human cell-based medicinal products by EMEA
London, 11 January 2007,
Doc. Ref. EMEA/CHMP/410869/2006

Identity
1. Cellular component
1.1 Phenotypic profiles
1.1.1 Relevant markers 
1.1.1.1 Gene expression
Oct-4/3, Nanog, Sox2
1.1.1.2 Biochemical activity
Alkaline phosphatase
1.1.1.3 Antigen presentation
Tra-1-60, Tra-1-81, 6E2, SSEA-3/4
1.1.1.4 Protein expression
Oct-4/3, Nanog, Sox2, E-cadherin: Present
T, Pax6, AFP: absent.
1.1.1.4 Response to exogenous stimuli (FGF dependence)
1.1.1.5 Capability to produce measurable molecules
1.1.2 Morphology
1.1.3 Growth (Population doubling time: up to 36 h)
1.2 Genotypic profiles
1.2.1Short tandem repeat.
1.2.2 HLA
1.2.3 Karyotype
1.2.3 Other genetic markers

2. Differentiation
2.1 in vitro differentiation (EB formation, etc)
2.2 Teratoma formation

3. Contamination
3.1 Bacteria, fungus, virus, yeast, mycoplasma.
3.2 Cells


他 参考文献
Carpenter, MK, et al., Developing safe therapies from pluripotent stem cells, Nat Biotechnol, 27(7):606, 2009.

胚性幹(ES)細胞臨床指針作成に向けた課題検討のための予備研究、平成19年度 総括研究報告書、主任研究者 中内啓光 分担研究者 梅澤明弘 p155
 
日本におけるヒトES、iPS細胞研究標準化:その1、古江ー楠田 美保、Tiss. Cult. Res. Commun. 27:139-147, 2008.

Andrews, PW, et al., The International Stem Cell Initiative: toward benchmarks for human embryonic stem cell lines. Nat Biotechnol, 23: 795, 2005.

Adewumi, O., et al., Characterization and culture of human embryonic stem cell lines by the International Stem Cell Initiative. Nat Biotechnol, 2007.


Friday, April 15, 2011

緑膿菌を使用した蛋白輸送


PLoS One. 2011 Jan 27;6(1):e16465.

Bacterial delivery of nuclear proteins into pluripotent and differentiated cells.

Department of Molecular Genetics and Microbiology, College of Medicine, University of Florida, Gainesville, Florida, United States of America.

Abstract

Numerous Gram negative pathogens possess a type III secretion system (T3SS) which allows them to inject virulent proteins directly into the eukaryotic cell cytoplasm. Injection of these proteins is dependent on a variable secretion signal sequence. In this study, we utilized the N-terminal secretion signal sequence of Pseudomonas aeruginosa exotoxin ExoS to translocate Cre recombinase containing a nuclear localization sequence (Cre-NLS). Transient exposure of human sarcoma cell line, containing Cre-dependent lacZ reporter, resulted in efficient recombination in the host chromosome, indicating that the bacterially delivered protein was not only efficiently localized to the nucleus but also retained its biological function. Using this system, we also illustrate the ability of P. aeruginosa to infect mouse embryonic stem cells (mESC) and the susceptibility of these cells to bacterially delivered Cre-NLS. A single two-hour infection caused as high as 30% of the mESC reporter cells to undergo loxP mediated chromosomal DNA recombination. A simple antibiotic treatment completely eliminated the bacterial cells following the delivery, while the use of an engineered mutant strain greatly reduced cytotoxicity. Utility of the system was demonstrated by delivery of the Cre-NLS to induced pluripotent stem cells to excise the floxed oncogenic nuclear reprogramming cassette. These results validate the use of T3SS for the delivery of transcription factors for the purpose of cellular reprogramming.


同種の細胞移植って

現在行われている同種の細胞移植って。。。

骨髄移植---そもそも致死性の疾患に対して行われる。
脊髄損傷
age-relatedmacular degeneration

相当な病気、すなわち致死性疾患にのみ適応されると考えた方が早い。なんせ、免疫抑制剤を使用するわけであるから、それ以上の利益がなくてはならない。骨髄移植ほどの免疫抑制剤は使用しないだろうし、骨髄移植でのGvHDといった副作用は、細胞移植では存在しないが、それでも同種の細胞医療は重篤な疾患に限られるとういう考えが正しいだろう。致死性疾患といってもいいかもしれない。


骨髄間質が臨床応用された疾病

その昔、ブログで書いたかもしれない。

1. GvHD
2. Metachromatic leukodystrophy
3. 心筋への移植
4. 脳虚血
5. Scarless wound healing
6. 虚血下肢


西野論文タイトル


 論文タイトルは、「DNA methylation dynamics in human induced pluripotent stem cells over time」である。投稿したときは、 Periodic aberrant DNA hyper-methylation in human induced pluripotent stem cells in long-term cultivationであったのだが、内容は全く逆なのに同じようなタイトル( Hotspots of aberrant epigenomic reprogramming in human induced pluripotent stem cellsというタイトルの雑誌と、Reference Maps of Human ES and iPS Cell Variation Enable High-Throughput Characterization of Pluripotent Cell Linesというタイトル)の論文がCell誌やNature誌に掲載されたので西野氏と相談してタイトルを変更した。


西野氏が、「iPS作製の秘密は、山中氏の確率モデルによって説明できる」ことを論文で発表する


山中氏が、Nature誌 (Nature, 460:49, 2009)にiPS細胞作製メカニズムに2つのモデルを提唱した。確率モデルとエリートモデルだ。宮崎大学の西野光一郎准教授は、成育の研究室にいたときに、確率モデルが正しいことをエピジェネティクス動態から証明した。エリートモデルでは、どの細胞もがiPS細胞になれるわけではなく、細胞集団の中でiPS細胞になることを潜在的に運命づけられた「エリート」細胞のみがiPS細胞に変身できる。一方、確率モデルでは、細胞集団のどの細胞もiPS細胞になることができ、iPS細胞になれるかなれないかは、メチル化の波が次々と生じることによっておき、そのメチル化部位は細胞ごとに全く異なり、確率的であった。運命づけられている訳ではなく、確率によって細胞の運命は左右されることになる。

 細かいことをいうと、西野氏の実験は山中4因子がサイレンシングされ、影響がなくなってからの話である。すなわち、山中4因子に依存しないフェーズでメチル化ダイナミズムが継続し、次々と新たなゲノム・メチル化を生じ、その中で偶然iPS細胞になれる形のメチル化を生じた細胞のみがiPS細胞になるということだ。また、その波は培養を続けるとだんだんと小さくなって最終的にはES細胞のように落ち着く。落ち着いてしまった後には、強烈なメチル化ダイナミズムは跡形もなくなっている。ゲノムメチル化を経時的に見ていった西野氏の努力と緻密さからこの発見はなされたと思う。

 この結果は、PLoS Geneticsに掲載予定だ。タイトルは掲載されてから紹介します。

Nishino's studies favor the stochastic model of theYamanaka model (Nature, 460:49, 2009) rather than the elite model. 


iPSの同一性

iPS細胞の標準細胞と言えば、最初に報告したという理由で、
201B由来のiPS細胞で、理化学研究所に寄託されている細胞って言うことになるのであろう。
201B7; Takahashi K, et al. Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-72.
253G1; Nakagawa M, et al.Nat Biotechnol. 2008 Jan;26(1):101-6.

Cell, 131:861, 2007の図から追っていこう。
iPS細胞であると言う証明は以下の項目を決めておく必要があるとされる(のか)。また、iPS細胞の同一性を言うためには、以下の項目を押さえる必要があるのだろう。

1.形態
2.免疫組織化学(SSEA-3, SSEA-4, Tra-1-60, Tra-1-81, Tra-2-49/6E)
3.RT-PCRとウェスタン(内在Oct-4/3, 内在Sox2, Nanog等)
4.プローモータ領域のメチル化(Oct-4/3, nanog, Rex1) メチル化率が半分以下か。
5.不死化
6.EB形成による分化
7.  奇形腫形成

方法も同様に論文と同じものとするべきだろう。奇形腫形成は、SCIDマウスを論文では使用しているが Balb/c nu/nuでも問題ないと思う。

一方、ES細胞については、Rao氏らがES細胞の標準化を進めているわけであるから、それに従うのが一番である。世界的に認められているわけだからね。結論から言えば、iPS細胞と同じなのだろうが、具体的に記述しなくてはいけないだろう。







Immunocytochemistry
Tar-1-60
Tar-1-81
SSEA-3/4
Oct-4/3

Methylation pattern of the promoters of the Oct-4/3, Nanog, and Sox-2 genes

Morphology

Teratoma formation at 4 weeks after implantation into nude mice


Sunday, March 27, 2011

標準化・標準株

細菌なんかの規格化には、測定方法は問わない(らしい)。DNA配列を決めていく。標準化にはISOとかJIS規格といったものがある(らしい)。

細胞に関しても、同様に規格が決められることになる。

カビ何かだと、形態も重要で官能的判断として主観がある(らしい)。一方、絶対的塩基配列から、どれだけ相同かを決めることができ、ある株からの違いを塩基配列で2%で新種であると決めている。

iPS細胞の規格については、糖鎖、メチル化、遺伝子発現等で決めることができるが、相対値でかつ再現性よく「iPS細胞であるとかない」とかを言えなくてはいけない。

山中氏が original reprogrammerであるので、山中の標準細胞といったものがあり、それが規格のDe factになる。最初の論文がDe factになる。ちょっと分かりやすく言えば、ある数値から離れたらiPSと言わないようにしようというのが、規格設定と言うことになる。


規格

細胞の規格を議論するときに、鉛筆の例を出してくれた。

鉛筆の芯にかかる固さは、炭素の含有量で決まっていて、4B, 3B, 2B, B, HB, H, 2Hとか決まっている。定量的にも定性的にも区切りをつけて、誰でも開発者になったときに便利に鉛筆の芯に関する固さを決めることができる。


寄託

学問上で有用な細胞に関して、医薬基盤研や理化学研究所が寄託先になっている。

産業上有用なものは、Biological Resource Centerとしてナイトがやっている(らしい)。微生物、古細菌、糸状菌、酵母、DNAクローン(大腸菌)がそれにあたる。微生物に関しては、寄託を受けるときに分類する(らしい)。16S rRNAの配列を見て、同等性評価(分類)、標準化(基準株:タイプストレイン)をする(らしい)。


骨髄間質細胞

骨髄間質細胞に関するブログなのである。骨髄間質細胞にかかる記述が少ない。

研究はつづけており、いまだに組織の虚血に対して有効であると思っている。Scarless wound healingでもやってきたが、虚血下肢に対する前臨床研究の成果があるので、論文上で勉強してみよう。


Saturday, March 19, 2011

マウス、ブタ、ヒト細胞の細胞培養での増え方。

先日、この3月で修士を取得して、卒業する学生がしてくれた研究成果をT氏とともにうかがった。一言でいると、ブタ細胞はヒト細胞より増えにくい。ブタ細胞はマウスよりは増えやすい。それで、結論は、ヒト細胞が一番よく増える。培養条件がそのようになっていると考えるのか、細胞に内在する性質によるものと考えるのは、古い議論なのでここではやめる。

 マウスとヒト細胞における事実は、1980年代に報告されているので、よく知られた事実である。再生医療の前臨床研究で、ブタを利用する場合で、細胞の増えやすさが気になった。


Sunday, March 13, 2011

大きな機器の地震対策

今回の地震で大きな機器が移動した。机の上にあるものは、落ちたらたいへんなことだ。人に触れれば大けがになるし、死亡する可能性もある。机に対する地震対策は万全であったように感じる一方、机の上にある機器を大きなものや重いものについては固定する工夫が必要だ。余震も続く訳だから、思いついたので今から研究室に行って、対策をとることにしよう。


地震による研究室への影響

私どもの研究室は、7階にあります。建物全体が耐震構造になっているということですが、ものすごい揺れでした。窒素タンクとガラス棚が倒れました。また、有機溶剤が流れました。それ以外は書類等が落下したくらいで被害はありませんでした。ガラスが割れたので、靴でクリーンルームに入室するように指示しました。窓ガラスはすべて大丈夫でした。一方、壁からは塗料が粉状に少量ですが落ちてきました。インキュベーター内の被害は不明です。培養皿から、大量の培地がこぼれたとの報告を受けました。耐震対策により、実験用のガラス製品はほとんど無事でした。

再生医療では、生ものが薬となるので、このような災害では全く機能しないと思ってもいいでしょう。移動手段がなければ、薬は病院に行かないということになります。院内製剤なら、移動の問題はありませんが、逆に被災地であれば、薬ができないということになります。

テレビの報道を見ていると、悪夢を見ているような気分です。今後、三日間で震度6以上の余震が来る確率が70%以上だそうです。


Sunday, March 6, 2011

間葉系幹細胞にかかる供給源のヒト組織リスト

間葉系幹細胞にかかる供給源のヒト組織リスト
 
骨髄(腸骨)
 
子宮内膜
月経血
 
靭帯
真皮
骨膜
 
眼球
 強膜
 虹彩
 角膜
 網膜
 
脂肪組織
 
肋骨
肋軟骨膜

皮膚
 耳介
 
胎児付属物
 羊膜
 絨毛膜板
 絨毛
 脱落膜
 臍帯血
 臍帯
 動脈
 静脈
胎児
 
リンパ管周囲織


Direct-to-consumer marketers of genetic information

Direct-to-consumer marketers of genetic information

23andMe (米国)
deCODEme(米国)
Knome(米国)
Life Code (ドイツ)
Navigenics(米国)

米国ではゲノム情報の消費者への直接提供が認められている州とそうでない州がある。

経済産業省: 個人情報ゲノム・ビジネスにかかるガイダンスがあるらしい。

興味深い表現
新しい情報をお墓に持って行く(写真、ビデオ、成績、日記、医療情報に加えてゲノムが追加情報


ゲノムから病気のなりやすさ(生活習慣病の易罹患性)や体質(肥満,薄毛など)など健康・容姿に関わるものに留まらず,個人の能力(知能,文系・理系,音感),性格(外向的,内向的),進路(音楽,美術,運動適性)まで分かると宣伝しているところがあるらしい。少なくとも(将来は知らないけど)現在であれば、自己申告のレベルに追いついていないと感じる。


日本人類遺伝学会「一般市民を対象とした遺伝子検査に関する見解」(2010)の一部をコピペ(一部をコピペしたので、ニュアンスが変わっていますよ)。 
。。。註)本見解は,2008年に日本人類遺伝学会が公表した「DTC遺伝学的検査に関する見解」を,近年の状況に鑑み大幅に改定したものである。
。。。学術団体等で遺伝医学の専門家として認定された医師等を介さずに,易罹患性に関わる遺伝子検査を直接消費者に提供する企業や来院者に提供するクリニックが散見されるようになった.また,提供可能とされている遺伝子検査は,病気のなりやすさ(生活習慣病の易罹患性)や体質(肥満,薄毛など)など健康・容姿に関わるものに留まらず,個人の能力(知能,文系・理系,音感),性格(外向的,内向的),進路(音楽,美術,運動適性)などの非医療分野にまで広がりを見せ,企業のホームページでの過大な広告やマスメディアでも広く取り上げられるようになったため,一般市民にも広く知られるところとなった.




Sunday, February 27, 2011

樋口亜紺氏のiPS総説論文

 樋口亜紺教授がChemical Reviews誌にiPS細胞に関する総説論文を記載した。Chemical Reviews誌は、このブログの読者はご存じないだろうが、伝統あるAmerican Chemical Societyの雑誌でインパクトファクターが35.957 (2009)である。インパクトファクターが36ってすごい。もちろん、Review誌であるからであることは間違いないが、論文が厳選されている。以下の論文で、PubMedから読めるだろうし、(有料だが)全文ダウンロードできる。樋口教授の力作であり、たいへんiPS細胞の材料に関する論文を総ざらいにしている。とてもいい論文である。話を聞くと、とても時間がかかったようである(半年とか)。是非、一読を奨める。なお、第一著者が全て論文を書いており、私は最終著者となっているが、一番貢献度が少ない著者として最終著者となっている。

 なお、Copyrightを侵さない範囲で、著者らのサイトから読めるようにしようと思っています。



Sunday, February 20, 2011

多能性幹細胞(iPS細胞)で、HLA type I を合わせる 

HLA type I の両方のアリールが同じのヒトからiPS細胞 (HLA homo iPS cells)をつくると、免疫学的に合う確率がとても高くなる。免疫抑制剤を使用しなくてもいい訳だ。HLAホモ iPS細胞で50種類で90%をカバーできるらしい。HLA hetero ES細胞が50種類で90%をカバーするっていう話を聞いたことがあるけど、どっちが本当なのだろう。

成育が作成したES細胞の中にHLA type Iの両方のアリールが同じなものになっている可能性ってないだろうな。確率的には極めて低い。あまり免疫学的に合致したES細胞だと、移植して好ましくない状況(腫瘍化)となったときに、免疫抑制剤の使用中止しても排除されなくなってしまい良くないか。

たくさんの種類のiPS細胞を作製するのに末梢血を使用することが推奨されているけど、月経血の方が楽だよね。痛くないし、作製が簡単だろうと思う。


骨髄間質細胞による皺取り

信頼している研究者(産業界)に、電車の中で質問した。「骨髄間質細胞を移植することで、コラーゲンを増やし、皺をとるっていう治療は実際に有効なのか。」 答えは、イエスであった。正直言って、信じていなかったので、意外な感じがしたが、皺がとれるという。感じで言うと、皺取りの美容形成手術とは全然違う感じで皺がとれるようだ。

 また、知り合いの研究者(大学教授)からの講演。光レーザーにより、皮膚真皮の線維芽細胞からの膠原線維の産生を増やすという。実際に、試験管内でも実験ができるのであろうか。また、光レーザーの受容体ってなんなのであろうか。昔、1980年代であるけど、PDGFやTGF-betaにより、間葉系細胞からコラーゲン産生が増加するということは報告されてきた。自身が、UCSDでブレナー医学部長の下でコラーゲン type I alpha1の転写調節の研究をしてきたことから、たいへん興味深い。あの頃は、5' のプロモータのメチル化の影響と、3'のエンハンサにおけるTGF-betaのresponsive elementを決めていた。後半で学会にて二つの賞を貰った。ふたつの学会での賞金が20万円程度だったので、ボスは出張費を出してくれなかった。自腹で学会出席となったが、賞として記載できるのは嬉しかった。その発見は、美容の分野でも生きればいいなと思っている。


肝線維化を軽減する自己骨髄細胞投与療法

骨髄間質細胞を含む骨髄細胞を移植することで、肝硬変の線維化を軽減できるらしい。線維化を軽減させると、残存している肝細胞の活性化促進が起こり、肝機能の改善をもたらすと思われている。

 線維化は肝障害の結果だと思っていたが、実際には線維化自体が肝機能を悪化させているようだ。その線維化を骨髄細胞(骨髄間質細胞)で軽減すればいいという戦略は有効なのだろうか。専門家の方々による動物実験の結果を待ちたい。重要な研究である。


多分化能を示すたのめ分化誘導剤である脱メチル化剤が、高リスクMDSの治療に。

 骨髄異形性症候群の治療はこのブログと関係がないじゃないかという方。また、このブログはいいかげんで何でも書いたり、メモ書きになっていたりするから、本人が興味を持っているだけはないかという方もいるかもしれません。

 脱メチル化剤 5-aza-cytidineは、昔(1985年)から分化誘導剤として私は使用してきた。ランダムな脱メチル化剤なので、多分化能を示すことに使える。また、前脂肪細胞に脱メチル化剤を使用するととても大きな脂肪滴を有する脂肪細胞がでてくる。

 その脱メチル化剤がMDSの薬として使用でき、高リスクMDSでの生存期間を延長できるから同種移植を実施できない例では第一選択薬になりえるらしい。全生存期間が1年から2年になるくらいらしい。治癒をもたらす治療は同種移植だけだそうだ。

 再生医療で、移植前に細胞に5-azacytidineの前処理することで骨格筋分化を起こし、筋ディストロフィーのモデルマウスに移植してきた。その時の分化誘導剤として使用してきた5-azacytidineが実際に薬として販売されている意義は大きい。骨髄間質細胞の多分化能を示すときにも、5-azacytidineを使用してきた。


Systematic (IUPAC) name: 4-amino-1-β-D-ribofuranosyl-1,3,5-triazin-2(1H)-one
Synonyms:5-azacytidine

Wikipediaより(ちょっと改変)
Azacitidine (INN) or 5-azacytidine, sold under the trade name Vidaza, is a chemical analogue of cytidine. Azacitidine and its deoxy derivative, decitabine (also known as 5-aza-2′deoxycytidine), are used in the treatment of myelodysplastic syndrome. Both drugs were first synthesized in Czechoslovakia as potential chemotherapeutic agents for cancer (ref. below).

Cih??k A (1974). "Biological effects of 5-azacytidine in eukaryotes". Oncology 30 (5): 405–22.


Wednesday, January 12, 2011

用語 @ 細胞シート開発WG

間違っているかもしれないけど、教授いただいた用語の意味。

無菌 sterile: 菌の検出頻度が10ˆ-6以下であること。この確率の意味は、製品100万個あたり、1個以下の確率でしか菌が検出できないことを意味する。製品1個の場合はどうなるのかなと思ったら、それはsterileという概念で菌の存在を規定するのではなくプロセスリスクマネージメントで管理する(らしい)。私は完全には理解はしていない。実際に100万個の製品をチェックする訳にはいかないだろうから、そのレベルということだろうか。


除染 decontamination: 菌の検出頻度を10ˆ-4から10ˆ-5の範囲にまで減少させること。頻度を決めるのは、1万個検査しなくてはいけないよね。実際はどうするのであろうか。菌の検出頻度を決めるってたいへんすぎるし、お金がかかりすぎる。除染とは、新たに翻訳したらしい。


滅菌 sterilization: 無菌状態(菌の検出頻度が10ˆ-6以下)を実現すること。


aseptic processing: sterileな製品に関する作業すること。asepticとsterileは同じ意味。


消毒 disinfection: 菌を安全なレベルまで減少させること。


Saturday, January 8, 2011

From HN

ゲノム研究を思い出す。

再生医療研究


ヒトiPS細胞のリスト

ヒトiPS細胞のリスト
・提供は医薬基盤研究所の細胞バンクを通じて全て行いたいと考えております。ひとつひとつ書類上の手続きを進めて参ります。